モネの一日《4》
本日分!
「はぁはぁはぁはぁ………っはぁはぁ」
息が切れる。
肺と肺がまるで擦り合わされてるかのように上手く呼吸が出来ない………!
普段の運動不足が祟ってかただ走るだけで相当な体力が奪われていく。
ただ走っているだけでタッタッタッタッタッと足音が虚空に響く。
遥遠くにはどこまで行っても距離を感じさせないほど大きなアンティーク調のアナログ時計がカチコチと耳障りな音を無限に放っていた。
どこまで行っても空の風景は変わらず黒い空、なのにかかわらず周りが鮮明に見える、まるで初めから空は黒かったと思わせる様な。
何かの柵に寄りかかり息を整える。
「はぁ…はぁ…はぁ」
ふと辺りを見渡すと妙に見覚えのある小屋?が目に入った。
黄色と赤の縦縞模様で銀色の看板と灰色の文字盤が光っている。
「ミラー………ハウス?」
延々と遊園地が続くこの異様な地に何故かそれだけが他と違って見えた。
息を整えテントの中に入っていくと、ふとした疑問が頭をよぎる。
(あれ?今私何から逃げてるんだっけ)
確かに思い返すとなんの目的があって走っていたのか、何を探していたのか。
そう思いながらも鏡の壁伝いにこの出口を目指して行く。
明らかに非日常的な景色なのは火を見るより明らかなはずなのに何故かここが世界と認識してしまう自分が何処かに居る、それを理性では否定しながらも心の奥底ではまるで草原に放たれた火が燃え広がるかのように侵食、広がっていく。
しばらく壁沿いに歩いていると何故か見覚えのある鏡廊下が目に入った。
「あ…れ…………?」
思わず立ち止まる。
別に鏡が割れてるだとか血痕があるとかでは無くただただ見覚えがある。
何か大切な大事な何かがあった気がする、何を忘れている?一体ナニを────
『うわぁあぁ!』
外で悲鳴が上がる。
バチッと頭が弾けたように何かの記憶が蘇る。
第一に私には──────
弾かれたようにその場から走り出す。
記憶では知らないはずの道を身体は知っているように疾走する。
鏡の壁にぶつかりながらも出口を目指し走っていくと──────
今まさに何者かに子供二人が襲われそうになっている現場だった。
一つだけ思い出した事がある。
第一に私には──────誰かを守る力がある!
「アクセス!」
躊躇いなく身体が地面に手を着く
【アクセス:泡】!!!!
ブクブクブクと身体の周りからまるで水中のように溢れ出す。
(え、泡!?)
ブクブクと無い天井まで上へ上へ上がっていく泡を見ながら
(あれ?もっと強かったような…………)
指先から零れ上がる泡をまといながら走り出す。
兎に角も今は目の前の子供を守らなくては、
その者はチェーンソーを携え引きづって子供を追っていた。
『ほらほらぁ〜私の礎に─────』
「変態─────がっ!」
泡にそこまで期待するでも無くとにかく走ってソイツの足を思いっきり蹴る!
意識外だったのか蹴る寸前にこちらに気づいた様子だった。
ガッ!と音が鳴りそうなほど思いっきり蹴るが───
『ふぅん?また貴女ですか────』
「ったぁ!」
それもそう、怪物と生身の人間じゃ肉体の構造も力も違う。
弁慶の泣き所と呼ばれる脛を押さえ悶える。
『貴女の剣は奪ったはずでしたが………ふっ、まあ泡如き盾にもなりませんね』
パチパチパチと上に温度を感じる。
『さてさてコレは”火炎マジック”とでも名付けましょうか』
広げられた手から炎が巻き起こる。
その手を振り下ろし─────
(やばっ)
すぐに転がりそれを避けるが構わず手は振り下ろされ地面に叩きつけられ、ジュゥウと地面が焼けた。
『おやおやぁ、まだお元気で』
(こんな時に誰かが居れば─────)
ふと《仲間》という単語が頭をよぎった。
何か忘れている気がする、何か大切な事が抜け落ちてる気がする、何か──────
そう思う間もなくソイツは己の背後に十の火玉を装填する。
『どぉです?まさに火炎を自在に操る魔術師!』
両腕を広げ炎が翼のように豪業と燃え盛る。
『では見ててください?』
指を先を走る二人の子供に向ける。
(まだ逃げ切れてなかった!?)
『それでは♪』
シルクハットを深く被り狙いを定め、五の火玉が放たれ子供を襲うが─────
「や─────くに立て!泡!」
放たれた炎よりも速く、いつか走ったあの時のように全力で─────
あの時って──────
周りがスローモーションのように進む。
走る度にまるで幕が開いていくように次々と記憶がなだれ込む。
あの日、蟹の怪物から逃げた事
あの日、病院の屋上から投げ出された事
あの日、初めて”仲間”ができた事
あの日、初めて自分に誇れるカッコイイ事を始めた事
何故忘れていたのだろう、何故”非日常”なんて空間に身を任せていたのだろう!
二人の子供の後ろに立ち五つの泡を展開させる。
【泡割】
パンパンパンパンパンと連続で火を泡で包み込みその場で消失させる。
『ほぉ?【泡】、ですか』
はぁはぁと肩で息を切らしながら泡を展開させる。
「あぁありがと──────」
後ろで倒れ込んだのか動けないのか二人のうちの一人の子供が泣きながら言葉を紡ぐ。
(ありがたいけど早く逃げて欲しいなぁ)
本音である。
(シャコくんは────居る事は感じられるけどなんか掴めないな)
手を動かし掴みを感じ取ろうとするがなかなか掴めない。
しかし記憶が戻った事により分かったことがある。
アイツの本は多分【奇術師】、そして能力は──────日常を忘れさせ非日常を価値観に敷く。
さらに言えばその空間を創り出す事だ。
ニネ「うん………うん、やればやっぱり出来るじゃないか………!」
黎斗「監督…………!」




