「フルーツ」の巻。その他
「フルーツ」の巻
「へえ、出荷前は、まだこんなに青いんですねえ」
「ええ、果実ですから、食べごろになるまで、熟成させる必要があります」
食べごろに熟れた火星を摘むと、フルーツプラネットの出荷業者は、地球に向かって追熱の太陽風を強めた。
「さあ、これからは、どんどん熟れてゆくよ。もう止まらないよ」
出荷業者は、嬉しそうに笑った。
(良いなら待とう止まらないよ)
よいなら、まとう。とまらないよ!!
*** *** ***
「おままごと」の巻
「おかあさん、ユウキくんと夫婦ゲンカごっこがしたい」
と、娘のカエデちゃんが訴えた。
「あらまあ。じゃあ、ちゃぶ台返しとかもするの?」
と、カエデちゃんのおかあさん。
「もちろんだい!」
ユウキくんは、チカラ強く答えた。
「おとうさんみたいに、チカラ一杯、ひっくり返すんだい!」
「それは見たいけど、お茶碗とか割れたら困るわねえ」
顔を曇らせるおかあさん。
「割れなきゃ、夫婦ゲンカじゃないよ」
ユウキくんが威張って言った。
「おじいちゃんの集めてる汚い壺なら、割れても大丈夫よ」
カエデちゃんが、おかあさんにささやいた。
「そうね、あの変な模様の茶碗や大きいだけのお皿なら、良いわよね。ヒビが入ってるのもあるし」
おかあさんは納得して言った。
おままごとは庭先で順調に進み、やがて、
「こんなモノが食えるか!」
と叫んで、ユウキくんは勢いよくダンボールのちゃぶ台をひっくり返した。
雑草サラダや泥ダンゴを乗せた、一メートルを越える古伊万里の大皿や、変な模様の、我が国四つ目の天目茶碗、旧石器時代の壺などが、勢いよく空中に舞った。
(高い陶器疎い方)
たかいとうき、うといかた!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も、回文オチで、ポン!「続・のほほん」を投稿します。
同時投稿中の、「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?! ホンマです!!」も、日曜日まで投稿が続きます。
明日は、第四十一話「森の中の伝説の館」後編です。
同じ回文オチ形式のショートショート「魔人ビキラ」は、
第一部を終了しております。
よかったら、読んでみて下さい。