アンチヒロイン
ネタァ!ネタをッ!
コチコチと静寂の中響く時計の音が耳に嫌に入ってくる。
しかし信じられない…………まさかあの事件の犯人がこんなにもまだ大人でも無かったなんて。
と、人並みの感情を抱きつつ今朝の事を振り返る。
──────数時間前
ニネを学校に送り終わったちょうどそのタイミングで
[唐突だが今日の面会に付き合ってくれないかい?]
本当に唐突に鬼ノ城さんからそう連絡が入った。
「なあ鱗樹ぃ、この後鬼ノ城さんところ行くけど来る?」
「あー、パス、生吹の所に行く予定ある」
そういやこの前そんな事言ってたような……………
ん?
というか面会?ナニソレ
「じゃあREAD行くついでにお前送ってやるよ」
「お、マジ?じゃあマップ送るわ」
鱗樹から送信されたナビを頼りにとある大型の総合病院に送り届けそのままREADに急ぐ。
面会?病院とかか?
モネの時みたく被害者の事情聴取とかなのか……?
そう車を走らせREADに到着、すると入口の窓口に居たお姉さんが俺の事を確認するやいなや待合室に通されお茶出され……………
「やあやあ春八くん」
「お久しぶりです…………なんか、お疲れ様です」
見れば分かる何徹か過ぎただろう姿。
見てるこっちが心配になるほど余りにも────
「弱々しい…………お労しや……………」
「あ?」
そんなこんなで唐突に差し出された新聞。
「?」
「これ、知ってるでしょ?」
差し出された新聞の大見出しには
【怪死?謎の深まる惨殺事件】
と書かれた記事が一面を飾っていた。
「2年前に一時期大騒ぎになった殺人事件」
「あぁ、もちろん知ってますよ」
もう2年前になるのか
「確かマンションの全住人が殺されたっていう……」
「そうそう」
「それと確か犯人は十人くらいの少人数グループの犯行で当時騒がれてましたよね」
詳細は伏せられていたが見るも無惨な犯行現場だったとニュースでは言われていた。
犯人が捕まったのは確か1年前───だったかな?
「十人、ねぇ…………」
鬼ノ城さんは顔に影を落とし新聞の見出しを読む。
「【怪死?謎の深まる惨殺事件】、まあ結論から言うとコレは本関連の事件なんだけどね」
今となっては【本】の存在が自分の常識の範囲内になっているため「やっぱりか」としか思わなくなり始めたな……………慣れって怖し
「それがどうかしたんですか?」
本ならば本でREADが片付けてるはずだけど………
「…………まあいいや、ついて来てくれたら分かる」
新聞を折り畳みスタスタと先を歩き始める。
今回はなんの前情報は無し、か。
なんか一人じゃ心細いし鱗樹無理矢理にでも引き摺ってけば良かったな……………。
と、友人共々巻き込もうと考えているところ前を歩く鬼ノ城さんの顔に影が掛かっているのを見てしまう。
何故今になってこの事件を追及しているのか。
2年前のあの事件、犯人は捕まっている……………。
そして【本】を使った異能の事件。
警察の地道な聞き込みによって特定した容疑者。
違和感。
一度は迷宮入りした程不可解なこの事件、動機、犯行方法とがナニとも一致しない為猟奇殺人扱いされていたが──────
「この事件ね、何としても解きたいんだよ」
唐突と鬼ノ城が呟く。
この場合「なぜ?」と聞くか「どうして?」と聞くかで大分違う。
だがあてえ、というか現状全く分からんから聞くしかない
「なんでですか?」
第一としてこの事件は犯人が捕まった事により終了しているはず、いや、もしやまだ捕まって───
「犯人はもう拘束済みなのだがね………、どうしても分からないんだ」
あ、やっぱり捕まってましたか。
「分からない?」
「動機、と方法」
鬼ノ城さんが二本の指を立て折る
方法?
それこそ【本】の異能力で殺されたんじゃ
「ここから入るよ」
考えている間に非常階段の入口のような扉の前に着く。
「非常階段?」
「んー?違うよ?ココは監獄の門だ。」
鬼ノ城さんが非常階段には似つかわしくない入口の横にある電子機器を操作し解錠する。
「さあ冥界にお客様ご来場〜」
「いや冥界て」
扉の中は漆黒よりもなお黒く、暗く。
「なんも見えねぇ…………」
「見えなくても感覚で分かるでしょ君なら」
手探りで壁伝いに歩いていると視覚の代わりに感覚が研ぎ澄まされたせいかだんだんと明瞭になっていく。
「だいぶ一本道が続くんですね」
「まあじゃないとダメだからね〜」
ダメって……………ん?あれ?
「監獄?」
「ん?どした」
「いやさっき入口で鬼ノ城さん監獄って………」
「言ったよ?」
わーおここディスイズプリズン?
「ココは【ダイヤ】の管轄なんだけどね」
「【ダイヤ】?」
「そう、READの基本的な4つの管轄の内の1つ」
確か鬼ノ城さんは【クローバー】だった気が
「ついでに言うと私は【クローバー】と【ハート】の現トップやってのだよ」
フンスと見えない先の虚空から自信の塊が漂ってくる。
「お、着いた」
何やら鬼ノ城さんが先で何かを見つけたようだ。
「さあさあここからはREADですら捕獲が困難を極めた《有害》認定された囚人の監獄エリアだよ」
そう演劇チックに言葉を紡ぎ両開きの扉を開門する。
圧巻だった。
扉の向こう側は管理室のようで両端には数え切れぬほどのモニターが駆動音を鳴らしながら毎秒毎秒の場面を切り取り、白衣や軍服の様な、それを掛け合わせたような服を身に纏い移動する人影が横を縦を行き来してる。
そして何より目に嫌という程入ってくるのは正面の巨大なガラス窓、その向こう側には円の筒状に縦に伸びる監獄が聳え立っていた。
「す……………げぇ………………………」
「”総合監獄機関”通称【ダイヤ】、ここはホワイトボックスでも剥離出来なかった本等を所持している亜失者を収容するための施設、機関」
「亜失者?」
「そ、亜失者、」
「アクセッサーじゃ?」
「言い難いって上に言われてアメリカの本部で使われてるのと同じにした」
まさかの裏事情
「でもなんで亜失人?」
言葉の意味が分からない……………力を得てるんだから亜有人とかじゃないのか?
「それはね、仮説に基づいた─────」
「来たか鬼ノ城」
声の方を見るとこれまた白衣と軍服を掛け合わせたような服装に身を包む高身長の女性が居た。
流れた前髪は一部に金のメッシュが入っており全体に整っていないバラバラとした長い髪が肩から流れ垂れている。
READの上位幹部は髪を纏めるスキも無いのか………
鬼ノ城さんもぴょこぴょこと髪がところどころ跳ねている。
「先に言っておくが面会時間は5分」
「短っ!」
思わず口走ってしまう
「分かってるよ」
そんな俺に目もくれず鬼ノ城さんは了解を言い渡す
「ふん、なら着いて来い…………世紀の大量殺戮者を連行しよう」
いや待て、世紀の大量殺戮者?もしかしてここに来たのって
「いやあの事件の犯人と面会する為に来たんですか!?」
「ん、これ」
鬼ノ城さんからタブレットを受け取る。
そこの画面には
「名前は谷崎 運希、当時高校三年生の6月23日産まれ……………そして」
画面をスクロールし思わず呻き声に似た声を出す
「2年前のアノ事件を引き起こした張本人でありそして────────私の部活を殺した女だ。」
鬼ノ城さんの暗い表情の理由に納得した。
【アクセッサー改名事件】
ハリス「なぁ、なんか呼びにくくないか?」
鬼ノ城「それはそうなんだけどねぇ〜」
物語上の建前「上司に言い難いって言われたから」
都合上の理由「これ言いにくくね?」
まあこれだけが理由じゃないんですがね〜でも9割がた上の理由です、はい。




