「サブロウザは心の中に」の巻
「どうされた、サブロウザ様。浮かぬ顔をして」
勇者サブロウザと並んで歩いている剣士オロスが言った。
「うん。死んだ夢見ちゃって。縁起が悪いなあと思って」
サブロウザはうつむいたまま答えた。
「なんだ、その様な事でごさったか。ワシなぞ時々、本当に死んでおるぞ」
と、オロスは笑った。
「そうそう。わたしが居ないと何度死んだ事か」
と、蘇生師イカンダも笑った。
「まあ、そうなんだけどね」
サブロウザは笑って上を向いた。
足元がおろそかになって、猛毒のポイズンスライムを踏んだ。
「あは。猛毒スライム踏んじゃったよ。あはあは」
「あっ、言っておりませんでしたが、わたし、解毒は出来ませんので」
イカンダが猛毒スライムを見て跳び退いた。
刺されると死ぬからである。
「あはあはあは。死ぬって、こんな気持ちなんだ。うははははん」
笑いながら、地面に両膝をつくサブロウザ。
「むう。また新しい勇者を探さねばならぬのう」
剣士オロスはとりあえず、猛毒スライムを剣で刺し殺した。
「なに、転生のために魂が飛び去った先は、吾輩が見届けよう」
転生眼師ウイポランが自信たっぷりに言った。
「心おきなく死ぬるがよい、サブロウザ様。我らは必ずや転生先を探し出し、成長を待とうぞ」
「仲間って良いなあ」
薄れゆく意識の中で、サブロウザは思った。
「魔王討伐が何十年か延びたけど、今度は小さい時から剣の修行をしよう……」
(死んだ夢油断死)
しんだゆめ。ゆだんし!!
読んで下さった方、ありがとうございます。
明日も「続・のほほん」を投稿する予定です。
「のほほん」第一部は、全111話で終了しています。
よかったら、読んで見て下さい。
ではまた明日、のほほん、で!




