「善吉悪之助」の巻
「おう。善吉、待っとったで」
「待っとったって……オレ、死んだんやで」
「きっと地獄に来ると思っとった」
「失礼さは相変わらずやな、悪之助」
「さあさあ、赤鬼も青鬼も閻魔大王も、お待ちかねやで」
「嬉しそうやな、悪之助」
「ピンでは今いち、ウケが悪くてなあ」
「ふーーん。そんで、オレが死ぬのを待っとったんか」
「首吊りの丘で、日々、首を長ーーうしてな」
「ネタはどないするねん?」
「そら、大賞もろた『敬老の日は、早く帰ろう』で決まりや」
軽く打ち合わせをしながら、漫才コンビ「善吉悪之助」は、善悪を裁かれるべく、地獄の法廷へと進んで行った。
善とか悪とかは、どうでも良かった。
法廷の皆んなを笑わせるため。
十年間、否応なく封印していたネタを披露するため、である。
満を持して、と言う形容も出来た。
「これから毎日、漫才が出来るんやで」
と、悪之助。
「死ぬまで、いや生き返るまで、やりまくったるわ!」
と、善吉は応じた。
やがて、封印していた下ネタを入れた。
しゃべくり漫才を本道としていたが、キレ芸も入れるようになった。
変顔も、リズムネタも入れた。
それくらい長い間、転生する事はなかったのだった。
(良い漫才三昧よ)
よいまんざいざんまいよ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日の土曜日は、「蛮行の雨」、
第五十八話「旅人ディルダ」前編を投稿します。
回文オチのショートショート、
「続・のほほん」か、「新・ビキラ外伝」も、投稿する予定です。
ではまた、明日。