「不徳のいたすところ」の巻
将棋棋士の八丈島九段は、今日も対局の席に着く。
対局者と記録係の手を借りて。
早く引退したかったが、単位が足りなかったのだ。
そうなのだ。
引退もポイント制になったのである。
「ポイントを積み重ねて九段になったが、まさか引退でこのような事態になろうとは?!」
不徳の致すところであった。
「いいさ! 死ぬまで将棋を指すさ!」
女傑、佐藤愛子の心境であった。
引退が先か、寿命の尽きるのが先か?
九十を過ぎた八丈島九段の人生は、これからなのであった。
(引退単位) いんたいたんい!!
樵の平造は、そんな八丈島九段の姿を見て、
「俺ももっと頑張らにゃあ」
と、つぶやいた。
平造は、七十になったばかりだった。
「まだ古希だぜ。やっと人生の戸口に立ったのさ。なあ、小僧の爺さん」
自分に問いかけ、平造は笑った。
(樵古希) きこり、こき!!
その頃、早々(はやばや)と敗戦濃厚となった八丈島九段は、カラ元気の鼻歌を歌っていた。
「あらあら こあら
ねむってる
くらくら くらげ
うかんでる
けらけら おけら
わらってる
つらつら つらら
さがってる
らららら ららら
うたってる」
意味不明の唄に、AI評価九十九パーセント勝勢の読みを狂わされる魔王、渡部三冠だった。
(爺歌うたう意地) じい。うたうたう、いじ!!
特定の棋士をモデルとはしていません。
していませんが、頑張れ渡◯辺九段!
明日も「続・のほほん」を投稿します。
同時連載中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
第三十一話「風のシュクラカンス」
前編を明日、木曜日に投稿します。
後編は、明後日の金曜日に投稿します。
第三十二話「フーコツの策略」前編は、土曜日に。
後編は、日曜日に投稿する予定です。
お読み頂けたら、さいわいです。
ではまた明日、「のほほん」と、「蛮行の雨」で。




