「靴屋のクグツさん」の巻
靴屋のクグツさんは、履かなくなった靴を引き取っていた。
お墓を作って、ねんごろに葬るためである。
靴はそれを恩義に感じ、食べられる植物を生やしたりした。
クグツさんの狙いは、実はそちらの方であった。
(土筆靴) つくしくつ!!
もちろん、他にも植物は、生えた。
(蓬もよ) よもぎもよ!!
「あっ、この靴は、伸ばせばまだ使えるじゃないか」
クグツさんはワークマンにあるような、頑丈でオシャレな安全靴を引き伸ばした。
庭に生えていた細い竹を切り、四本くっつけた。
「こうすれば、まだ使えるじゃないか」
クグツさんは、ご満悦であった。
もう、靴ではなかったが。
(机靴) つくえくつ!!
地面に埋められたくない古靴たちは、家事をあれこれ手伝った。
クグツさんは独り者だったので、大変に助かった。
「お風呂、熱すぎるよ」
「ご免なさーーい」謝るブーツ。
「お味噌汁、ぬるすぎるよ」
「ご免なさーーい」謝るサンダル。
毎日が賑やかで、クグツさんは楽しかった。
(尽くす靴) つくすくつ!!
しかしご飯を作るのは楽しみだったので、ご飯を炊いてくれる靴は、しっかり絞めて庭に埋めた。
(飯を作る靴を絞め) めしをつくるくつをしめ!!
読んでくださった方、ありがとうございます。
明日も、回文オチのショートショート「続・のほほん」を投稿します。
明日の火曜日は、同時投稿中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?! ホンマです!!」
第三十八話「老骨のグラオ」前編を投稿します。
後編は、明後日の水曜日に投稿予定です。
ほなまた、明日!