得てしてそれは
書かずにいると文章能力が落ちるんだなぁと実感
確かに漫画のような大学生活は夢だと理解していた。
でもそれだけの考えじゃ至らなかった事を今更ながら悔いる。
「柵村くん、君いつまでお客様待たせる気なの?そんな遅さじゃ日が暮れるよ」
「柵村!棚に商品出しとけって言ったよな!」
厳しいコンビニのバイト。
理不尽に怒る店長や先輩。
学費や生活費を稼ぐとはいえいつまで耐えればいいんだろう……。
■■■
「初めまして!昨日から入り始めました空森です!よろしくお願いします!」
「白木です」
こんな地獄に新人が入ってきた。
明るくてしっかりした空森と
声は小さいが与えられた仕事をコツコツとこなす白木。
店長や先輩はいつも通り女性である空森さんには優しく、男である俺や白木には理不尽に言葉を放つ。
一つ新しい風吹いても廃れた風は拭えない。
ただ、ただいつもの嫌な風が吹いていた。
「はぁ…………」
休憩室でいつも通り昼食を取っていると交代に来た白木がため息をつきながら部屋に入って来た。
「おう、お疲れ」
「あ、柵村先輩お疲れ様です」
その顔を見れば分かる
「残念だったな、今日は俺以外に二鳥が入ってる」
小さなボトルに入ったミルクティーをあおる。
「いや知ってますよ、レジ立ってれば嫌でも視界に入ります」
男に厳しい職場というのはいつになっても窮屈に変わらない、同じ空間に嫌な奴がいると分かれば一分一秒ずつスリップダメージ並にストレスが蓄積していく。
「俺が怪人に変身できたら真っ先に二鳥を潰してやりますよ」
「怪人?」
ハハと後輩の愚痴を聞いていたら気になる単語が聞こえた。
「あれ?知らないんすか?今たまーにネットで写真が上がるんですけど────」
白木がスマホをいじりながら「えーっと」と呟き、とある画面を見せてきた。
「これこれ、」
写真はブレているがおそらく金色の人影と赤い形容し難い人型……?の様なモノが戦っているような、そんな写真だった。
「特撮の撮影?」
「違うらしくて、コスプレでも無いらしいんですよ」
さらにスマホをいじり次々に新しい写真をスライドしていく。
「どうやらマジで怪人が出現してるらしくて、戦ってできた地面の亀裂やら建物の倒壊やらがマジであるらしくて」
どうやらインターネット都市伝説の話ではなく現実世界で起きているらしい。
「陰謀論の域を出ませんが政府が超人化計画を進めている証拠だって、これ最新の有力説ですよ」
「へぇ〜、まあ、なれるならなってみたいね、その怪人」
「ですよね〜、どうやったらなれるんでしょうね」
別に馬鹿馬鹿しいとは思わなかった、そして特段関心のある内容では無かった。
それを聞いてから少し経った
今日、この日までは。
空森が突然バイトを辞めた、それに続いて二鳥と店長の間で何故か険悪な空気になりその後二鳥が辞めた。
うっすら予想はしていた、でもこの目で見ない事には確信はなく、それこそシュレディンガーの猫だ。
大学のサークルで繁華街を歩いていた時、手を繋いで歩く二人の姿を見て、見て、観て、みて、未て、診て、看て、充て、満て────
■■■■■
「はぁ〜汗すっごいね」
「ふぃ〜」
照明リモコンを取り
「ちょっと〜電気は恥ずかしい…………」
「ハハハ俺がどんだけお前を見てと思───」
電気が着いた。
ベッドの前、ソレに実態は無く影がそのままかたちどられたような─────
『あ”────ア”ァ”』
カラコロと硝子の割れる音の様な声。
悲鳴も出ない、言葉を発される前に
『ガ……“ィ───ジン』
ソレの手は二人の頭を潰していた。
■◆■◆■◆■
「なぁ鬼ノ城さん、一般人とアクセスできる人の違いって結局なんなの?」
いつも通り、鬼ノ城さんの研究室に遊びに行ったものの暇を持て余してソシャゲをやっていると本気で追い出されそうになっている現状。
取っ組み殴られそれでもと快適な部屋へと執着が残る頭で必死に追い出されまいと絞り出した疑問。
胸ぐらを掴む腕が緩む。
いや、俺よりも強いこの人はなんなのよ。
「まだ分からない事が多すぎる、データも検証も何も無いけどおそらくの予想はできてるよ」
離した手をマグカップに移し、残りわずかだったコーヒーを口に流し込む。
「でも確証が無い、決め手になる考察が覆った例外があるからまだなんとも………ねぇ」
「例外?」
「そう、例外。君の事だよ春八くん」
ピッと空になったマグカップを向けられる。
「本来地球のルール上に無かった事柄が「地球外から来たナニカ」によって追加された。」
