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私は婚約者選びからブランジュ伯爵家の領地の事件そして大会当日や昨日の事件、今日の朝起こった事など、全てをカトリーナ嬢に話した。
今までの事件は内容が濃すぎて、軽くしかカトリーナ嬢に話してない部分もあったため、カトリーナ嬢は話を聞き終わって、一時的に言葉が出ない感じだった。
「今話した内容に1つだけ、オリヴィアが知らされていない事がある。それは必ず秘密にしてもらいたい。」
私は申し訳なさそうにカトリーナ嬢に頼んだ。
カトリーナ嬢は我に返リ、
「もちろんですわ!殿下の頼みを私は必ず守ります!そしてオリヴィア様を私にも守らせていただけませんか?」
「守るとは?」
「今のお話しの内容は最初からアルバート殿下の婚約者に疑わしき者を傷つけようとしております!もう一人の婚約者候補だった伯爵令嬢のレイラ様も、精神的に追い込まれたのですわ!オリヴィア様や私にケガをさせてアルバート様から離すのが目的ですわね!」
「そうだね。でもローラが1番怪しくてもローラ自体は何もしていないのは事実なんだ。証拠が掴めない!麻薬の類いを使っているかもしれないが、黒髪の男がローラに何を求めているのか検討がつかない。もしローラが私の婚約者になれたとしても、指名手配されている身である以上はローラからの恩恵も何も受けられない。そもそもローラの親族なのか確証もないんだ。」
「でもこのまま何もしなければ噂だけで殿下の婚約者はローラ様となってしまいます!それはオリヴィア様や殿下にとってこの先あまり良くない未来となります。」
「今は薬も出来ていないし、こちらに勝算がないんだ。」
私はもどかしい気持ちでカトリーナ嬢に答えた。
「先の事は私には、わかりませんがオリヴィア様を助けてあげれる方法が1つあります!」
「それは?」
「アルバート殿下の婚約者を発表してしまうのです!」
私は衝撃で言葉が出ない。いつかいつかは、と思ってはいたが、今その決断は難しい。
「もちろん、オリヴィア様の名前だけを出せばオリヴィア様が危険にさらされます!なのではっきり『名前は伏せますが侯爵令嬢と伯爵令嬢の方を婚約者候補として、今妃教育を行っています!』と申せばいいのです!男爵令嬢のローラ様が違うと皆様に公表できます!私は名前を出してもらっても構いません!しかしオリヴィア様は嫌がるでしょう。あの方は私を傷つける者がいたら守ってしまいます。」
そうだろうね。
「そして前から決まっていたとおりに殿下の卒業パーティで婚約者を発表すると申せば、犯人の狙いは二手に別れます!」
「カトリーナ嬢!君も狙われてしまうのだが。」
「私は侯爵令嬢です!護衛もしっかりしておりますし、殿下が別に護衛をつけてくださっているのも知っておりました!前回のような学園行事は来年まで、もうありません。私が用心すれば大丈夫でしょう!」
「まずは、ローラ様を傷つけずに周りの噂の火種を消しましょう!」
カトリーナ嬢はいつもは大人しく、おっとりとしているように見えたが、言動がオリヴィアに似てきたな。
私はつい、
カトリーナ嬢の頭をポンポン撫でて、
「ありがとう。」
と言ったらカトリーナ嬢の顔が真っ赤になって固まっていた。
そして私から少し離れて、
「これでは私が殿下を諦められなくなるので。」
真っ赤になった顔のまま、私を見つめていた。
カトリーナ嬢は本当に優しい女性で、それなのに巻き込んでしまっていいのだろうか?
私は何が正しいのかわからない。
「殿下!オリヴィア様を守るのでしょう?」
カトリーナ嬢は私が決断出来ず悩んでいるのがわかったのか、私を諭してくれた。
「カトリーナ嬢、本当にいいのかな?君の将来は大丈夫だろうか。」
「大丈夫ですわ!私は侯爵令嬢ですから、縁談は山のように届きますから、心配なさらないで下さい。」
カトリーナ嬢の瞳は揺らがず真っ直ぐで、そして優しく私に微笑んだ。




