ビキラ外伝「ビキラが生んだタリサ」の巻
魔人ビキラは、賞金稼ぎであった。
商店街の隅に、おたずね者を追い詰めて、衆目監視の中、
「さあもう逃げられないわよ、おたずね者!」
と指を突きつけるビキラ。
「大人しく捕まれば良し、抵抗すると痛い目を見るぞ」
ビキラの相棒、古書ピミウォが空中でホバリングしながら忠告した。
「へっ。てやんでい。こんな所で捕り物をしてみろ、周りの建物に被害が出るぜ」
と喚くおたずね者、ダンガ。
「弁償するのは、お前たちだぜ!」
ビキラは顔をしかめ、回文を詠唱した。
「去りたい多里沙 (さりたい、たりさ!!)」
ビキラは回文妖術師である。
回文を具現化する妖力があるのだ。
ピンクの浴衣姿の女体が現れた。
しかし頭部が、花のツボミであった。
が、ほどもなく、ポン! という破裂音を立てて開く巨大な花。
花びらの中央には、美女の顔があった。
タレ目。泣きボクロ。風に揺れる前髪。ぷるるん唇。
すべてが、おたずね者ダンガの好みであった。
「吾れの名は、糸井多里沙。去りたくはない。そなたか、吾れと、なさりたいと言う殿方は?!」
と言って、肢体をくねらせながらダンガに迫る浴衣美女。
「な、ななな、なさりたい?! 何を言ってやがる、こんな衆目の中で」
キョロキョロし始めるダンガ。
「ななな、何をなさるんですかい、お姐さん。アレか? やっぱりアレか?!」
「吾れは一向に構わぬぞ」
と、舌なめずりをする美女。
「アレは痴女ではあるまいな、ビキラよ」
心配して言うピミウォ。
「だっ、大丈夫。あたしにそんな知識はないから」
と、ビキラ。
「な、なさるのは良いが、物陰に行かないかい?」
と言いながら、股間に緊張を覚えるダンガ。
「その必要はあるまい」
そう言い、タリサは抱きつくと見せかけて、肘打ちでダンガを倒した。
ダンガはその一発で、失神した。
「ああ、普通。最後は暴力で解決、ってあたしそのものじゃん」
ビキラは嬉しそうに笑った。
野次馬からは、残念そうな溜め息が漏れた。
(なさりたいと言う糸井多里沙な)
なさりたい、という、いといたりさ、な!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
エ◯ロな期待さなった方、申し訳ありません。
15Rなので、大した事は書きません。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
同時連載中の、異世界のほほん冒険物語、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
は、木曜〜日曜日に投稿しています。
よかったら、読んでみて下さい。
回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」は、第一部を完結しました。
外伝よりは長いですが、一話完結形式のショートショートです。
こちらも、よかったら読んでみて下さい。




