「よくある話」の巻
船が大嵐に合い、沈没した。
よくある話である。
九死に一生を得て、ダイスケは島に流れついた。
無人島だった。
やはりよくある話であった。
引き潮の岩礁で、魚やカニやタコなどが獲れたので、苦労して火を起こし、焼いて食べた。
「なんとかなりそうだよ。アタミ君、サヨコさん」
流れ着いた死体に話かけるダイスケ。
「ああ、流れ着くのは死体ばかり……」
ダイスケは、それらの死体を埋め、板を刺して墓とした。
木造だった船の破片が沢山流れ着くので、墓標には困らなかったのだ。
「なんでぼくだけが生き残ったんだ。何の能もないぼくが」
生存に理不尽つを感じるダイスケだった。
運命か偶然か、はたまた神様のイタズラか。
「もう、死体も流れ着かないようだし、脱出でもするか」
気持ち的には差し迫っていなかったのだが、脱出は無人島の定番だったからである。
船の破片を集め、イカダを作った。
「どっちに行ったら良いのかなあ」小手をかざして海を見るダイスケ。
「任せておけ!」
イカダがそう言った。
「わっ、イカダが喋った?!」
「キミが精魂込めて作ったので、魂が宿ったんだよ」
「おお、神様!」
「キミが無神論者なのは知ってるよ」
「何てこった」
「この無人島に居ても、徐々に衰弱して死ぬだけだ。行動あるのみだよ、ダイスケ!」
それらしい事を言われ、その気になるダイスケ。
ここに定住し、狼煙を上げて沖を通る船に知らせる事も考えないではなかったが、ダイスケは身近なモノの忠告を大事にすべきだ、と思ったのだ。
「日の出る方角に漕ぎ出そう。日本人だけに」
と、イカダ。
「おう!」
と、ダイスケ。
こうして、ダイスケとイカダの冒険が始まった。
「頑張ろう。なんとかなるさ」
イカダは自分を励ますように言うのだった。
(打開出来る気で筏)
だかいできるきで、いかだ!!
沖に出て、無人島が遥かに小さく見える。
ダイスケはつぶやいた。
「ああ、これからどうなるんだろう?」
すると、声を掛けて来る者があった。
「呼んだ?! ダイスケくん」
沖に流されていた溺死体のカズエさんだった。
(取り敢えずカズエ有りと)
とりあえず、かずえあり、と!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
なんじゃ、これは?!
と思った方、その通りだと思います。
読み返して、ワタクシ、そう思いました。
カズエさんの行く末が気になります。
それはともかく、明日も「続・のほほん」を投稿します。
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
明日、木曜日には、
第十六話「突入! クカタバーウ砦」(前編)も、投稿します。
(後編)は、明後日、金曜日に投稿します。




