「記録は大切」の巻。ミチコ&タカシ編。
「ねえ、タカシさん」
朝っぱらからミチコさんの目が険しかった。
「この洗面所でテカテカ光ってる黒いの、なんだと思う」
ミチコさんに言われて、洗面所へ行くタカシくん。
「ああ、洗面所のデコレーションじゃないの?」
と、黒く光る物体を見て言うタカシくん。
「蛇口を中心にして、だんだん大きくなっているんだけど」
「うん、そう。成長する洗面所デコでしょ?」
そう信じているタカシくんだった。
「一体、どうやって成長するって言うのよ?!」
「こう、水を吹き掛けてやると」
と、洗面所の手動式スプレー容器を持つタカシくん。
「あっ、なんでそんなモノがあるのかと思ったら、タカシさんだったのね」
二人暮らしなんだから、自分でなければ夫のタカシしかいなかった。
「う、うん。せっかくのデコだから、大きくなったら良いなと思って」
結局、業者に来てもらったら、
「大変珍しい『発光性黒カビ』だ」
ということが判明した。
「カビ?! 洗面所でカビを育ててたの、タカシさんっ!」
「まあまあ、奥さん落ち着いて。その振り上げた洗濯カゴを下ろして下さい」
業者がなだめた。
「そう、そーーっと、そーーっと」
とタカシくん。
「この黒カビは削除しますが、お代は頂きません。実は私、カビの収集が趣味でして」
タカシさんはその業者に、今まで黒カビと知らずに自分が書いてきた『発光成長録』を、そっと渡した。
(黒光りカビ録)
くろびかり、かびろく!
明日、火曜日は、「続・のほほん」を朝の7時前後に投稿予定です。
水曜日は、「魔人ビキラ」の投稿日ですが、「続・のほほん」に変更の予定です。ネタが苦しくなってきた、とかそういう事だとすぐに連想されると思いますが、さにあらずにあらず、その通りです。
「魔人ビキラ」は、金曜日と日曜日のお昼12時前後に投稿予定です。
ほなまた明日、のほほんで。