七夕の日の女の子
七夕の日。
織姫と彦星の物語をその女の子に教えてあげると、女の子は言った。
「たいせつな関係の二人が、一年に一回しか会えないなんて、かわいそう」
「そうだね。そう思うよね。大事な人に会えない事ほど辛い事ってないんだ。だから、君のママにこう言って欲しいんだ。あのおじさんと会う回数を一年に一回だけじゃなく、もっと増やしてあげて欲しいって」
僕はひきつった笑いを浮かべながら、その女の子に言った。
「そうなの? 変なおじさん。おじさんと遊ぶのは楽しいよ。おもちゃも買ってくれるし。だから、あたしはいいけど」
「そうかい。ありがとう、ありがとうね」
女の子が、僕の目にぼうっとにじんで見える。
「おじさんなんで泣いてるの?」
「なんでもないんだ・・・そうだ短冊に願い事を書いて、つるそうか」
僕は、短冊を手に取る。彼女たちと、また笑いあって暮らせる日々をください、と書こうとして、筆を止めた。それは願ってはいけない事だ。それだけの罰を与えられるだけの事を、僕は彼女たちにしてしまったのだから。
我が子である女の子は何かを熱心に書いて、僕に渡した。その短冊を見て、
「これで・・・いいのかい?」
僕が聞くと、
「うん! これでいい」
娘はそう答える。
僕は笹の葉に彼女の短冊をつるす。
「あれ? おかしいな。お願いかなわないよ」
僕の表情を見て、彼女が不思議そうな顔をする。
『おじさんが笑顔でいられますように』
笹の葉につられた短冊。今日は無理だけど、明日にはきっと叶うようにがんばる。そして、いつか妻にも認めてもらえる人間になろう。
本当の意味で僕が笑顔になれるように。
めちゃめちゃ、季節感無視の話で申し訳ございません(汗)