「風邪薬」の巻。ミチコ&タカシ編
咳き込む妻を心配して、夫のタカシくんは、
「ミチコさん、薬はちゃんと飲んでるの?」
と、たずねた。
「うん。飲んでる」
ミチコさんは何度もうなずいた。
しかしタカシさんは知っている。
ミチコさんが薬を飲んでいないことを。
返事が軽すぎるからだ。嘘を吐いている時のミチコさんの癖だった。
コンコン咳き込んではいるが、熱もないので病院へは明日、行こう。
と言うことになっていた。
「日曜日の今日は、とにかく大人しく寝ていよう」
夫婦でそう、話し合ったのだ。
薬とは、「咳。熱。鼻水。喉の痛み」
などに効用があると言う市販薬だ。
(とにかく、薬を飲ませなければ)
タカシくんは決意していた。
「ミチコさん、白湯にハチミツ入れたんだけど、飲む?」
「飲む飲む!」
(よしよし)
とタカシくんは思った。
風邪薬を溶かしてあったからだ。
「大福は美味しいなあ」
「あっ、あたしも食べる!」
(よしよし)
大福にも、風邪薬が混ぜてあった。
「うっ、喉に大福がっ!」
胸を叩くミチコさん。
「水飲んで、水」
と、タカシくん。
水にも薬が入っていた。
(こんくらいで良いか? しかしミチコさんだからなあ)
(よし、もう少し仕込んでおこう)
(過剰摂取で死ぬような娘でなし)
心配のあまり、タカシくんはマッドサイエンティストの気分で、次の作戦を練るのだった。
(段々飲んだんだ)
だんだん、のんだんだ!
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明日、金曜日は「魔人ビキラ」外伝。 たぶん。
月曜、火曜、木曜、土曜は、回文ショートショート童話「続・のほほん」を、朝7時前後に投稿予定。
水曜、金曜、日曜は、回文妖術師たちの物語「魔人ビキラ」系を、昼の12時前後に投稿予定。
ほなまた明日、魔人ビキラ系で。