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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第9章 リドルボルグ魔法学園
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第83話 ミッドナイトストラテジー

 話数の変更など、割り込み編集などいたしましたが、内容などは変更しておりません。大変お騒がせいたしました。

「じゃあ、行ってくるよ」

「まあ、あんたが行くんなら大丈夫でしょうけど、いいの?」

 手を上げて、行こうとするトマにエマが聞く。

「うん、大丈夫、大丈夫。ちょっと助けるだけだから」

「どうせ、トマの事だから、学園が気になるんでしょ? 本当ずるいわよね。私にはさんざん手を出し過ぎるとかなんとか言ってさ」

 トマの軽い返答に、エマは腕を組んで顔をしかめる。

「はは。まあまあ、エマはいつもやり過ぎるからこうなるんだよ。僕は、上手くやるからね」

「うーん。なんだか納得でいないわ」


「まあまあ。今日はエマはお休みってことで。じゃあ、行ってくるよ、お土産いる?」

「なんなのよ、お土産って? ふざけてないで早く行ってきなさいよ」

「ははは、じゃあね――」

 トマは手を振り、笑いながら消えていくのだった。

「ふう、私はもう少し、森のなんちゃらっていう組織についてあの人たちに聞いてみようかしらね」

 そう言いながらエマは、先ほど会議が行われていた部屋に戻っていくのだった。


 トマは、さっきまでいたリシュルにあるパン工場から、8百キロメートル以上離れた首都ライザの上空に浮いていた。

「今日は風が強いな」

 横から吹く強い風に片眼をつぶる。

「あそこが魔法学園だな」

 ルンガ地区の中央に鎮座するライザ王宮。

 その大規模な敷地に隣り合うように学園の敷地がくっついている。そしてその境目は、高い壁で仕切られており容易には通り抜けることは出来ない。


 トマは、目をつぶり思考の中で魔力を捜索する。

「えーと、捕まった仲間、仲間っと……おっ! これっぽいな、えーと、この場所に飛ぶとなると……6か所の魔法防御と、4つの魔力感知を潜り抜ける必要がある。自分の魔力は完全にゼロ調整して……魔法防御は一旦反転させておくっと。これでよし――」

 トマはぶつぶつと言いながらフッと消える。

 

 その部屋は冷たい石で出来ており、至る所に汚れが飛び散り、嫌なにおいがする。鉄格子付きの小窓が上部に一つだけ開いており、そこから月明かりが四角く差し込んでいた。

 その光の中にトマは現れる。

「ここか。うーん。でも、なんで学園にこんな場所が必要なのかな? それにこの人、瀕死だな。殴られたのか、かなりひどい……学園で拷問を行ったのか……」

 トマはグッドサインを顎に当てる。そして、訝し気な表情を浮かべる。

「どうやら、この学園には血も涙もない魔物が潜んでいるらしい」

 目の前には牢獄の柱に腕を繋がれぐったりとしている人物。

 トマはその人物に近づき手をかざす。


「さてと、二日前ぐらいでいいかな。【フィジカルリビルデ(肉体再構築)ィング】」


 トマが唱えると、黒い光がぐったりした人を包み込む。

 すると、見る見るうちに服は綺麗に修復され、怪我も治っていくのだった。


 しばらくすると気が付いたのか、その人物はゆっくりと目を開く。

「あ、あれ……僕はどうしたんだ?」

 その人物は、ふわふわの口を動かして喋る。耳はウサギの様に長く頭の上に伸び、口と鼻もウサギのようだ。目元の辺りは人間に近く、パッチリとした赤い目を持っていた。

 そしてウサギのような鼻をクンクンと動かし話す。

「何故……? 体が治っている!」


 トマは月明かりの下、右手を大きく仰ぎ、流れるような所作でその手を胸に当ててお辞儀をする。

「どうも、初めまして。僕はトム・ブリスティアンと申します。あなたをお助けに上がりました」

 キラキラと輝く金色の頭髪。スッと上げた顔は穏やかな笑顔だった。


(何……この人、とても綺麗だ……)


 鎖につながれたまま、硬直し、その人物は頬を染めて、トマのことを呆然と見つめていた。

 しばらくの沈黙が訪れ、トマは反応のないその人物を見つめながら首を傾げる。

「あっ、うっ。す、すいません。つ、つい見とれてしまって。ぼ、僕の名前は、イナ・リトル・キャンベル。イナと呼んでください。それより、僕はかなり痛めつけられていたはずだけど」

