「寄り道」の巻
サッちゃんは寄り道が嫌いだった。
知らない道を歩くのも、嫌だった。
家に来てまだ間がない、猫のハールと言う新しい家族も待っているのだ。
しかし親友のレイちゃんに、寄り道を誘われた。
レイちゃんは寄り道が大好きだった。
知らない道を歩くのは、大大大好きだった。
「サッちゃん、じゃあジャンケンしてあたしが勝ったら、寄り道ね」
仕方なく承知するサッちゃん。
そして十一連勝してしまうサッちゃん。
「じゃあ、また明日」
そう言って、さっさと帰ろうとするサッサのサッちゃんを呼び止めるレイちゃん。
「ちょっとちょっと、えっと、今のは練習だから」
「そんな事言ってると、地獄へ堕ちるわよ、レイちゃん」
レイちゃんをクリスチャンと知って殺し文句を言うサッちゃん。
「じ、地獄、信じてないくせに、サッちゃん」
サッちゃんの家は、父も母も無神論者だったのだ。
そんな正反対の二人だからこそ、惹かれ合うモノがあったのだろう。
「一生のお願いサッちゃん。ちょっとだけで良いから寄り道して帰ろうよ」
「レイちゃん、毎週、一生のお願いしてるよ」
しかしサッちゃんは根負けして、親友のレイちゃんのために寄り道をすることにした。
友情が、大好きな家や猫のハールに勝ったのだ。
「ほんとに、ちょっとだけ寄り道ね」
「うわあ、やったあ! ありがとうサッちゃん」
抱きつくレイちゃんに、サッちゃんは、
「ほんとにほんとに、ちょっとだけだから」
と、念を押した。
(寄り道ミリよ)
よりみち、みりよ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
今日は夕方に、
「召しませ!『蛮行の雨』転生したら場違い工芸品にされたって本当ですか?!」
第八話「『蛮行の雨』登録せり!」後編を投稿します。
面白いと良いなあと、わたしは思っています。
あなたは、どう思いますか? ほなまた、夕方に。




