「ふさわしい人」の巻
「武田君、止めておこう、このリーグ戦」
「何を言うんですか、鈴田コーチ。ここは日本。そしてぼくは百キロ超級日本代表!」
「いやいや、ここは戦略的撤退だよ、武田君。棄権しよう!」
鈴田コーチは、リーグ戦参加に消極的だった。
「これは、世界中に柔道を広げるための試練です」
武田君の決意は固かった。
「せっかく無差別級が復活したんですから、ぼくは絶対に参加します!」
そして始まる柔道世界一リーグ戦。
「一本! アメリカ代表、エイリアン三段の勝ち!」
武田君の初戦の相手は、はるばる宇宙からやって来てアメリカ国籍を所得した強者だった。
「なんの! まだ始まったばかりだ!」
武田君の闘志は燃えていた。
「一本! ブラジル代表、半魚人二段の勝ち!」
アマゾン川で釣り上げられた半魚人は一念発起し、柔道のブラジル代表となったのだった。
「なんのこれしき! あと、全勝すれば良いんだっ!」
くじけない武田君だった。
リーグ戦は、二回戦にして早くも全勝がいなくなっていたのだ。
「一本! イギリス代表、オートマトン077号四段の勝ち!」
イギリスでマッドサイエンティストに造られ、アシモフの三原則を克服したロボットの努力の勝利だった。
「ああ、武田君、手も足も出ない。これでは武田君の心が砕け散ってしまう」
頭を抱える鈴田コーチ。
そして自分の横に険しい視線を向けた。
「君っ、わざと日本代表の決勝戦を棄権したよねっ!」
「申し訳ありません」
隣で頭を下げる四角張った付き添い人。
「彼の方が代表にふさわしいと思って」
「謝って済む問題じゃないよっ! これは世界無差別級なんだよっ、ヌリカベ君っ!!」
(武田砕けた)
たけだ、くだけた!!
この作品には、映画「エイリアン」シリーズ、「アマゾンの半魚人」、「われはロボット」へのリスペクトが入っているのかも知れません。
少なくとも、不敬だというのは、気のせいだと思います。
次回、「続・のほほん」は、月曜日の朝、7時前後に投稿予定です。
「魔人ビキラ」本編は、明日の日曜日、お昼12時前後に投稿する予定です。
お楽しみでない方は、是非ともお楽しみになさらないで下さい。
ほなまた明日、魔人ビキラで。