「それが半神の話ですよね、地球に無い莫大な情報が地球を溢れさせた…………とか」
鬼ノ城さんは物足りなくなったのか設備されている冷蔵庫からコンビニのビッグパフェを取り出しおもむろに食べ始める。
「え、俺の分は?」
「缶コーヒーなら取っていいよ、あ、あと張り切って買いすぎちゃったイマイチだったプリンも」
「押し付け処分じゃないですか………」
この部屋には見回すだけで何十も机が並んでおり、務める研究員が多くいるように見えるが、実際READ本社に勤める研究員はかなりの数いるが
この部屋に並ぶ、というよりこの部屋自体鬼ノ城さんただ一人に与えられたモノらしい。
あと数部屋同じような個人的な大部屋があるらしい。
「机によって乱雑だったり整頓されてますね」
「そりゃ欲しい情報を素早く探すときに見つけやすい置き方をしてるからな」
どうやら鬼ノ城さんにしか分からない秩序があるらしい。
素人の目をしても、それ以上の迦楼羅の目をしても理解出来ない………
「で?なんで俺が例外に?」
「いや、君だけが例外という訳でも無いんだが、君は特にという意味で」
そこまで言うとパフェをかっ込み一気に食べ終わる。
「本来君らなんかが【神話級】なんかにアクセス出来るわけが無いんだよ、絶対に、確実に」
「なんかがって言われちゃったよ」
鬼ノ城さんは無秩序に秩序がある机からファイルを取り出し中の文に目を通す。
「君、ソレにアクセスするまで【迦楼羅】って言葉聞いた事ある?見た事は?」
「いや、多分あるんでしょうけど、なんというか」
「ん?どういう事?」
以前気になって【迦楼羅】と調べた事があった
「【迦楼羅】って確か像がありますよね、多分ソレはちっちゃい頃に見てる気がするんですよ、ほら京都にある………なんて言ったっけ、」
「興福寺、か三十三間堂」
「そうそう、興福寺……だったかな?」
パフェの容器をゴミ箱に放り込み、さらにと冷蔵庫に手を突っ込む。
「だとしても。君は今の今まで意識してソレを認識してこなかった。、でも現に成っている」
「たとえそこで繋がりができたとしても───」
目当てのモノを探り当てたのか、取り出し扉を乱暴に閉じる。
「たとえ死んでもアクセスできないはず………なんだよねぇ、ほんと何でだろ」
「で?その鬼ノ城さんの考察とやらは?」
板チョコの銀包みをビリビリと剥がし齧り付く。
「人間をデータの塊と仮定した場合の」
「やっほほー!難しい話ぃ〜?」
まるで漫画のように片手をピシッと上に伸ばし、さらに足の関節を伸ばした体勢で入ってきた人。
「やや、そこに居るのはかるやくんじゃないか!」
「春八ですよ、【迦楼羅】と混じって覚えられちゃってるな」
見た顔は既に秘密情報でも無いように黒い衣服は着ておらず、ウルフカットにクラゲヘアを混合したような髪に整った綺麗な顔立ち。
彼の【飛蝗】を行使し、対人においては無類の強さを発揮する────と、説明を受けた。
実際見た事はないが。
「あれ?任務出てたんですか?」
「ああ、これ?」
その手には見た事のある黒いアタッシュケースが握られており、中には黒い籠手が内蔵されている。
以前見た事はあるが何のための何のために装備するかは知らないままだ。
「別に【READ】の仕事なんで特に言うことはないんですけど、【Phenom】の事はこき使ったりしないんですね」
俺のなんて事ない疑問、
その言葉に両者逆に疑問の表情をみせる。
「いや、だって君ら【READ】所属とはいえ現はニネちゃん下の護衛用のチームだから……ねぇ」
「しかも【READ】から来る任務はボクらが対処してるし」
なるほど、コッチはコッチアッチはアッチという話らしい。
「いや、まあ現場に君らが近かったりしたら対処してもらうけどね」
バキッと板チョコを齧り噛み砕きボリボリと音を立てる。
そしてそれをゴクンと飲み込んだ後、
「んで、コレが早速だけど君らに対処して貰いたい案件」
近場の机から一つのファイルを取り出し目の前の机に置く。
ズイッと進められたソレの中身を確認すると。
「これって、」
「そう、別に私らの元で対処しても良いんだけど分かる人が居た方が何事も進みは良くなるよねって話」
いや、でも、
「なんで知ってるんです?」
「そりゃ雇用する人の身辺調査なんてちょちょいのちょいよ」
いや、まあ、鬼ノ城さんなら知ってても不思議ではないなぁと思ってしまう自分が居た。
この後12:10分頃に予約投稿があります。




