「勇者ブタとマサス」の巻
マサスは鉄管芸術家であった。
バーナーを使い、鉄管を折り曲げたり溶接したりして、色々な物を創造するのである。
チューブ状の風船を色々とねじって、動物や虫など作る所を想像してもらえれば、近い。
針金アートを想像すると、遠い。
「おおう、今日のブタは会心の出来!」
マサスは思わずつぶやいた。
焼きおにぎり屋さんも、年に一、二度「会心の焼きおにぎり」が出来る事があると言う。
アレである。
「艶と言い、形と言い、我ながら素晴らしいブタ!」
「お褒め頂き恐縮です」
その鉄管で出来たブタが言った。
「うお? 喋った?!」
「心を込めて作って頂いたものですから」
「おお! それで魂が宿ったと?!」
「その通りで御座います。では、勇者の旅に出て参ります」
「な、何を言ってんの?!」
「せっか命を頂いたのですから、勇者ブタになりたく存じます」
「ま、待って! 喋る鉄管ブタなんて、高く売れるから」
「それはお断りします。私は自由に生きたいので」
「待ってくれ! ぼくの貧乏生活を助けてくれ!」
しかしブタは勇者になるべく旅立ってしまった。
「く、くそう! もう少しで金持ちになれるところだったのに!」
マサスはそれから、「従順な喋るブタ」を作るべく、必死に頑張った。
来る日も来る日も去る日も来る日も、意地になってブタを造り続けた。
ブタ、一点に集中した事が良かった。
マサスは、鉄管ブタ芸術家として有名になったのである。
マサスは死ぬまでブタを造り続けたが、喋るブタは二度と生まれなかった。
「勇者になって帰って来たのに、お前は死んじまったのかよ……」
勇者の鉄管ブタは、僧侶、剣士、魔法使いを従えて、マサスの葬式に出席した。
魔王はまだ倒していなかった。
(たぶん勝手な鉄管豚) たぶんかってな、てっかんぶた!
(凄まじい意地マサス) すさまじいいじ、まさす!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
同時連載中の、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
も、よろしくお願いします。
今さらな異世界転生物です。
時代は、悪役令嬢物に移ってたって本当ですかっ?!




