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Episode EX 第五席 Lv. 355 の回想 (cv. 猟犬)

砂漠で竜に追われたり、花を見つけたり、旧都を発見したり、流砂を船で帰って来たり、最後に卵がドロップしたり、とても楽しかった……


今まで一人で任務をこなしてきた私には(まぶ)しすぎるよ。


でも、それが表の世界で生きるって事なんだろうね…


私の呪い (五感悪化) がこのまま進行したら、私は裏の世界でも表の世界でも居場所が無くなる。


私ももう兄の背を追いかけるのを止めて、憧れの光の世界へ飛び出すべきなのかも知れない…



私と兄の関係を語るには、少し過去を振り返る必要がある。


子供時代、私達兄弟は孤児だった。その日の食べ物にすら困るありさまで、ゴミだろうが食べれそうなものには全て手を出した。


お腹が痛くなったり、気分が悪くなったりすることもあったが、それよりも空腹が一番辛かった。


盗みだってした。物乞いだってした。とにかく生きていくのに必死だった。幼い子供には、小銭を稼ぐ能力も知恵も無かった。


そんな中で、友達になった獣人の鼻が効く子にはずいぶんと助けて貰った。危ない食べ物を見つけるプロだったのだ。



いつの間にかその子もいなくなった… 今もまだ生きているだろうか? 孤児が消えるのなんてあそこでは日常茶飯事で、誰も気になどしなかった。


孤児とは、いてもいなくてもどうでもいい存在なのだ。



私達の生活も変わらなかった。今から思えば、兄さんはガリガリだったし、無理して、私に自分の分の食料を渡していてくれたのかも知れない。


そろそろ冬が来る。そんなタイミングで兄さんが孤児院の話を持ってきた。当時は、(わら)にもすがる思いでそれに飛び付いた。


実際、冬が来たら、死んでいただろうし、他に手段は無かったと思う。


昔の兄さんは髪がボサボサで目も隠れていたし、臭かった。私も臭かった。


それに対して、全く態度を変えない教会の人間に疑問を持ったが、そんなもんかとこの時は納得してしまった。



甘かった。何もかもが甘かった。冬場でも水で洗われる。物を言えば、鞭で虐待を受ける。食事は1日1度のカビたパンと野菜クズのスープだけ。


つまり、私達は援助金目当ての替えの効く道具だったのだ。


それでも弱い子は死ぬ。友達だった。私達は無力だった。


そして、他に行けるところも無かった。



回復技能が使えるものはここを出られるらしい… 私達は必死で神父の魔法を見て、盗み、独学でものにした。半年かかった。


後で知った私の本来の属性は風だったのだから、相当に切羽詰まっていたんだと思う。



引き取りに来た司祭が連れて行った場所は更なる地獄だった。超人養成機関。悪魔を倒す為に、人を超える者を生み出す場所だった。


そこで、私はテア (T) と呼ばれた。元々名前なんか無かったから、それを受け入れた。


周りはケイとかジェイとか呼ばれていた。


味のしないご飯を食べ、体を鍛えせさられ、戦闘訓練で教官にぶちのめされ、それを自分で癒す。


それが毎日毎日毎日毎日毎日毎日… 続いた。


時には、捕まえて来た魔物が放り込まれ、どちらかが死ぬまでのバトルを行わされた。



たまたま見た兄さんの戦闘訓練に衝撃を受けた。何でそんなに動けるの?!


…兄さんの才能が開花してしまい、私は兄さんに追いていかれないように必死で強くなろうとした。


でも、差はどんどん広がるばかりだった。どうやら、私は兄さんの下位互換でしかないみたいだった。


悔しかった。負けたくなかった。置いてかないで欲しかった。



そして、5年が経過した。


上手く殺さないように調整されていたんだと思う。全てはこの時の為に。


「卒業試験:格上は格下を、格下は格上を殺せ!」


私達はある程度仲が良くなっていった。


教会の幹部が見守る中で、一対一の殺し合いが始まった。


私達には最初から逃げる場所なんか無く、相手を殺すことでしか先に進めなかった。



私は泣きながら、親しかったお姉さんエフィを殺してしまった。


「私の分も生きてね。」最後に笑って、言ってくれた言葉や表情が今でも忘れられない…


この時からだろうか。私が二刀を持つようになったのは…


この時点で私は完全に壊れた。よくしてくれたケイやジェイも死んでしまった事が原因だろうか。



機関を出た私は教会の執行部を経て、クルセイダーになった。


敵を倒し、必ず戻ってくる事から “猟犬” と呼ばれた。


正直、この頃の記憶はあやふやだ。何かに怒りを当たり散らさなければ、もう自分を保てなかったのかも知れない。



機関を出て、3年後、状態の落ち着いた私と兄は元の孤児院や機関を見に行ってみた。が、何も無かった。


もう少し早く来ていれば、誰かを救えていたのかな?


兄はこの孤児院にも支援していたらしい。



何も無くなった私には、兄に追い付く事しか目標が残されていなかった。


兄は兄で更なる強さを追い求めている。それに遅れないように私も強くならなければならない。


でも、今の兄に私は勝てるのだろうか?



そして、その葛藤を見抜いたような呪い (五感悪化) を受けた。


敵は私達の事を凄くよく見ている。


邪神官はすぐ側にいる。



………冷静に思い返すと、やっぱり変だ。


兄の背中を追うのをやめたいって言ってる私が一方では、戦いたいって言ってる。これは凄い矛盾だ。


今の私が兄に勝つとなると、魔人になるくらいしか方法がない。


それが狙いなのかも知れないけど…


どの時点かで洗脳 (思考誘導)を受けたみたい…、これを逆手に取らせて貰って、邪神官を(あぶ)り出す。


洗脳の解除は第八席 (ホーリーブック)にしてもらう。


砂漠で恋(愛しい人の為に、虹の花を求めて)は何よりも強いって知ったから。


To Be Continued…

超人養成機関・・・13人のクルセイダーを作る為だけに、使われた非人道的な実験施設。解体済み。


最後に、最も親しい物を殺す事で、情を断ち切らせ、殺戮マシーンを作りあげた。検体には、記憶障害等が発生している。


現在は、半分成功して、半分失敗している。


第一席 (兄)が過剰に強さに固執するのは、「世界で一番強い剣士になる」という夢を託されたからである。


機関を出たクルセイダーは2人分の人生を背負っている。



魔人・・・成ると戻れない。人には踏み越えてはいけないラインがある。



お読みくださりありがとうございます。

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