表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回文オチで、ポン!「続・のほほん」  作者: にれ たつや
200/276

ビキラ外伝「ビキラ、ジャンケンに負ける」の巻

おたずね者バッフンは、叫んだ。

「それ以上近づいてみやがれ、この名物『おにぎり石』を崖から落とすぞ!」


崖の端にあり、落ちそうで落ちずに立っている街道の名物。

全高五メートルほどのタワラ型岩、『おにぎり石』だった。


「待て! これ以上罪を重ねるつもりか!」

  魔人ビキラは言った。


バッフンをここまで追って来た賞金稼ぎビキラであったが、「おにぎり石」を崖から落とされては、元に戻すのにどれほどのお金が掛かる事か。


しかも、連帯責任で半分くらいは、ビキラが金を払わされるのは目に見えていた。


「どうする、ビキラ」

  肩の上の相棒、ピミウォが問う。

「どうするって、ここまで来て逃がすのは嫌よ」

  即座に言い返すビキラ。


「では、一か(ばち)か、『ジャンケン作戦』でいこうぞ」

  ピミウォはそう言い、

「ジャンケンして、お主が勝ったら、ここは大人(おとな)しく引き上げよう」

    と、バッフンに向かって叫んだ。


「お、おう。それは本当だな? よし来い! ジャンケンは得意だ!」

(人はリキむと『グー』を出す傾向にある)

を信じているバッフンだった。


「ジャンケンじゃ、ビキラよ」

「お、おうっ!」

    ビキラは、ビッキビキにリキんだ。


「最初は、プウ!」

そう言って、お互いにオナラをするビキラとバッフン。

オナラが出ないと、ここで負けてしまうのだった。


「ジャーーンケン、ポイッ!」


「よしっ、オレの勝ちだ!」

   手の「パー」を突き上げるバッフン。

「ま、負けちゃったあ!」

   手の「グー」をぷるぷる震わせるビキラ。


しかしそれは、ピミウォの作戦通りだった。


「そちらの勝ちだ。『おにぎり石』は、五歩進んで良いぞ!」

いきなりそう言われて、「おにぎり石」はあせった。

(五歩進むって、そんなに歩いた事ないよ)


おにぎり石は歩くために、思い切り身体(からだ)を傾けた。

おたずね者バッフンは、プチッ! と快音を発して潰れた。


「あーー、殺すつもりはなかったけど」

「逃がすよりはマシじゃ。『おむすび石』も崖から落とされずに済んだ」

安堵(あんど)するビキラとピミウォ。


それから、崖の上の『おむすび石』は、ゆらゆら()れるようになった。

転ぶようで転ばない、「ユラユラおむすび石」になったのだ。


おにぎり石はいつまでも、ピミウォの、

 「『おにぎり石』は五歩進んで良いぞ」

           を覚えていたからである。



(傾いだ石か)

かしいだいしか?!




お読みくださった方、ありがとうございます。

回文オチのショートショート「続・のほほん」は、明日も投稿します。


回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」本編は、第一部を終了しています。

回文をオチとした、同じ形式のショートショートです。

よかったら、ご覧になってみて下さい。


ほなまた明日も、「続・のほほん」と「蛮行の雨」で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