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回文オチで、ポン!「続・のほほん」  作者: にれ たつや
232/276

「霊媒師、冴える!」の巻

「こいつ、絶対、何かに取り()かれていると思って」

サイトーさんは、オウガさんを連れて、横丁の霊媒師を訪れた。


「おう、目の下のクマ!」 

    「コケた頬!」

           「充血した両目!」

     「震える手足!」

  「薄い頭髪!」

オウガさんを見て次々と指摘する霊媒師。


「薄毛は三十年前からだよ」

  サイトーさんは、一応、訂正を入れた。


「なんじゃろう? 悪霊憑きじゃろうか?」

「それを聞きに来たんだけど」

ぐったりとして背もたれ椅子に座っているオウガさん。


「ああ、うん、任せて下され」

と言って、 

    勾玉(まがたま)とか、

               曼陀羅(マンダラ)とか、

  蜥蜴(トカゲ)尻尾(シッポ)とか、

     水晶玉とか、パワーストーンブレスレットとか、

      万年(マンボウ)貝とか、

ルーン文字セットを机に出して来る霊媒師。


トカゲのシッポを噛みながら、

  マンダラの上にルーン文字を転がし、

パワーストーンのブレスレットを左手に持って振る霊媒師。

そして右手に持つ水晶玉を(のぞ)き込む。


「うおお。本当に見えて来たぞ!」

  目を()く霊媒師。

「見えましたかっ!」

  釣られて歯を剥くサイトーさん。


「この者はサナダ虫に取り憑かれておる!」

「えっ? サナダ虫? 駆虫薬で取れるやつ?」

「保険適用外となります!」

「本当ですか? サナダ虫と言うのは?!」

「恥ずかしながら、こんなに気持ちが()えたのは生まれて初めてです!」


「夢夢疑う事なかれ!」

     「信ずる者は救われる!」

 「虫に汚染された生肉を食べましたな?!」

「うむ、牛肉が見えましたぞ!」

「放っておくと、十メートルにも育ちましょう!」


サイトーさんはその後、オウガさんを連れて内科を訪れた。

霊媒師の見立ては、バッチリ当たっていた。


最初から内科に連れて行けば良かったのだ。



(えサナダ虫無駄な冴え)

え?! さなだむし? むだなさえ!!




お読みくださった方、ありがとうございます。

薄毛は作者がそうなので、御容赦下さい。

明日も「続・のほほん」を投稿します。


同じ回文オチ形式のショートショート「魔人ビキラ」が、117話ぐらいで第一部を終了しています。

よかったら、読んでみて下さい。


ではまた明日、「蛮行の雨」と「続・のほほん」で。

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