「訳アリの部屋」の巻
賃貸しマンションだった。
部屋代は安かった。
当たり前だが、トイレも風呂もある。
もちろんリビングも。
「広さの割りに、信じられない安さだなあ」
借りたクンパーさんは、色々と考えた。
「きっと、訳アリだな」
「幽霊が出るとか」
「妖怪が出るとか」
「隣がクレイジークレイマーとか」
「前の家族は一家心中したとか」
「上の人が地震のようなイビキを掻くとか」
「まあ、オレ。副業が鉄面皮だし、全然オッケだけどな」
クンパーさんは、肝が異様に座っていた。
夜、布団を敷いて眠っていると、「それ」は起こった。
部屋が揺れるのである。
さすがに目を覚ますクンパーさん。
「これか? 地震じゃなし、イビキじゃなし」
布団を敷かないで眠ると、つまり、酔い潰れてそのまま寝てしまったのだか、その時は起こらなかった。
「ふーーん。そうなんだ」
クンパーさんは、ハンモックで寝るようになった。
ハンモックで眠れば、部屋は揺れなかった。
「この程度の怪奇現象なら、なんでもないや」
クンパーさんは、うそぶいた。
クンパーさんが布団を敷かなくなったので、部屋はイライラがつのっていた。
痒かったのである。
背中、つまり床が。
床は、敷かれた布団に擦りつけて、気をまぎらわせていたのである。
床はいつ爆発するか分からなかった。
「うう、カユい」
クンパーさんは、目を覚まし、ハンモックの網目に背中を擦りつけた。
勢い余ってハンモックから落ち、背中を床に擦りつけながら、のたうち回った。
手の届かないカユさって、気が狂いそうになるよね。
(痒い床)
かゆいゆか!!
お読みくださった方、ありがとうございました。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
同時連載中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
も、よろしくお願いします。
たぶん、面白い人には、面白いです。




