ビキラ外伝「ビキラと落葉低木群」の巻
「なんか、高地に入ってから、急に寒くなったわね」
と、腕をこすりながら、魔人少女ビキラはつぶやいた。
「そうだのう。寒帯には、まだほど遠いはずだが、どうした事じゃろう」
と、訝る相棒の古書ピミウォ。
クロマメノキの落葉低木が広がっていた。
「ううう。シベリアのような寒さじゃ」
「そこまで寒くないわよ」
「アラスカのような寒さじゃ」
「行った事ないくせに」
それはビキラも同じだったが。
「寒暖の差が大きそうじゃのう、この辺りは」
「そうね、寒いのは苦手だわ」
「世界的に、温暖化が進んでいると言うのにのう」
その地方は、「寒帯」が負けん気を出して、侵略を仕掛けているのだった。
「温帯」は押され気味であったが、まだツンドラとは言えなかった。
とは言え、冬は長く寒冷が続こうとしていた。
横切るだけの旅人、魔人ビキラには関係のない話だったが。
「ここで駄洒落なんか言ったら、さらに寒くなると思わない? ピミウォ」
「こら。つまらぬ事を考えるでないわ、ビキラよ」
「動物をどう打つ」
「動物愛護協会が黙っておらんぞ」
「鉄塔に日が照っとう」
「昔、駄洒落妖術師に喰らわされた駄洒落ではないか」
「成せばなる、成さねばならぬ、なにぬねの」
「ダジャレではないのう」
「アルキメデス春めくです」
「ただの発情期じゃのう」
「あっ、鹿。いや、アシカ」
「たがしかし、駄菓子」
ただただ、心に寒風が吹き通るばかりであった。
(居たんか亜寒帯)
いたんか? あかんたい!!
お疲れ様でした。
お読み頂き、ありがとうございました。
「魔人ビキラ」本編は、117話で、第一部を終わっています。
外伝よりは、少し長くなっておりますが、回文オチ形式は同じです。
よかったら、読んで見て下さい。
人それぞれかと思いますが、面白いかも知れません。
ではまた、明日も、
「続・のほほん」で。




