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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第七章 謎から秘密へ
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第57話 スタートムービング

とぎれとぎれで申し訳ありませんが少しずつでも書いていこうと思います。

 アレクサンドラはその二人のその声と姿を見て、真っ青な顔をして固まる。

「トゥエンティファイブ。お前、まだこんな所でうろちょろしてやがったのか? 能なしのゴミくずが。その余裕はなんなんだ? あれだけ痛い目を見せてやったのに。まさかお前、そう言うのが(・・・・・)が好きな変態なのかよ? げはは!」

 まるで、放置された肥溜めのような下卑た笑い声がその洞窟に響きわたる。

「本当。馬鹿なのかしら、顔が可愛いだけの無能なゴミ人形は。今度は、生きているのが苦痛なくらいの苦しみを与えてあげるわ。殺して下さいって懇願する様なね。ひゃっはっはっは!」


 前に立ちはだかるのはナンバーフォーとファイブだった。

 アレクサンドラを拷問していた張本人である。ワンの命令は魔力を取り出す事だったが、それにかこつけて二人は行き過ぎた行為をアレクサンドラに行っていたのだ。

 二人は、魂に刻み込まれたとも言うべき天性の悪癖があった。弱いものに手を差し伸べるどころか、蹴り飛ばし、あざ笑う、それは悪党の本質とも言えるものだった。

 アレクサンドラはその声を聞き自分の膝がガクガクと震えているのを感じた。

 あの痛みが脳裏を駆け巡る。肉と骨を強引に剝がすような、全身を針で刺すような耐え難い痛み。骨がきしみ、肉が溶ける毒に侵された様な痛烈な感覚。

 アレクサンドラは絶望と苦痛に顔を歪める。

(なるほど。この二人はアリの暴行に深く関わっていたみたいね)

 そんなアレクサンドラを見てエマが片方の眉毛を上げる。


「誰だい、君たちは?」

 トマは顔色一つ変えずに聞く。

「ガキなんぞに、名乗った所で何も意味はねぇと思うが、まあ、しいてゆうなら死刑執行人の死神ってところか。げへへ。俺たちと会ってしまったが最後もう命はない。事故と思って諦めるんだな」

 ナンバーフォーは、ヘラヘラと馬鹿にしたようにそんな事を言った。

「ずっと探ってたんだよ。妙な動きがないかをね。小さな魔力でもとらえられる様に全神経を研ぎ澄ませていたら、まさか、堂々とこんな所に現れるなんて。始め見つけた時は自分を疑ったよ。来てみれば本当にいるんだから。へぁははは!」

 ナンバーファイブの、軽い笑い声が響く。

「死神か」

 エマが呟く。

「逃げて、逃げてください。エマ様。はやく……」

 アレクサンドラは、震える足でかろうじて立ち、そして絞り出すようにそう言った。

「何、言ってんのよ。私がこんな奴ら相手に逃げる訳ないじゃない!」

 エマは両手を腰に当てて胸を張る。

「我が魔法の道は茨の道。故に咲くっ! 我が足跡には綺麗な薔薇が。大慈大悲の心を持って勧善懲悪、天下無敵の大魔導士エマ・ブリスティアンとは私のぉ事だぁ!」

 堂々と言い放つのだった。

「ぎゃはははは! なんだコイツ! ナンバートゥエンティファイブよ、お前に似合いの頭のおかしな奴だな! はははは!」

 アルファベットの二人は馬鹿にする様に腹をかかえ、笑っている。

「……敵わない。きっと、エマ様でも敵わないから! に、逃げて!」

 アレクサンドラは、額に脂汗を浮かべ、目の焦点も定まらず今にも気を失いそうな程に動揺している。

 あの日々を思い出しているのだ。魔力を限界まで搾り取られ、体の激痛と朦朧とする意識の中で、あの二人に自分の体を痛めつけられた。もう何も感じなくなるまで、殴られたり蹴られたりを繰り返されたあの時の記憶を。


「いい、見ときなさい。私がやっつけてあげる――」

 エマが、アレクサンドラを見てそう言った時だった。

「ぶへっ!」

 エマがもの凄い勢いで後ろに吹っ飛んだのだ。

「――!」

 アレクサンドラは口を塞ぎ、涙を流す。


「……あんたねぇ……急に殴るんじゃ……げほっ!」

 よろよろと起き上がったエマは、おぼつかない足取りで自分のお腹を押え、口から血を吐いた。

「エ、エマ様……」

 アレクサンドラは愕然として膝をつく。

「へえ、今の一撃で死なないとはな。ただのガキじゃねえみてえだな」

 フォーとファイブは薄ら笑う。


「しかし、そっちのガキはもう虫の息みたいだね」

 ファイブが指さす先には、背後の風景が見えるほどお腹を射抜かれ、その穴から大量の血を流すトマがいた。

「ぐ、ぐはっ! 僕としたことが不覚を取った……」

 大量の血を吐き、そのまま前のめりに倒れるトマ。

「ひゃあはは! 油断が過ぎるよ坊やたち!」

「く、くそ。我が弟をよくも! 許さない!」

 エマは歯を食いしばり、痛みに歪んだ顔で睨みつける。

「しかし、なんなのよこれ、全然力が入らない。仕方ない、全力で魔法をな放つわ」

 エマは、グッと足を開き両掌を上に向ける。

「さあ、聖霊達よ。私に力を貸しなさい。この地脈は我が血脈のごとく。囁く妖精達のその力は直接私に降り注ぐ。全ての物体をその事象ごと吹き飛ばせ! 【超高速粒子砲 リディオン】」

 その両手を合わせて前に突き出すと急激に光輝いて集約され、その光が一直線にアルファベットに向かって放たれた。

 凄まじい光のエネルギーが、二人に向かって行く。しかし、それは目前にして到達し得ない。リディオンの光は、アルファベットの二人を前にして急激にに萎み、一筋の線となりファイブの懐に入って行く。


「な、何よ、それ」

 エマは、目の前の信じがたい光景に愕然として膝をつく。息を切らし、口からは血が滴りとても苦しそうだ。

「な、何? なんで? 効かない……」

 エマの落胆の声が聞こえる。

(このままでは死ぬ……皆、死ぬ……)

 アレクサンドラはその様子を見て更に追い込まれる。行き場のない悲しみが心の底からあふれ出す。


「ひゃあははは! 馬鹿なガキだねぇ。私たちがこれを持っているとも知らずに」

 ナンバーファイブは、笑いながら懐から出した物体を高々とかざす。

 その手には、黒と白色の鏡のようなものがあった。鏡と言ってもその形だけで、鏡であれば通常反射している部分までも、白と黒に染まっていた。

 白黒の鏡面に縁には装飾がされてる。

「これはねぇ【白黒鏡(しろくろきょう)】と言うのさ。あんたたちの魔力は私たちと会った時から既に吸収が始まっているんだよ!」

「いいぜ! いいぜ! その顔ぉ。もっと恐怖に歪めて見せろよ。これから更に地獄を味わうんだからな。しかし、このガキが使う魔法は見た事がないな。特殊な力の使い手なのか? まあいいや。殺してからゆっくりと調べさせてもらうぜ」


「く、くそ。まさか、こんな事が。私とした事が不覚だったわ。アリ、ごめんね。頼りない師匠で。あんただけでも逃げなさい。私の最後の力で食い止める! 魔法がだめなら体術で」

 そう言うと、エマは歯を食いしばり、拳に力を込める。

 そして、右足で大地を蹴り、爆発的な一歩を踏み出す。

 地面がえぐれ、ごう音と共に目にもとまらぬ速さでナンバーフォーに殴りかかかる。

 しかし、ファイブは顔色一つ変えずに白黒鏡を前に突き出す。

すると、エマは吸い寄せられるように白黒鏡へ向かっていき、その拳が白黒鏡に当たった時、凄まじい金属音が響きその場に崩れ落ちるのだった。

「う、うわあああ」

 エマは、その腕を押え叫ぶ。その腕の骨は粉々に砕けたのか、力なくだらっと垂れ下がるのだった。


 すると、フォーはその余裕を体現するかのようにだらだらと歩きだし、エマの前まで来てしゃがみ込む。

 そして、腕を押えて蹲るエマの顔を執拗に覗き込んで、その頬を冷たい手で撫でるのだった。

「ひーひっひっひ。言ってなかったけど、魔法だけじゃない。ありとあらゆるエネルギーはこの鏡の前では無効なのよ。ごめんね、お嬢ちゃん」

 後ろではファイブの声が響き、その楽しさを抑えきれず、頬まで裂けるかのように口角を上げたフォーのにやついた顔がエマを覗き込む。


「しかし、こいつはなんなんだ? ガキにしては凄まじい身体能力だ。でも、もうどうでもいいがな!」

 そうフォーは言い放つと、立ち上がり、足を大きく振りかぶりエマの顔を蹴る。

「ぐはっ!」

 エマは大きく後ろに飛び、無残にもアレクサンドラの隣に転がる。

「エ、エマ……エマ様、エマ様……」

 血と汚れでボロボロのエマは、もうすでに顔を動かす事すら出来ず、ヒューヒューとかろうじて息をしている。

 アレクサンドラは、まともな精神が保てず、今にも失神しそうに追い込まれている。

 額からは汗が落ち、涙と鼻水そして、口からは涎が垂れる。朦朧とし体の力をコントロールする事が出来ないようだった。


第三門陣階位魔法だいさんもんじんかいいまほうアイアンブレード(鉄の刃)】」

 その声が響き渡ると、エマとトマの上部に無数の長方形の鉄刃が浮かび上がる。輝きからその刃先は良く研がれているのが分かった。

「終わりだ、アレクサンドラ。全てを壊してやるよ。行け!」

 フォーが合図を出すと、無数の重く鋭い刃は凄まじい勢いでそのまま落下する。

 そして、鈍い音と金属音が混じった独特の音色が響き渡る。

「い、い、嫌だーー!!!!」

 アレクサンドラは目を見開き、天を仰ぎ、跪いたまま頭を抱え卒倒する。

 

 それはまるで、全ての終わりを表しているようだった。

 血と肉片が薄暗い洞窟の中に飛び散っている。

 エマとトマは、刃物によってバラバラに解体されていた。


「おいおい、トゥエンティーファイブのやつ、気絶しちまいやがったぜ。まだまだこれからだったのによ」

 フォーの氷のように冷たい声がその空間に響き渡った


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