 イナは、自分の体をまじまじと見る。トマよりは少し高そうな身長、そして起伏のない細く華奢な体だ。

「ああ、それは、僕が治しました」

 ニッコリ笑ってトマが言うと、イナはまたトマのことをしばらく見つめて、夢でも見ているかのような表情で言う。

「あなたは天使様か何か? 僕の命を奪いに来たのかい?」

「あはは」

 トマは、とても楽しそうに笑う。

「まさかそんな。助けに来たんですよ。それより、少しお願いがあるのですが、僕が君を治療したこと、それと、これから起こることは黙っていてください」

 トマは、口に人差し指を当ててウインクした。イナの目線はトマに向いているが、その焦点はどこをとらえるともなくただを見つめていた。

「君は、治療する必要がなかった、そして、運よく、抜け出せたという事でお願いします。抜け出たところで僕にあったと」

 トマは、そう言いながらイナの額に手を当てると、その手からは橙色の光が灯る。

 その光に包まれると、イナは心地よくなってどうにも目を開けていられず眠りに落ちる。トマは、そのまま力なく倒れ込むイナを抱きかかえた。

 そして、イナを拘束している鎖に手をかざすとその鎖が塵となる。


「よし、じゃあ、帰ろうかな。あれ? 学園の人達、もしかして気づき始めている……なかなか油断ならないな。元に戻して早急にこの場を離れないと」

 そして、トマは一瞬にしてリシュルまで戻る。そこは、四季の香り工場前の森の中だった。


「ほら、大丈夫?」

「は、はい……」

 イナはぼうっとしながら、差し出された手を掴む。

「歩けるかな? 皆はこの先で待ってますから」

 イナはトマの手をつかんで思った。

(ああ、なんて温かい手だろう)

 静寂と暗闇が支配する時間。月の明かりが辺りをやさしく照らし、トマとイナを浮き立たせる。

 イナは、トマの手の温もりを感じ、それと同時にその心の温もりに触れたような気がして、涙を抑えることが出来なかった。


「ただいま戻りました~」

 トマが部屋に入ると先ほどまでいた顔ぶれに変わりはなく、一斉にトマの方を向く。

「イ、イナ!!」

 スズは驚きの声を上げて、駆け寄り抱き着く。そして、二人は再会の涙を流すのだった。

「よ、よかった……」

 モナも涙を流し、タルトはゆっくりと近づきイナの体を心配していた。

「実は、なんとか抜け出せてみたいで、僕が到着するとイナさんは既に敷地外に出ていました」

「そ、そうだったの。良かったわ、でもよくぞ無事だったわね」

「うん、運よく抜け出せたんだ」

「それで、鍵はどうしたのだ?」

 タルトが聞くと、

「それが、鍵は捕まった時に取り上げられてしまった。ごめん……でも、組織のことは言わなかったよ」

 イナはそう言ってうつむく。

「そう、頑張ったのね」

 スズはそう言って、イナを抱きしめた。


「いや、お前が無事ならいいんだ。また一からだが、やるしかない」

「そうね。命があれば、何度でも挑戦すればいい。きっと大丈夫、そんなことより、トマさん、本当にありがとう。それに無礼な態度をとってしまって」

 スズは、しっかりと頭を下げる。

「いえ、僕は何もしてません。たまたまタイミングが合っただけで。でも良かったですね」

 微笑むトマを、イナは頬を赤くし、鼻をスンスンと動かしてじっと見つめるのだった。


「それより、支部長に報告する必要があるな」

 腕を組みタルトが言うと、

「そうね、さっそく皆で向かいましょう。きっと心配しているはず。皆さん本当にありがとうございました。このお礼は必ずさせていただきます」

 スズは再び頭を下げる。

「まあ、全然気になさらないでください。そんなことより、是非支部長さんに早く報告してあげて下さい。どうぞどうぞ」

 トマが掌を差し出し言う。

「はい。ありがとうございます。では行こう」

 四人は頷いて出て行くのであった。イナは最後までトマにお辞儀をしていた。


「さてと、私はもう少し休もうかな。トマはどうする?」

「ああそうだね。僕も休むか」

 トマは部屋に帰りながら考えていた。

(確かにあの学園には何か得体のしれない魔物がいる。人間の皮をかぶった魔物か、はたまた……まあ、何かしら秘密があるんだろう)

 下記ポイントで応援いただければとてもうれしく励みになります。

 これからも読者様のご期待にそえるように、日々精進いたしますので、何卒よろしくお願いいたします。

 いつもご覧いただき誠にありがとうございます。

 読んでいただけることを糧とし日々書いています。

 とても喜んでおります。

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