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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第七章 謎から秘密へ
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第60話 ウィルコンセント

「……という訳です。」

トマが言い終わるとその部屋に、重い沈黙が染み渡る。


「なるほど。では、今の我々ではどうも出来ないと?」

 テーブルに座るレオナルドベアが話す。横のベッドではルナとアレクサンドラがくっついて気持ち良さそうに寝ていた。

「はい、そう言う事になります。ここはいったん引いて、時を待つのも策であると考えます」

 そう言うと、トマは紅茶が入ったカップを口にし、一呼吸置いて続ける。

「幸い、レオナルド陛下の命の期限は無くなり、今の所はほぼ無期限の状態。そして、このまま今の我々で立ち向かうにはいささか不安な要素が多すぎる。レオナルド様の力も、アレクサンドラの力も不安定ですしね」

 ディンガが口を開く。

「しかし、本当なのですか? アルファベットをも凌駕するほどの別の強敵がリトマス連合国に存在するとは……」

「はい、それは確かな情報です。もしかしたら、アルファベットを悪に引き込んだのはその者かもしれません。今の所それが誰かは分かりませんませんが、バトラー国王とメディス王妃が絡んでいるのは確かですね」

 すると、ディンガとティアナは顔を見合わせる。

「そうですか。たしかに私たちはその二人に会うことは許可されていませんでした。だからこそあまり詳しくはわかりませんが、しかし、ただの王と妃だとばかり思っていました」

 続いてレオナルドベアも話す。

「そうだな。我が息子バトラーも、怪しい術こそ使えはしたが、魔力自体はそこまでではなかった。俺が王だった時にメディスとは何度か話す機会もあったが、その時は特に妙な事はなかったし、おかしな言動もなかったな」

 ミアはいぶかしげな顔で口を開く。

「でも、何か裏がある事は確かね。私も、アルファベットがレオナルド様やステファンに反旗を翻した理由が良く分からなかったのよね。彼らは国王直属で、愚直な兵士だったけど、それ以上にレオナルド様やステファンを慕っていた。しかもナンバーワンとツーは特にね」

 レオナルドベアもそうだな、と頷く。


「しかし、兵器の方は大丈夫なのでしょうか?」

 ティアナが黒い羽を揺らして手を払うような仕草をしながら、心配そうに口を開く。

「それについては今の所問題ありません。実は、地下の一室に、兵器の核のようなものを見つけました。残念ながらその兵器の全貌は分かりませんでしたが、その核は大地から直接に力の源である、【マジックスピリット(魔法生命力)】を吸収するように作動していました。そこで、回路を破壊しそれを停止しました。まあ、一時的な処置でしかないとは思いますが。考えたのですが、その核がマジックスピリットを吸い上げる事で、大地が瘦せて枯れていたとしたら、リトマス連合国周辺の食糧危機なども核の停止により一時的にでも改善するのではないかと考えます。この度の戦いでアルファベットはかなりの打撃を被ったはず。数々の団員が痛手を負い、抜けた者もいる。しかも、組織の頂点である五人のうち二人もやられているわけですから」

 トマが言い終わると、ミアが続く。

「確かにそうですね。こんなことは今までなかった。体制を立て直すにはかなりの時間を有するでしょう」


「そうだな……しかし……こうしている今だって民は苦しみ、死んで行く者さえ……それなのに、私は!」

 レオナルドベアは、とても悔しそうにそう言い放ち、力なく項垂れる。

「ではこうしてはどうでしょうか? とにかく重要なことは僕たちの準備を整えることです。力の使い方は僕とエマが教えるとして、その間にかつての国を取り戻すべく活動をしては。つまり、水面下で国民の皆さんを助けるために動くという事です。いわゆる義賊のような事です。しかし、リスクもかなり高い。見つかってしまえば全て水の泡。我々の存在を知られないように秘密裡に任務を遂行する必要があります……」

 ミアがレオナルドベアの肩に手を添える。

「そうだな。今は悩んでいても仕方ない。俺の力不足が招いた結果だ。今俺に出来ることはこの国を取り戻すだけの力をつける事だけかもしれん」

「そうですね。でも、大丈夫です。あの時は誰も味方がいませんでしたが、今はこれだけレオナルド様を支えようとして下さる方々がいますから」

 ミアが、顔を上げて周りを見回す。

「そうだ……そうだな! よし、これから、こ、これから……?」

 レオナルドベアも皆の顔を見渡すが、しかし、だた一人に、何やら不穏な気配を感じて視線が止まる。


(ふ、ふはははは。ついに、ついにやってきた! エマ様に風林綬活拳(ふうりんじゅかつけん)を教えていただく機会が! そして、教えて頂けるのならやはり、不出来な私めを叱り飛ばすに違いない。そのあげく、私の尻は何度も何度もエマ様に足蹴にされ……)

 この場に似つかわしくないほどのにやけた顔のチャールズ。その様子に気づき誰もが言葉を失う。


「えーと、ま、まあ、トマが今言った事でいいんじゃない? それにレオナルドならすぐに力を使いこなせるようになるだろうし。しかも、ここにいるメンバーは私が見てもかなり優秀な人材だから、アルファベットの輩ぐらいならすぐに追い越せるわ」

 不穏な空気を切るようにエマが喋る。

「は、はあ。そうなのでしょうか。しかし、その物言いだとエマさんには取るに足りない相手だと聞こえますが」

「お前、失礼だぞ」

 ティアナの質問を払拭するかのようにディンガが言う。

「失礼しました。でも、お二人の本当の実力を私たちは知らないし……」

「まあ……確かに。エマ殿には俺達はまったく歯が立たなかったが、俺たちの実力なんてたかが知れている」


「そうねぇ。私なら、楽――」

「エ! エェーマも僕もそんなに強くはないですよ。ただ、古い魔法の原理を知っているだけです」

 エマが何か喋ろうとした時、トマが遮るように話し出す。

「ですから、アルファベットとは同等に渡り合えると思いますが、古代兵器や、正体が分からない黒幕と対峙するとしたら、情報が足りない為に少し分が悪いでしょう。しかし、僕達が知ってることを皆さんにお教えして、それが理解出来れば、必ずこの国を取り戻せると思います。現状どちらにしても選択肢は少ないです。皆さんの修業と水面下の活動は言わば今出来る最善の策だと思います」

 トマは両手を広げてにこやかに笑う。

 もはや、誰にも異論はなかった。一人一人がしっかりと頷くのだった。


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