「霧山さん出動す!」の巻
「霧の出ている時にしか現れないと言う、山の案内人とは、あなたか?」
「左様。霧山と呼んで下さい」
「向こうに見える、霧の時にしか現れないと言う山に登りたいのだが」
「それは無理ですな。あの山は蜃気楼ですからな」
「えっ? あんなにハッキリ見えているのに?!」
「いや、霧の中ですからな、形はシッカリしておりますが、細部はハッキリ見えませんな」
「細かいな、アナタ」
「霧の山に詳しい男、霧山で御座います」
「では、こちらの山にします。案内して下さい」
「こちらは山の形をした化け物でして」
「えっ? 化け物?!」
「近々、目覚めます。危険ですから、やめておきましょう」
「いきなりファンタジーしますね」
「目覚めたら、必ず立ち上がって『伸び』をします。登っている人たちは落ちます。引力に従って」
「それは物騒だ。霧山さんのお勧めの山はありますか?」
「ここまでの山道なら、案内出来ます。下山になりますが」
「仕方がない。それで良いです」
「ありがとうございます。では、こちらへ」
霧山才蔵は、下山を始めた。
「しかし霧の登山とは、あなたも物好きですな」
独り言のように喋り始める霧山さん。
「霧の日にしか現れないので、私の事をムジナか何かのように言う人がおりますが、私はレッキとした人間です」
「そうでしょう、そうでしょう。実は小生もそれを確かめに来ました」
「なんと、そうでしたか。霧の登山は危ないので、こうやって来ている訳でして」
「ご苦労様です」
「やあ、霧が晴れてきましたな。終わり良ければすべて良し。なに、下山もオツなものですよ」
霧が晴れるとともに、雲散霧消した登山家に気づかず、
霧山さんは下山を続けた。
(贋か山)
まやかしか、やま?!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
同時連載中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
第十九話「引っこ抜け! 伝説の棍棒」後編も、投稿します。
こちらも、よかったら読んでみて下さい。




