ビキラ外伝「バシャバシャあがくビキラ」の巻
「こんな所で死んでたまるか!」
「拙者とて同じ思い! 足掻かずにおらりょうか!」
魔人少女ビキラと、おたずね者が、バシャバシャと沼で足掻いていた。
底無し沼であった。
足掻くほどに、沈んでゆくのだった。
「捕らえよう」とするビキラと、「捕らえられまい」とする賞金首が岸辺で戦っていて、二人そろって沼に落ちたのだ。
「くくっ、あたしの方が足掻いているもんね! がぼがぼがぼ」
「なんの、負けんぞ! 我が足掻きを見よ! ごぼごぼごぼ」
底無し沼で、仲良く足掻く二人を見て、
「お二人さん、気が合うのう」と、ツタを持って来たピミウォが言った。
ピミウォは、賞金稼ぎビキラの相棒の、古書である。
「ああっ、古書殿! そのツタをまずこのお嬢さんに投げて下され! げふげふ」
「ピミウォ、あたしは後でいいから、このおたずね者を先に助けてやって! がはがは」
二人で足掻いて生死の境を彷徨い、すっかり意気投合したビキラとおたずね者だった。
受け取った賞金の一部は、
「牢名主に渡しなさい」
と、ビキラが配慮を見せた。
「ビキラ殿、必ずや更生してみせます」
と、おたずね者は体裁を取るため、心にもない事を言った。
ほんとうに更生して、おたずね者自身が驚くのだが、それにはまだ長い年月を待たねばならなかった。
(気が合う足掻き)
きがあうあがき!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も「続・のほほん」を投稿できそうです。
回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」本編は、第一部を終了しています。同じく、回文オチの短い話です。
よかったら、のぞいてみて下さい。
同時投稿中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?! ホンマです!!」の、
第三十五話「転生官ランランカ」前編は明日、火曜日に。
後編は明後日、水曜日に投稿します。
ほなまた明日、「のほほん」と「蛮行の雨」で。




