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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第9章 リドルボルグ魔法学園
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第86話 ワーストリユニオン

 リリーは突如起こった、脳が揺さぶられる感覚で目を開けた。

 お尻に痛さと石の冷たさを感じて、自分が尻もちをついているんだとわかった。

 見上げると、誰かが自分を見下ろしている。

 リリーは校門の前で、今朝のへんてこな手紙について思い返していて、誰かとぶつかってしまったんだと気が付いた。

 リリーが謝ろうとした時、思いがけない声がした。

「おい、今なんか当たったか?」

 ぶつかった相手がひどく冷たい声で言い放った。その声には聞き覚えがある。

 ソフィアが殺された時に魔法を放っていた少年だった。


「なんだぁ? そこに転がっているのはもしかして、リリーお嬢様じゃないのか?」

 その少年はヘラヘラとし、リリーを馬鹿にする。

「ちょっと、あんまり言っては可哀想ですわよ、ネラさん。まあでも、リリーさんは世の中しょうがないこともあると知るべきかもしれませんね。役立たずにはその存在価値はない、と父上もおっしゃってました。あなたはつまり、存在価値はないということですかね」

 ネラと呼ばれた少年の隣では、とても明るい金髪の巻き髪の少女が、その髪に手を当てながらネラの言葉を助長させるように話す。この少女もあの時横にいた一人だった。

「そうだな、ガーネット。こんなナヨナヨした女男がこの学校に必要なのか?」

 そう言ってネラは、尻持ちをついたまま起き上がれないでいるリリーを、冷酷で荒んだ目つきで見下げる。


 その時リリーはハッとする。

 もやもやと黒い何かが心の中に広がっていく。それは恐怖心がだった。

 ソフィアが怖がっている。リリーは思わずあの惨劇を思い出し、おもわずネラを睨んだ。


「あぁ! なんだその目は!」


 リリーの眼光が気に入らなかったのか、ネラはおかしなほど突発的に激昂し、すごい速さで、座り込んでいるリリーの胸ぐらを掴んだ。そして耳元で威圧するように喋る。


「お前、勘違いしているようだな。そもそも、素性すら疑わしい欠陥血統のお前が純血の俺たちと対等に関われるとでも思っているのか? しかも魔力も腕力もないお前はこの国にはいらないんだよ。そうだ、そういえばこの間魔法で魔物を倒したんだ。お前も俺の魔法の実験台にしてやるよ」


 それはソフィアのことだと瞬時に悟った。

 ネラの命を命とも思っていない軽んじた言葉が、リリーの心を得体のしれない熱い何かが覆っていく。

 リリーが静かに、そして俯いたままで、自分の胸ぐらを掴んでいるネラの腕を掴み返す。


「んっなんだこの手は? お前はまだ立場が分かっていないようだな。本当にやってやろうか? んっ? こ、この! てっ、手をはなせ!」

 最初こそ強気に話していたネラだったが、だんだんと自分の腕に込められていく力に予想外の反応をみせ金色の頭髪を振り乱し、暴れ始める。しかし、リリーはびくともいしない。

「が! あががが!」

 ネラが悲痛の面持ちに変わる。

「い、痛い! 痛い!」

 

 凄まじい力でギリギリとネラの腕を掴むリリー。

 リリーが項垂れていた顔を徐々に挙げると、その顔のおでこから目にかけての右半分に赤い細い線で構成された幾何学模様が浮き上がっていた。

 リリーのその目は白く染まり、まるで正気を失ったような面持ちでネラの腕を掴み続ける。

「いてぇ! 離せ、は、はな、はな……!」

 ネラは痛みのあまり、リリーの顔を確認することもできなかった。そして必死にその腕を振りほどこうとするがまったく動かない。

 その様子を見ていたガーネットは、ただならぬ事態に恐怖し足がすくんでいた。


 しかしその時だった、ソフィアの意思が急激にリリーに流れ込む、

『もう、やめてください。私は大丈夫ですから!』

「ぐっ!」

 リリーは突発的な胸の痛みを感じて胸をおさえる。

 それはソフィアを蘇らせた時のようなズキズキとした痛みだった。

 リリーは痛みでネラの腕を離したあと床に手をついた。呼吸は乱れ、うなだれたまま体は大きく上下していた。


「ふざけんじゃねぇ!」

 ネラはそう言うと、リリーの腹を蹴り上げ「いくぞ」と言ってガーネットを連れて立ち去った。


 ソフィアは、とても心配そうにかけよる。周りを見渡してみるがちょうど人気がなかったようだったので少し安心した。

 リリーはネラに蹴られたこともあったが、それ以上に心臓に突き刺すような痛みが走っていた。

 それとともに今朝の手紙の事を思い出す。

 あの手紙には、自分の体があまり丈夫ではないと書いてあった。

(も、もしかして、この心臓の痛みは……)

 リリーは今まさに実感している。この胸の痛み、自分の体のことは自分がよくわかる。これは、普通ではない。

 自分の体は長く持たないのかもしれない。そんな最悪の予想が頭をよぎる。

 これはもうソフィアに話すしかないなとそう感じていた。


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