表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第9章 リドルボルグ魔法学園
92/93

第91話 アオイクニ

 力を込めたリグスの両腕はさらに太くなり、無数の血管が浮き出る。そして、その先端を中心に激しい光が発せられる。それは眼の視界を奪うほどの激しい閃光だ。

「あれなんだろ?」

 まぶしさに眼の開口部を半分閉じて、エマが聞く。

「なんか原子を操ってるな。核分裂か?」

 トマが答える。

「えーと、それってつまり?」

「つまりそれは、核を使った魔法ってことかな」

 トマがそう言った瞬間、すさまじい光がその場を包む。

原初魔法(アルケーマジック)【ブルーコアニュートロンフ(青原子核爆発)レア】」

 リグスはそう唱えて、体の真横に伸ばした両腕を伸ばしたまま胸の前に持っていきその両手を包み込む。リグスの両手はまるで太陽がそこのあるような輝きを放っていた。その手は円状に煌めく。

 周りにある青い岩がその熱で溶け始める。

「すごい魔力ね。あれ放つとこの辺一帯消し飛ぶよね」

「そうだね。この空間は地球とは次元が違うみたいだからそんなに影響はないけど。それにしても、あれだけのエネルギーだから、時空間に影響が出そう」

「はあ、しょうがないわね」

 エマは目を閉じて、首を振った。そして、頭の上に手を突き出す。

「えー、この世界における生きとし生けるもの、私の手を取りなさい。そのつながりはやがて大きな波となり風となる。そして、絆は一つの星になる」

 エマの両手が前側に突き出される。

「【ディセントグレーション(星の崩壊)ノヴァ】」

 エマがそう唱えると同時にリグスの手からも強い光線が放たれた。それに合わせるかのようにエマの手からも黒い光線が放たれる。

 黒い光線とリグスの光線はお互いに正面に向かい走っていく。そのすさまじい熱気により進む先から周りの岩は溶けていく。光線が通ったその地面でさえ溶解し、そこには一つの溝が刻まれていく。

 二つの光線はちょうど真ん中で激しく衝突した。

 しかし衝突した瞬間その衝撃はなく、エマが放った黒い光線がリグスの光線を飲み込んでいくのだった。それはまるで一匹の黒い大蛇が大きな口を開け、すべてを丸呑みしているかのようだった。リグスの光線は、その光を端から失っていき、何事もなかったように消え去っていく。そのままエマの光線はリグスめがけて飛んでいく。

 リグスは思いがけない光景に、背中に冷たいものが這うような感覚を得た。自分が放った力は、禁足事項が多い幻影である今の姿で出せる全力のものだ。しかし、この魔法だけには制限はない。想定しうる最悪の事態に備え、この魔法の鍵だけは解除されている。それはつまり、本体で出せる力にも匹敵するということを意味していた。

 その魔法が何の反応もなく、かき消されるようにして飲み込まれていく。今目の前で起こっている事は、生まれてから今まで味わったことがない驚愕な出来事だった。リグスは、思わずつばを飲み込む。頭から背中にかけ、冷たい一筋の鉄線が一本入っているように体は冷え切って反応しない。よけなければいけない。それは分かっていた。しかし、もはや指一本動かすことはできないほど硬直していた。

「う、うわああああ」

 それは魂の叫びともいえるものだった。腹の底から絞り出すように出てきた言葉だけがリグスに出来た唯一のことだった。消滅という二文字が頭をよぎる。リグスは思わず目を閉じた。


「はい、おっしまい」

 エマの声が耳に届いた。その高い声は、いやな音階ではなく、とても心地よくリグスの耳に響いてきた。リグスは恐る恐る目を開いた。

 目の前にある光景は、えぐれた地面と溶けた岩山だけだった。

「これは、これはいったい……いったいどうしたことだ?」

 リグスの顔面は多量の汗をかいていた。あまりの危機的状況でうまれた、緊迫感と不安感がその汗を誘発した。頭皮から分泌された汗は、顔を伝い顎から地面へと落ちる。手も足も震えていた。力が入らずそのまま膝をつく。

「説明しますと、相対的な力で打ち消したとでもいいましょうか。いうならば、光崩壊ですね。原子を崩壊させたと――」

 トマが教壇で得意げに教鞭をふるうプロフェッサーのように目を閉じ、指を立てて説明していると、エマは両手を上げて振り回す。

「ちょっと、自分がやったみたいに解説しないでよ! 私に押し付けたくせに!」

 

「相対的な力……なんだそれは……信じられない。星を壊すほどの全力で打ち込んだ力を打ち消した……お前たち人間か? 強すぎる。これは……我にはどうしようもできない。無念だがこの世界は終わりだ」

