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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第七章 謎から秘密へ
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第58話 アウェイクニング

「おい、おいったら」

 何か頬に当たる冷たい感覚。

「おーい。おーい。大丈夫か―?」

 おーいの度にピシっピシっという音が鳴る。

「う、うーん」

「おーい、おいってばー。起きろよー」

「いたっ、い、痛いって、ちょっと、やめてよ。気持ちよく寝てるんだから」

「いやいやいやいや、ダメ! 駄目だって今そんな状況じゃないから。お、き、ろっってー!」

 ついにはガクガクと体を揺らされたので、アレクサンドラはもうゆっくりと目を閉じてはいられなかった。


「やあ。やっと起きた! 君ぃ緊張感なさすぎだから」

 ゆっくりと目を開けたアレクサンドラの目の前には、緑の頭髪と緑の目を持った、ベリーショートの人物。手には細長い緑色の草を持っている。

「あなたはだれ?」

「私? うーん。そうだな。私は、ヴュートリッヒ三世……正確には、アンナ・リズ・ラズベリー・ヴュートリッヒだよ。長ったらしいから、皆にはアンナって呼ばせてるけどね」

 アンナは右手の人差し指を折り曲げ、自分の唇に当ててそう言った。フワッと良い匂いが香る。熟したラズベリーのような甘い匂いだ。

「そ、そうなの……ここは?」

「ははは、君は相当にとぼけた人みたいだねえ。ここは君の中じゃないか」

「私……?」

「えーとね。目の前で繰り広げられる惨劇のその余りの出来事に、君の精神に過度なストレスが加わって、脳内の記憶が混乱したんだ。まあそのおかげで、私が出て来れたってわけなんだけど」

 アレクサンドラは意味が分からない様で、ただ黙ってアンナを見つめる。


「思い出してごらん、今何があったか」

 そう言うとアンナは、アレクサンドラの額に手を当てる。すると、浮かび上がってくる記憶。拷問、暴行、そして、エマとトマの無残な死体。

「い、いや、いやぁ!」

 アレクサンドラの呼吸は乱れ、極度の緊張から汗をかき、ガクガクと震え始める。

「おい、ちょっと待つんだ。ここは君の精神世界、大丈夫! 君なら操れるから。それに、この世界は驚くほど時間の流れが遅いけど、残念ながら時間は有限。だから落ち着いて!」

 アンナはそう言うと手からオレンジ色の光を放ち、アレクサンドラを抱擁しその光で包み込む。

「暖かい……」

 次第に落ち着きを取り戻すアレクサンドラ。

「よし、じゃあ時間ないから、単刀直入に言うよ。君に渡すものがあるんだ」

 そう言うとアンナは、虹色に光る石を出す。その石には見慣れた模様が刻まれている。

「あ、これ私の」

 アレクサンドラは、自分の左頬を触る。

「そうだよ。君にある印と同じ紋章。私たちは【十字円家紋式じゅうじえんかもんしき】と呼んでいた。古くから受け継がれる紋章で、力の源。なぜ君なのかとかは今説明してる暇はないから、とにかくこの石を君にあげるよ。これが鍵となり、君の力の門は解放される」

「力……私、立ち向かえるかな。その力があれば、皆を助けることが出来るかな。私に出来るかな……」

「迷うのは当然さ。でも君はもう行くしかない。己を乗り越えるんだ、大丈夫君にはできる。私が選んだんだからその素質は十分あるのだ!」

「そう……そうなの? でもどうすればいいの?」

 アレクサンドラは不安を覗かせながらもその意思を示す。するとアンナは口角をグッと上げ不敵な笑みを見せる。

「よし、じゃあ、行ってきな! ごめん、もう時間がない! それっ!」

 アンナはそう言うと凄い勢いで手に持った石をアレクサンドラの左目にまるで埋め込むように入れ込んだ。

 アレクサンドラはびっくりして左目を手で押さえる。

「あっ! いや、あつ、熱い、うわわわー!」

 瞬く間にアレクサンドラの左目から虹色の光が溢れ出す。

 その光は螺旋状に広がり、凄まじい勢いでありとあらゆるものを包み込み、一瞬にしてその場所は虹色で満たされた。

「大丈夫。君なら操れる。またいつか会う日まで。さようなら」

 アンナはそうつぶやいた。満ちた光で真っ白になり、アンナを飲み込んでいった。


 

「ふへへへ。こいつ、失神してやがる。しかし味気ねえな。もっとこいつの泣き叫ぶ声が聞きたかったんだが。へはははは」

 ナンバーフォーはゆらゆらとだらしない素振りで歩きながら、アレクサンドラに近づいていく。

「そうだね。まあ、連れて帰れば、またゆっくりとお楽しみの時間が味わえるわよ」

「それもそうだな」

 そう言いながらフォーがアレクサンドラに手を伸ばした瞬間だった。

 首を直角に曲げて失神しているアレクサンドラの顔だけが、突如ムクッと起き上がり、一気に目を見開くと同時に、その空間を飲み込むほど大量の虹色の光が螺旋状に溢れ出る。

「な、なんだ! これは!」

「ぎゃあああ!」

 アルファベットの二人は余りの眩しさに視覚を失い。目に刺さるような痛みを覚えて目を押えのたうち回る。

 螺旋状に放出される光はすさまじい速度でその場を一気に侵食し、そして全てを包み込み、アレクサンドラのシルエットを浮かび上がらせる。

 次第に光はアレクサンドラの中に集約され、アレクサンドラに吸収されていく。全てが吸収されそこにはアレクサンドラが立っていた。

 その体からは蒸気が立ち上っている。そして、眼を見開きゆっくりと顔を上げた。


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