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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第9章 リドルボルグ魔法学園
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第82話 ナイトインクエスチョン

 家の前の木にはセミが無限にいるらしく、すごい音量で声が聞こえます。

 共鳴するほどの音量。映画で見る風情のあるセミの声とは違いますが、私からすれば、思い出深い出来事であることは確かです。

 いつもご覧いただきありがとうございます。

 リリーがソフィアの事を打ち明けた夜、エマの暮らすリシュルにあるパン工場【四季の香り】では何やら言い争う声が聞こえる。


「だめよ、はやく助に行かないと!」

「しかし、こうなってしまっては……」

「何! ぐだぐだと! 早くいかないと! 私一人でも行く!」

「スズ姉、落ち着いて……」

「で、でも、もうどうしたらいいのか……」

 明かりも乏しい地下で、その声は響いていた。


「うーん、ふあ~。なんか、うっさいわね」

 黒と白の縞々のパジャマを着たエマが、目を擦りながら起きて来る。

 その部屋には、一本のろうそくが置かれ、それを中心に数人が集まっていた。ドアから入ってくるエマの声にその誰もが静止し、その方向を見つめる。

 

「あれ? 誰かしら? うーんと、モナ?」

「ごめん、おこした。……今会議中」

「会議中ってこんな夜中に? どうかしたの、見たことない人が居るみたいだけど?」

「モナ! 知らない奴に勝手に話すんじゃない!」

「ご、ごめん……」

 モナを叱り飛ばした女は、すっきりとした短い頭髪にパッチリと目を見開きとてもハキハキとした様子だ。

「しかし、お前どうやって入って来た? ドアのカギは閉めたが……」

 その女はぶっきらぼうにエマに聞いた。

「ごめん、普通に開けちゃった。あんまりうるさかったもんで」

「開けたって、防御魔法がかけてあるはずじゃあ……」

 女は困惑し、眉間にしわを寄せる。


「まあ、確かに事情は知らないけど、夜中にこんなにごちゃごちゃされたんじゃ、寝れないからたまったもんじゃないわ。でも私も居候の身だし、何か協力したいんだけど。私自身も隠れてるようなもんだし、他言の心配もないから安心して。何か問題があったの?」

 エマはそういうがその誰もが怪訝な顔をする。

「こんな子供に、話したってしょうがない」

「左様だな。小さな問題ではない。とても大きな問題だ」

 ぶっきらぼうな女と、その奥にいる若い男が首を振りながらそう言った。

「スズ姉、タルト……この人は、大丈夫。とても強い」

 モナが二人を説得するように話す。

「まあ、そうね、結構強いから何かしら力にはなれると思うわ」

 しかし、二人は疑惑の視線だ。


「しかし、これは組織の重要な秘密でもある」

 タルトと呼ばれた男は、長身で、狐の様な目と、細く整った目鼻立ちをしており、長く美しい金色の頭髪を揺らしながらそう言った。

「そうね。部外者に話せるような内容ではないわ」

「そう……そこまで言うなら仕方ないわね。じゃあ引き続き夢の世界に飛び込むわ。あんまりうるさくしないでね」

 エマが右手を上げて、踵を翻す。

「まって!」

 モナが珍しく必死な顔をして、エマを呼び止める。

「エマ! 力を貸して!」

 そう言ったモナは、胸に握る拳がぶるぶると震えているた。

(そうか。様子からはあんまり分かんないけど、モナはだいぶ追い込まれてるのね)

 エマは笑顔をみせ、

「もちろん貸すわよ。そっちの二人も別に害はないから、話だけでも聞かせてよ」

 スズとタルトは、顔を見合わせる。しかし、モナの必死な姿を見ると、話さずにはいられないのだった。


 四季の香りの地下はとても入り組んだ構造になっていた。幾つもの部屋が区切られて、それぞれが頑丈な防御魔法に守られていた。その一室にエマ達が暮らしている。

 エマは、最初紹介された時、パン工場に似つかわしくない構造に違和感を覚えた。


「なるほどね。この工場は、その、なんだっけ、反政府組織の根城になってるって訳ね」

「そうだけど、あんた物覚え悪いわね……組織の名は【森の住人】だって言ったでしょ」

「そうそう、それ、住人ね」

「もう良いわ」

 例にもれず、エマは何も覚える気がない。スズは諦めた様に首を振るのだった。

「でも、問題が、あるの」

 モナが喋ると、スズが続く。

「そう。実は、潜入任務に特化していた唯一の仲間が、昨日捕まった」

「潜入任務?」

「そうだ。ザイル帝国の魔法学園には確実に何か秘密がある。しかし、流石の魔法学園。手練れの教師たちが集い、歴史も古いことから、幾重にも魔法により防御や罠が仕掛けられている。しかし、この度、一つの重要な部屋の鍵を発見し、その部屋探り、秘密を暴き、それを奴らを追い詰める突破口にしようと考えていたのだ」


「ふむふむ」

 エマの隣にはいつの間にかグッドサインを顎に当てたトマが立っている。

「お、お前は誰だ! 気配もなく急に現れた……しかし、お前達よく似ているが……」

「トマ、エマの双子の弟……」

 驚くスズにモナが答えると、トマは、手を少し上げて、

「どうぞ、お構いなく。続けてください」

 そう言って、話を聞く気が満々らしい。仕方がないのでスズは、一つため息をつき、話を続ける。

「とにかく、そのカギを奪ったまでは、良かったんだが、そのままその仲間が捕まってしまった。くそっ! もっと警戒しておけば!……すまない。しかし、早く救出もしないといけない。もしかしたら、もう……」

 スズは、拳を握り歯を食いしばる。

「じゃあ、僕が行って助けてきましょう!」

 突然トマはあっけらかんと言ってのける。 

 エマはいぶかしげにトマを見る。

「珍しいわね。トマ?」

「いや~、魔法学園に興味があってね」

 手を後頭部に当てるトマの目が輝いている。この世界の魔法事情に興味津々といった所だろう。


「おいお前、聞いていたのか? 厳重で入れないっていっただろ!」

 スズは、机を叩いて怒号を上げる。タルトは、一言もしゃべらず静かにトマを見つめている。しかし、トマは冷静に話す。

「実は、魔法学園で一カ所だけ知っている抜け道があるんです。これは秘密ですが。ですので、一時間くれませんか? お仲間がどこに捕まっているのか、調べてきますので。一刻を争うと思うので」


 にわかには信じがたい事だったが、スズもタルトも打開策を持っている訳ではない。夜中だし、二人ではこれからどうする事も出来ないのだ。

 一時間という期限付きだった為、一様任せてみる事にするのだった。

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