 青い男はそう言って地面に肘を叩きつけて突っ伏した。

 それを見てエマとトマは顔を見合わせる。

「えーと。たぶん終わらないと思いますが。僕たちに世界を壊す意思はありませんけど。何か勘違いされているようですが、詳しくお話いただけませんか?」

 トマは微笑をうかべ、手を胸に当て礼儀正しく浅く頭を下げた。

「あんたはいつもいいとこばっかり!」

 手を振り回し怒るエマの頭を左手で御し、右手を胸に当てている。

「ふんぬー」


「なんだと、壊さない? しかし、お前たちは兵器のロックを解除したのだろう? お前たちは何者だ? 人類ではないのか?」

「人類? えー、まあ、何者だと言われましても、しがない魔法使いの姉弟だとしか言いようがないと言いますか。厳密にいえば僕ら本人も誰なのかあまりよくわかってないんです」

 トマは手を頭に当て笑って見せた。

「それにしても、兵器のロックっていうのはあの、血液検査のやつかな」 

「そうだ、【銀雪の大砲】を作動させたのだろう」

「ああ、あの大砲そんな名前なんだ。ある種の血液に反応するのかな。まあそれは不可抗力です。出来ればなかったことにしてもらえればうれしいのですが」

「不可抗力なのか。おかしな奴らだ。使用意図がないのならば問題はない。我が名は、リグス・マキナス。全宇宙を占める魔神の一人。青の門をつかさどる魔神だ」

「ほおー」

 トマは感心して声を上げる。

「そして……我はこのような状態なので、もうあまり話せることはない……以上だ」

 エマは、思わずずっこける。

「ちょっと! もったいぶった間の使い方して、話せることはない……以上だ……じゃないわよ!」

 エマはリグスの口真似をして、両腕を上げてそう叫ぶ。

「まあまあ、エマ。何か理由があるんだよ。質問はできるのかな。えーと、この空間は何ですか?」

「この空間は、我の管理するもの。この学園とこの星を守るために作られた」

 トマは思考をめぐらす。

「では、あなたは何かしら制限があるようですが、それはなぜですか?」

「我はただの魔力結晶体に過ぎない。本体は別の場所にある」

「ふむふむなるほど。本体ではないと。守る……ということは、あの大砲のような兵器と関係があるのかな」

 トマの言葉にリグスはうなずいた。

「あの兵器に関係がある、ということはあの銀雪の大砲はかなり重要な兵器のようだね。しかも、あの兵器に入っていた黒い立方体、あれはかなり高濃度の魔力の塊だった」

 トマが言う。

「あーそういえば、あれ、私見たことあるかも」

 エマが虚空を見つめながらそうつぶやいた。

「ああ、そういえば言ってたね。どこで見たの?」

「えーとね。たしか、【ビュートスター(卓上の星)】って空中要塞があったじゃん、リトマス連合国のアルファベットの基地だった。そこでジェイと一緒に見つけたんだよね。触ろうとしたらジェイに止められちゃって」

「そうか、原動力に使われてるのかな。あれほど高密度の魔力結晶体は普通ないもんね。人工的に作る【マジッククリスタル(魔力結晶)】とは雲泥の差だよ。ということは、ビュートスターも何かしらの兵器ってことかな」

「マジッククリスタル……ああ、アリの体から生成してたやつね」

「そうだね。人工的なマジッククリスタルはその魔力もその持続力もたかが知れてる。いわば充電装置のない電池みたいなものだね。でもあの黒い立方体からは魔力が持続的に生み出されていた。ジェイに止めてもらってよかったね。君みたいな魔力の塊が触っちゃったら落ちてたよ、その空中要塞」

「へ、へえ~」

 エマは笑いながら目を泳がせた。

「そしたら、絶対怒られてたね」

 トマはそう言いながらエマに向かってふくみのある笑みをこぼす。

「リグスさん。そういえば、青の門って言ってましたけど、もしかして、魔法の門のことですか?」

 トマはリグスに尋ねた。

「その質問には答えられない」

 しかし、リグスはそれだけ言って口を閉じる。

「魔法の門ってなに?」

 エマが聞く。

「いや、ほら、みんな唱えてるじゃん。マジックゲートオー(魔法門開放)プンって。そんで、青だから魔法と関係があるんじゃないかってね」

「青って、レインボーマジカル(七色の魔法魂)ソウルのこと?」

「そうそう。魔法って色で別れてるじゃん。ちょうど虹みたいに赤から紫まで。青の門を司ってるということはその門の門番ってことでしょ。だから彼がその門を開いてるんだよ、たぶん」

「ほあえ。そういうこと。でも私たちの時代には、魔法を引き出す門なんてなかったわよ、マジカルソウルの色分けはあったけど」

「だね。だから、そこが謎なんじゃない」

「なんか楽しそうね」

 ニヤニヤするトマを見てエマはなんだかむかついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