ビキラ外伝「ビキラとキャベツ畑」の巻
魔人少女ビキラは、賞金稼ぎであった。
しかし、おたずね者が見当たらない場合は、アルバイトをする。
今回のように。
今回はキャベツ畑の用心棒である。
そんな事とはつゆ知らず、キャベツを盗みに来た盗人ミドンサ。
「おお。なんと色艶の良いキャベツであろうか。しかも大きい!」
腰の得物を抜き、バッサリ切り取ろうとして驚くミドンサ。
その美しいキャベツには、人の顔があったからである。
思わず三度見してしまうミドンサ。
「掛かったな、キャベツ泥棒め!」
その美しいキャベツは、魔人ビキラの被り物だったのだ。
「ひええ!」
刃物を持っているのに逃げ出すミドンサ。
ミドンサは、しがないキャベツ泥棒である。
人を傷つけようとは、考えてもいなかったのだ。
「待てい! キャベツ泥棒!」
一方、長く地面に埋まり、ストレスを溜めていたビキラは叫んだ。
「ブッ殺してやる!」
ほぼ本気であったかも知れない。
ミドンサはトマト畑に逃げ込み、トマトを千切ってはビキラに投げ始めた。
「く、来るな! 怪奇キャベツ頭め!」
「これはただの被り物だ!」
頭のキャベツを叩いて説明するビキラ。
ミドンサは、蒸し暑い日の下にたわわに実るトマトを千切っては投げ、投げては千切った。
トマトは夏の日差しに、気怠るそうに赤い皮をテカらせていた。
「収穫前のトマトを、この野郎! 許さんぞ!」
ビキラは怒りにまかせて、ミドンサを捕まえると、トマト畑に投げ飛ばした。
何度も何度も。
トマトの弁償金は、ビキラのバイト代ではとても足らず、今も彼女はキャベツ畑の用心棒を続けている。
のかも知れない。
(気怠げなトマト投げるだけ)
けだるげな、とまと、なげるだけ!
(三度見のミドンサ)
さんどみの、みどんさ!
お読みくださった方、ありがとうございます。
二度見の次は三度見か?!
と、思った方、小生もです。
まあまあ、落ち着きましょう。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
第一部の連載が終わった、本編「魔人ビキラ」もよろしく。
回文オチの、読み切り形式のショートショートです。




