「米島氏が行く」の巻
(あっ、横断歩道がある。苦手だなあ……)
(あ! でも、幼稚園児の集団がいる。助かった!)
スーツ姿の米島氏は、幼稚園児と一緒に手を挙げて横断歩道を渡った。
保母さんには苦笑されたが、米島はふざけていた訳ではない。
歩きながら、道に落ちている吸い殻、空き缶、紙クズ、駄菓子袋を次々と拾っては、手に下げた麻袋に入れてゆく米島氏。
(うあっ。踏み潰されたチューインガムが歩道にっ)
歩道に屈み込み、内ポケットからステンレス製のヘラを取り出して、チューインガムをこそぎ落とすスーツ姿の紳士、米島氏。
知らん顔をしている人。
大いに引いている人。
感心している人。
不思議そうにしている人。
笑っている人。
そんな視線はもう慣れっ子の米島氏だった。
決して好きでしているのではなかった。
身体が勝手に動くのだ。
そのため、麻袋だのヘラだのを持ち歩いているのだ。
世の中には、スマホ依存症と言うものがある。
アルコール依存症と言うものもある。
水原ギャンブル依存症と言うものもある。
米島氏は、真面目依存症だったのだ。
「煙草を吸わないと、喉から心臓が出そうな気分になる」
と言うニコチン依存症の人がいる。
そういうヘビースモーカーの気持ちは、とても良く分かる米島氏だった。
タバコの吸い殻を見逃したりすると、動悸、息切れが激しくなり、あたまがクラクラするのだ。
(くっそう。生まれ変わったら絶対に、ならず者になってやる)
(無頼漢と言われて、後ろ指をさされる人生を歩むんだ)
(荒くれ者! 荒くれ者は、ゴミをそこらに捨てる!)
念願かなって、米島氏は、荒くれ者に転生した。
ゴミを拾って歩く荒くれ者に。
(真面目苦米島)
まじめく! めじま!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
お疲れではありませんか?
明日も「続・のほほん」を投稿します。
明日は疲れない作品かも知れません。
確認のために、明日も読まれた方が良いかも知れません。
ではまた、明日。




