「ブランド米」の巻
後発の米作りである。
すでにブランド米は多い。
コシヒカリ。
ひとめぼれ。
あきたこまち。
おぼろづき。
ゆめピリカ。
雪若丸。
ササニシキ。
「ブランド米を超えようなんて、やめときましょうよ、オヤジさん」
一番弟子のヒロキが言った。
「何を言ってやがる。作る限りはブランド超えだ!」
オヤジさんの鼻息は荒かった。
苦節十年というか、屈折十年というか、オヤジさんの遺志を継いで、ついに一番弟子ヒロキは見事なブランド米を創り上げた。
オヤジさんが志半ばで病に倒れ、他界して五年が経っていた。
「見て下さい、オヤジさん! ついにやりました!」
天に向かって稲穂を突き上げる一番弟子ヒロキ。
「何処に出しても恥ずかしくない銘柄米ですよ!」
そう言って、もみ殻を剥く一番弟子。
中の胚乳、つまり白米には、一粒一粒、「JIS」の模様があった。
「JISマークの入った米粒が、ブランド米でなくてなんだ?!」
一番弟子ヒロキは、誇らしげに笑った。
「いや、ワシが言いたかったのは、そういう意味じゃなくて……」
天国のオヤジさんは下界を覗き、つぶやいていた。
唐揚げ大賞を見るまでもなく、金賞の種類は多い。
しっとり米部門。
ふっくら米部門。
甘味米部門。
あっさり米部門。
酸味米部門。
そして、模様米部門。
オヤジさんの夢は果たされたのであった。
オヤジさんの意には、反する形で。
(筋金入り稲がJIS)
すじがねいり。いねが、じす!!
最後までお読みくださった方、お疲れ様でした。
ありがとうございました。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
同時連載中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
も、出来ればよろしくお願いします。
ではまた明日、「のほほん」と「蛮行の雨」で!




