私でも幸せを願ってもいいですか?
私は、ほんの少しだけ幸せになりたかった。
好きな人に、想いを伝える――
たったそれだけの、ささやかな願いだったのに。
「先輩……!」
高校の卒業式の日、正門の前でずっと想いを寄せていた先輩を待っていた。
もう、会えなくなるかもしれない。
この気持ちを伝えないまま、終わりたくなかった。
でも。
人混みに飲まれて、
階段を踏み外して、
転んで、門柱に頭をぶつけて――
気がついたら、私はもう、
死んでいた。
……バカみたい。
でも本当。
これが私の、「終わり」で。
――そして、すべての「はじまり」だった。
(次に目が覚めた時は オリヴィア・ブランジュに生まれ変わっていた)
チュンチュン・・・・
朝日がまぶしい
何か夢を見ていたような・・・
今日って何か大事な日では・・・・あっ!
王宮の夜会だ!13歳になった私は今日社交界デビューをするんだった。
あー楽しみだわ。初めての夜会が王宮主催だなんて素敵過ぎる〜。
婚約者がいる人は婚約者に、いない人は身内にエスコートしてもらって参加する夜会なのだが、今日招待されているのは
伯爵位以上の13歳~15歳の令嬢 婚約者のいない者のみ。
細かく指定があるのは今日の夜会は
いつもと違いこの国の第一王子の婚約者探しだからだ
私には婚約者はいない参加条件はばっちり!
今日は父様にエスコートしてもらい参加する。
私の家 ブランジュ家は伯爵家であるが、娘2人しかおらず跡継ぎの為に遠縁から3年前に養子を迎え入れた。 2つ下のブラッドは見目も良く綺麗な青い髪に緑色の瞳、まだ10歳なのに女の子からの人気が凄い。
今は家を継ぐ為の勉強で大変そうだが私には関係ない
他人が気づいたら家族になって・・・しかも母から私には注いでもらえない愛情をもらってるのだから、 あまりに存在が気に入らない。
どうせ私はこの家から出てどこかに嫁ぐのだからいいのだけれど。
父様と母様 キャロル、ブラッドと私の家族5人で朝食を取っていると
父様が今日の夜会を心配して話してきた。
「オリヴィアは今日の夜会は大丈夫かい?」
そう今日は娘の社交界デビューなのだが
一緒に食事をしている母様は特に何も言わないし私の事に関しては無視している。
キャロルが生まれるまではきっと可愛がってくれていたとは思うがそれも4歳ぐらいまでなら私の記憶も怪しい。
キャロルは小さい頃から病気がちで手がかかり母様がかかりきりになるのも仕方がない事だったけど、それでも私への愛情はなくなり全てキャロルへと愛情が注がれていった。
その分父様が私をものすごく可愛がってくれたから寂しくはなかった。
ただ父様は男の子が欲しかったせいで、私には人形遊びなどさせずに剣術を教えてくれていた。
父様は家の伯爵位を継ぐ前は王宮騎士をしていたそうで、位も高くはなかったけど騎士としての訓練はかなり頑張っていたみたい。
私も剣術にはまり この年になっても暇なときは鍛練していたりする。
「今日の夜会でのドレスも届いてるし凄く楽しみです!」父様の質問に答え朝食も済ませたので席を立とうとしたら
クラッ
ヤバい目の前が暗くなる‼️
急にめまいに襲われた・・・・そのままガタッと倒れて気を失っていた。
・・・・・・・・・・・・
「オリヴィア・・・・」
「オリヴィア!オリヴィア!」
・・・・
父様とブラッドの声がする・・・・
うっすらと瞼を開けると
何だか頭が痛い。
ボーっとする
あれ?この顔見たことある!!
それは父様とブラッドなんだから当たり前なんだけど・・・・記憶がおかしい。
あーーーーーーーーーーっ!!
私 大好きな先輩に告白出来ず転けて頭打って死んだんじゃなかったっけ?これ夢?
前世?私生まれ変わったの?
頭の中を整理しているあいだ ずーっと放心状態の私に父様とブラッドの顔色が青くなってる・・・・でもここに母様はいないのね・・・・と冷静な自分もいる。
・・・・っていうかこれ前世でハマってたゲーム『白き姫と青き星』の乙女ゲームに似てる!っていうかゲームそのもの!!父様もブラッドもゲームで出て来た人物と同じ。
え?私オリヴィア?あの性格悪い?主人公をいじめて楽しんでたオリヴィア?
家庭内では実の母の愛情に飢え、実の妹のあざとさにあきれ、父には愛されたが母の愛情をもらうブラッドには冷たくブラッドの存在を認めようとはしない我が儘で自分勝手で・・・・侍女達にも自分が偉いんだと権力をかざし周りに当たりまくる最低最悪・・・・そう悪役令嬢!
あー思い当たる‼️今までの13年間の所業を。
「オリヴィア!オリヴィア?」
・・・・
「はい」
やっと父様とブラッドに返事をする。
虚ろだった瞳が今は二人を視界にいれることが出来た。
「オリヴィア大丈夫なのか?今医者を呼んでいるがどこか痛いところはないか?」
「オリヴィアよかったよ・・もう急に倒れるから僕・・・・僕」
ブラッドが心配のあまり泣き出していた。
こんなに優しいブラッドを今まで何で困らせて来たんだろう。
いっぱいいっぱい嫌なこと言ったのにいっぱい傷つけて来た。
この13年間みんなを困らせて、本当ごめんなさい。 前世の私の記憶が今の私を戒める。
「ごめんなさい」私は頬を伝う涙ポロポロ流れて溢れて止まらない。 自責の念だろうか。
何故泣いてるかわからない二人は私を見て困っている。やはりどこか頭をぶつけてしまったのだろうかとものすごく心配している二人に
「もう大丈夫よ 今日の夜会を考えたら昨日眠れなくて・・・でも大丈夫!」
無理やり元気な素振りを見せて二人を安心させる。
「部屋で少し休んでる」というと二人はまだ少し心配しているようだったけど、部屋から退室してくれた。
今部屋の中にいるのは身の回りの世話をしてくれる侍女のティナだけどんなに私が嫌なことを言っても忍耐強く私のお世話をしてくれるただ1人の侍女。
他の侍女は次々に辞めていったのにティナだけは辞めなかった。理由は『他に行くところがないから』
だとか。
「お嬢様大丈夫ですか?今暖かい飲み物お持ちいたします」
あー・・・・私の事を考え行動してくれる。
ティナは本当に優しいんだ。
ティナに聞こえるか聞こえないぐらいの声で
「ティナ今までごめんなさい」
ティナはびっくりしてこちらを振り向いたが、私は下を向いたままだったのでティナの驚いた顔は見れなかった・・・・。