「魔獣討伐隊」の巻
森の奥にある断崖に、穴が開いていた。
人喰い魔獣ガウドラドの巣穴だ。
その巣穴から少し離れた場所で、トアート王国から派遣された討伐隊が、各自の役割を確認していた。
「罠は、ポルウォン隊で組み立てる」
というグアドーロ隊長の声に、
「ははっ。ただちに!」
混沌の鎧を装着した偉丈夫と背後の隊員たちが頭を下げた。
ディクダイル隊、ラーケル隊は、弓の狙撃を頼むぞ」
魔獣ガウドラドは、首の後ろの中央部、人間で言うところの「ぼんのくぼ」が弱点だと思われていた。
五メートルの背丈を誇る二足歩行獣なので、剣での攻撃は難しかったのだ。
「外すなよ。頼んだぞ」
「お任せください」
長尺の弓を背負って、木に登りはじめるディクダイル、ラーケルの両部隊隊長たち。
そして罠への誘導が役割の、剣使いと槍使いで構成されたジョッズ隊。
「人喰い魔獣は、わたしがきちんと誘き出して見せるからな」
グアドーロ隊長の役目に、隊員たちは瞳を潤ませてうなずく。
「あのう、ぼくの役目は……」
肥満体のカザルが、おずおずとたずねた。
そもそも休日の食べ歩きが趣味の自分が、
「なぜこんな重大な作戦に声が掛けられたのか」
意味が分からないカザルだった。
「おう、カザル。もちろん君には最重要な枠を設けてある」
グアドーロ隊長は、カザルの両肩を籠手で掴んだ。
「魔獣ガウドラドに隙を作らせる重大な役目だ。例のものを!」
「ははっ、ここに!」
雑役係のポルフとジュアトが、壺を抱えて進み出た。
「まず、この壺の中の、ハチミツとマタタビの混合物を、身体中に塗るのだ、カザル君!!」
グアドーロ隊長の目は、作戦の成功を確信して、怪しい光を放っていた。
(喰われ枠)
くわれわく!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日の日曜日、お昼の12時前後に、
「魔人ビキラ」本編を投稿予定です。
ビキラの分身、猫耳のサヨの転職話です。
同サイトに、すでに完結した物語があります。
「風骨仙人の旅路」全4話。
「異物狩り」全4話。
「のほほん」全111話。
よかったら、覗いてみて下さい。
ほなまた明日、魔人ビキラで。




