「スケノダの少年、走る!」の巻
ガルバイン将軍とパノペーレ博士は、支配下に置いた国、スケノダを視察していた。
「これは素晴らしい。スケノダ人たちの生活の様子が良く分かる」
と、ガルバイン将軍は感心した。
半透明なスケノダ人たちは、街の中を歩き、あるいは話し合い、あるいは歌を歌っていた。
「でしょう? この国の人民どもは、自分が死んだ事にまだ気がついておらんのです」
と、パノペーレ博士。
「たとえば今、あの家を飛び出した少年は、何処へ行くと思いますか? 将軍」
「うん? どこへ行くのかね?」
「学校ですよ。授業を受け、お昼ご飯を食べ、お昼休憩を元気良く遊び、そして午後からの授業を受け始めたと思ったら、我が国の新型爆弾で瞬時に死ぬのです」
「むう。痛ましい事だな」
「将軍はまだ、この面白さが分かりませんか?」
博士は不思議そうな顔をした。
「彼は明日も今のように元気良く家を飛び出してゆきます。明後日も。そして同じ授業を受け、同じ問題を間違い、そして午後には蒸発するのです。うははははは!」
「何がおかしいのかね、博士」
「だって、奴らは毎日毎日、同じ事を繰り返しているんですよ。死んだその日を毎日飽きもせず、おそらく百年後も。わはははははは」
(危ない! コイツは危ない!)
と直感した将軍は、
(何が理由を付けてパノペーレ博士を死刑にしてしまおう)
と思った。
(また今回のような無慈悲な爆弾を作るかも知れん)
その心配もあった。
(こんな笑い上戸は、早く殺した方が良いのだ。うんうん。うふふ)
(おっといかん。笑いが感染った)
ガルバイン将軍は、戦争の傷が心に広がりつつある事に、まだ気がついていなかった。
(肉体が居た国)
にくたいが、いたくに!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も「続・のほほん」を投稿します。
まだ在庫があるからです。
あると思っていたのに在庫がなかった時、私はとても驚くでしょう。
顔から血の気が引くでしょう。
ぱりぱり、と言う血の引く音が聞こえるかも知れません。
やだよう……。
ではまた明日。




