「お前もひとくち」の巻
小役人のギョウブは、
「ワシにもついに運が回って来たぞ」と喜んでいた。
日頃からワイロを渡していた大企業の幹部から、食事に誘われたのだ。
しかも、高級料亭である。
労働組合の幹部連中が、メーデー後の反省会と称して、食事会をするような場所である。
組合の内部監査員だった作者は、北新地の料亭の領収書に、
「これは、何ですか?」と突っ込んだのだが、
「それは偉い人が決めた事で。我々はただ呼ばれて行っただけでして。えっへっへ」
と組合役員に逃げられたのだが、本筋には関係ないので、この辺にしておく。
しかも特別室である。
「ギョウブ。中々に裏金を溜めておるそうじゃのう」
「いえいえ、皆様ほどでは」
と、揉み手で答えるギョウブ。
「まあ、今日はゆるりと、贅を尽くした肉を味わうとしようぞ」
「ほお。焼肉でございますか?!」
「脂肪がたっぷりと筋肉に食い込んでおろうよ」
「霜降りでございますな。これは楽しみですな」
部屋の中央の囲炉裏に焚べられているのは、特選大福備長炭である。
(これはさぞかし上等な肉が運ばれて来るぞ)
ギョウブは、ときめいた。
肉は運ばれて来なかった。
ギョウブは片足を、チョンパされた。
猿ぐつわをされていたので、ギョウブの声は外に漏れなかった。
ざくざく切り刻まれ、火に炙られるギョウブの肉片。
「おお、見よ。この脂の滴りを」
「虫はおらんだろうな」
「赤い赤い。もそっとしっかり焼け」
「ギョウブ、お前もひとくち食べてみるか?」
「ポン酢に大根オロシが、さっぱりとして美味いぞ」
ギョウブは勿論、ヤケクソでうなずいた。
(小役人肉焼こ)
こやくにん、にくやこ!!
読んで下さった方、ありがとうございました。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
今日は七月の満月です。
良い天気。よい写真が撮れそうです。
あっちいです。
作者の中では絶賛同時連載中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら、場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
も、木曜〜日曜日に投稿しております。
よかったら、読んでみてください。
読み返したら、誤字がちょこちょこ見つかっています。
見つけたら、訂正しています。
なにとぞ、寛大な目で見てやって下さい。
ではまた明日、のほほん、で。




