表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第9章 リドルボルグ魔法学園
91/93

第90話 危険な試験

 リリーとフィン、そして謎の女の子と問題児ネラはディズアナシスに連れられて、学長室に連れていかれていた。静かに並んでついていく三人と、あたりをじろじろと見渡しながらついていくネラの態度は対照的だった。

 一時は騒然とした血液検査会場だが、新しく来た担当教員の指示もあり、生徒たちは静かに並んで順番を待っていた。

「あっそろそろ私の番ね」

 エマは笑顔でそう言った。

 目の前にある巨大な面白そうな装置に興味津々だった。肩をゆらゆらと揺らし待ちきれない様子で待っている。

「うーん……あの魔力の流れ。どうにも不自然だよな。何か引っかかる……」

 しかし、トマはさっき見たリリーの事が気になってしょうがない。あごに親指を当て、ぶつぶつと考え込んでいた。

「体内の魔力の流れがなんかおかしいし、知っている色だよな。もしかしてーー」


「それでは次の方」


 担当教員がそう促すのでエマはさっと動き、ちょこんと椅子に腰かた。その小さな細い腕に注射針が打たれ、赤い血液がシリンジの中に吸い出される。

 そして、教員はその血液を試験管の中に移し、少し振りながら上にあげて何か確認した後、目の前の銀色の大掛かりな装置に入れた。

 それは、いままで何千、何万と繰り返されたことだった。担当の教員は、勤務歴15年のベテランだし、入学試験の血液検査は何度も担当した。しかし、今回は違ったのだ。

 その血液検査の装置は、確かに血液の魔力量を量るためだけにしてはいささか大きすぎた。それは誰もがその装置を目にして一番初めに思うことだ。しかし、教員たちはもうそれに慣れてしまっていた。いつからその装置がこの学園にあるのか知るものはいない。学園長でさえ、それはどこから来たものか知らないが、ただ学園にあり、そして、たぶん何百年も生徒たちの血液を量ってきたのだろう、というあいまいな想像程度の認識しかなかった。

 そして今、その装置が何なのかがはっきりする瞬間が来てしまったのだ。エマのせいで。

 それは、エマの血液を入れてものの数秒で始まった。

 その部屋に縦横無尽に張り巡らされた銀色の配管ががたがたと揺れ始め、各所に取り付けられた大小様々な計測ゲージが一気にレッドゾーンに振り切れる。上がりすぎてしまった圧力を下げるための安全弁が開き、凄い噴射音とともに部屋中に蒸気が飛び出す。


「ちょ! なんなのこれ!」

 担当教員は、大声でそう叫び、飛び出してきた蒸気を避けるようにかがみながら、頭を押さえて装置を見る。

 「やばっ! エマ、もう検査しちゃったの!?」

 目の前の事態にトマは慌てる。

「えっだめだった?」

「だから、君の魔力量なんて測れるわけないって言ったじゃん! ごまかそうと思ってたんだけど、考えこんじゃってた! どうしよう」

 しかし、後の祭りだった。

 四方八方に蒸気が飛び出し、部屋が熱気でこもり始める。装置からは汽笛のような甲高い笛のような音がなり、だれが見ても危険な状態だった。ましてや、新入生はまだ10歳前後の子供達だ。目の前に起こる事態に慌てふためく者や泣き叫び腰が抜ける者など、試験室は地獄絵図と化した。


「爆発するかもしれない! 非難を! こっちです」

 数人の教員達が集まってきて、生徒たちを抱きかかえ避難させ始めた。

 しかしその時、だれもが予想もしなかったことが起こった。

 突然大きな金属がぶつかり合い、接合されるような重厚な音が何度も鳴り響き、装置のパイプは次々に折りたたまれるように小さくなっていく。

 常識では考えられないような動きでにぐにゃぐにゃと形状を変えていき、ありとあらゆる部位が機械音とともに別々の部位とつながり始めた。その重厚な音となめらかな動きは相反するようなものだった。

 ものの数十秒だった。ある種の完璧な形になり、それは完成したのだと分かった。

 目の前にあるのは銀色に光り輝く大砲のような兵器だった。

 その大砲はまるで化学の粋を結集したかのような精密な作りで、つなぎ目や、リベットはまったく見受けられない。鏡のように磨かれていた。その場にいた教員も、生徒たちも、エマとトマでさえ、動きを止めて絶句していた。

 トマは頭を抱える。

「あちゃー。またなんか起っちゃったぞ」

 その言葉に反応するかのように大砲の中央部分が両開きで上のほうへ開閉され、その中では黒い六面体がくるくると回っていた。

「あれ、なんだか見たことあるわね」

 それを見てエマがつぶやく。その時、急にあたりの空気がまるで凍り付いたかのように固まった。世界は白と黒だけになったようにかすみがかり、誰もが動きを止めた。エマとトマはあたりを見回す。

「時間の流れが断裂した。なんか嫌な予感がする」

 トマはつぶやく。

「楽しそうじゃん」

 エマは笑う。

 すると二人の前に急に大きな渦が現れ、その渦は一瞬で二人を飲み込むのだった。


 その場所は青に染まっていた。

 そこにある湖、空、山、そのすべてがコントラストの違う青で彩られていた。まるで、水の中に青い絵の具を落としてその中に入り込んだようだった。

 エマとトマの前には、青い人物が一人立っている。その人物は体全体が青色だった。

「あら、こんにちは。あなたは?」

 エマが訪ねると、その青い人物は口を開いた。

「久しぶりに来た。世界を恐怖に陥れるもの……」

 二人は脈絡もない言葉に何のことだが意味が分からない。

「うーん。面倒くさそうなのが来ちゃったね。予感的中かな。エマの血液だったんだから、エマに任すね」

 トマはそういうと、エマの背中を押す。

「ちょ、ちょっと! 薄情ね、意味わかんないんだけど!」

 エマは焦り抵抗するが、トマは笑いながら背中を押す。

 その青い人物は簡単な腰巻をしていて体中に金色の装飾品とピアスをしていた。青い世界で、色がついているのはその装飾品だけだった。その青色の体躯は、隆起した筋肉がぼこぼことついていて、まるで鎧のようになっていた。エマ達とは三倍か四倍ほどの背丈を持つ大男だった。その男は、一本に結った長い三つ編みを揺らし、無骨な顔についている力強い目で睨みつける。

「悪は滅ぼす!」

 そう言い放ち、地面を蹴る。蹴られた地面は割れ、時空間をえぐるようなスピードでエマに突進してきた。一瞬でエマの目の前まで到達し、そのままの勢いでエマの顔面目掛けて右手刀を振り下ろす。

 その剛撃がエマに当たると同時に、そこを中心に凄まじい音が響き渡り、その並外れた威力でその場にはクレーターができる。

 ドーム状に粉塵が舞い上がり、あたりを覆い隠す。その中でかわいらしい声が響く。

「ちょっと、いきなりなんて失礼しちゃうわね」

 そこには顔色一つ変えずにその手刀を受け止めるエマがいた。エマの足元は沈み込み、エマを中心に無数のひび割れが円状に広がっていた。

「ば、ばかな。我の全力を……」

 青い男のエマの胴体ほどもあろうかという剛腕は、か細い少女の手で受け止められている。男の腕はぶるぶると震え、かなりの力が入っているのがわかる。

「くっ、動かない……」


「トマ。これどうすればいいの?」

 エマはそのまま振り返りトマに聞くが、

「僕にもわかんないよ。でも全身青いから人間じゃないんじゃない? すごい大きいし」

 理解できない状況に首を振りながら答えた。

「なにその無駄な情報。今関係ある? まあいいわ。なんか勘違いしてるみたいだけど、説明したって聞きそうにないから、ちょっと稽古つけてあげる」

 エマはそう言うと、つかんだ青い腕に力を込めて思い切り振りぬいた。

「えいっ」

 青い大男の体は、弾丸が空気を切り裂くような状態で人間とは思えないほどの速さで音を立て飛んでいき、はるか彼方の岩山にすごい勢いで叩き付けられた。そして、その勢いは止まらずいくつもの山々を突き抜けていく。あたりの山は崩壊し轟音が鳴り響く。


「やりすぎだよ。まあこの空間に生物反応はないから、いくら壊しても被害は大丈夫そうだけど」

「そんなの私もわかってるわ。動物いたらこんなことしないわよ。かわいそうだもの」

 トマとエマがそんなことをしゃべっていると、岩の残骸をはねのけて青い男は飛んで帰ってきた。

「お、おまえ、何者……」 

 男は誇りまみれの体をはたきながら言った。

「私はエマ。隣にいるのが弟のトマーーってか、それより、これ、どういうことか説明してよ」

「我は青の魔神、リグス・マキナス。この星を、この大地を守るためにいる。たとえ我が滅ぼうともこの場所は守る」

 リグスはそういうと、両腕を肩と同じ位置まで上げる。拳を握り力をこめる。

「うおおおおおおお」

 周辺の魔力がどんどんとリグスに集まっていく。そしてその両腕は閃光のように青白く光り輝き始める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