「のほほん」の巻
「んん? 何だあの化け物は?」
工場の戸締りをチェックしていて、課長がつぶやいた。
「えっ? 化け物? 何処に?」とM君。
「ほら、あの屋根の上に座ってる、サルみたいな顔をした奴。胴体はタヌキかな?」
「ああ、手脚はトラですね。垂れていてよく見えないけど、尻尾はヘビでしょう」
「M君、くわしいな」
「鵺ですよ、あれは。我が国では有名な妖怪です」
外国人の課長は、「うへえ」と思いながら、
「何をしているのかな? じっとしているが」
と言った。
「背筋を伸ばし、足を左側に曲げて座っていますね」
「膝から下を、つま先までピンと伸ばして、何か無理をしているように見えるが」
「擬態しているんじゃないですか?」
「ギタイ? M君、何にギタイしていると言うのだね? あの無理をして座っている形が」
「Nです!」
M君は言い切った。
「あーー。見えない事もないかなあ」
課長はぼんやりと思った。
「ほら、左に半回転した。頭が下になったけど、やっぱりNに見えるでしょう?」
「ああ。Mの字だと、半回転したらWみたいに見えちゃうか」
「そう言う事です。NOHOHONは、半回転してもやっぱりNOHOHONなんですよ」
点対称と言うヤツだった。
「ははあ。NOHOHONのNの練習をしているのだね? しかし、何故?」
「さあ、それは化け物の考える事ですから」
(意味の無い事に意味を求められても困る)
と、M君は思った。
(Nが鵺)
えぬが、ぬえ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
お疲れではありませんか?
明日も「続・のほほん」を投稿します。
NOHOHONは、ローマ字回文で、なおかつ点対称と言う無敵っぽい文字です(個人的な感想です)。
回文ショートショート童話「のほほん」は、この無敵文字NOHOHONから来ています。
お話が「のほほん」してるから、のほほんをタイトルにした訳ではありません。
だったはずなんです。




