「生き物を飼う人たち」の巻
D氏邸を取り巻いている野次馬たち。
D氏さんの遺体が居間で見つかったのだ。
「まさかこんな静かな住宅地で殺人事件なんてねえ」
と猫を抱いてA子さん。
A子さんは愛猫家なのだ。
「怖いわねえ」
とウサギを抱いているB子さん。
B子さんは愛兎家なのだ。
「何かの間違いだと良いのだが」
と、犬を抱いているC爺さん。
C爺さんは愛犬家なのだ。
「でも、どうやって忍び込んだのかしら」
と、A子さん。
「そうそう、D氏は、庭にも室内にもワニを放し飼いにしてたわよねえ」
と、B子さん。
D氏は愛鰐家だったのだ。
「Cさんのワンちゃんには、慣れているようだったけど」
と、A子さん。
「んん? いや、それほどでもなかったですぞ」
と、C爺さん。
「あら、Cさん、その腕の傷は?」
と、ワンちゃんが身じろぎした拍子に見えた何かの咬み傷に気づくA子さん。
「いや、なんでもありません。エッちゃんに噛まれたのですじゃ」
と、腕に抱くワンちゃんを撫でるC爺さん。
「へえ。エッちゃん、凄い歯並びねえ」
と、犬の尻尾をめくって噛み傷を確認するB子さん。
「まさか、D氏のワニに噛まれたんじゃないわよねえ」
と、A子さん。
「違う! 断じて違う!」
「そうよねえ。D氏のワニ、毒があるって話だもの」
と、B子さん。
「うっ」
と呻いて胸を押さえるC爺さん。
「今回の殺人事件と、関係ないわよねえ、Cさん」
「なななない。断じてない!」
と言いつつうずくまるC爺さん。
「どうなさったの、Cさん。お家に帰って休まれたら? 顔色が悪いわよ」
「さ、殺人事件とは無関係だが、なにかの毒に侵されたかも知れん」
「あらあらあら?」
と、B子さん。
「殺人事件とは全く無関係だが、早く病院に行きたい!」
「あらあらあら!」
と、A子さん。
こうしてA子さんとB子さんは、犯人逮捕に協力したと言う事で、警察から表彰されたのであった。
(関係ある愛犬家)
かんけいある、あいけんか!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
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「魔人ビキラ」が、117話で第一部を終了しています。
よかったら、読んでみて下さい。