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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第六章 リトマス連合国 妻の意地
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第42話 クリーピングシャドウ

 そこはまるで、何段にも重なったウェディングケーキのような構造になっていた。

 壁面も白く、本当にケーキが空中に浮いてるようだ。しかし、この建造物は確実に石でできている。小さな山ほどの大きさがあり、それが空中で揺れもせず、見事に浮いている。その形状から、【ビュートスター(卓上の星)】と呼ばれていた。


「あらー、こりゃ見つからないわ。こんな上空にあるんだもん。もうちょっとで宇宙まで行っちゃいそう。しかも、光の魔法で透明化されてるし」

 エマは上空に浮きながら、自分の手で(ひさし)を作り、その大きな建造物と、少し暗くなっている空を見比べる。

「じゃあとりあえず気配ゼロにしてっと」

 そう言うとエマは、懐から取り出した赤色のリボンを結ぶ。

 するとまるで周囲と同化したかのように、その姿が認識出来なくなる。

「このリボンをつけると、まるでその辺に落ちてる石ころの様に気にされなくなる。名付けて石ころリボン……なんちゃって。でもなんか、さっきまでの強い魔力が感じられなくなったわね。なんでかしら。」

 そんなことを言いながら、ふっと消えて中に入るのだった。


 実はエマが来るのと入れ違いに、アルファベットの面々は各地に飛んでいた。

 行方不明の三人を探す為だった。

 アルファベットは秘密組織ゆえ、基本的にただ組織を抜けることは出来ない。

 もし抜ける時は、すべての記憶を消去する決まりになっているのだった。また、組織を無断で抜ける事は、管理下にある組員には通常不可能であり、今までその様な実例はない。つまり、アルファベット始まって以来の大失態であった。

 それ故に、動けるものは総力をあげてその捜索に出張っている。

 主要メンバーは、ほぼいない。

 今残っているのは、世話係として、この城に住んでいる使用人がほとんどだった。


 そして今まさに、その邪悪な手はミアの城にも迫ろうとしている。


「はっ、まずいわ。この魔力! アルファベットの者の魔力!」

 ティアナは、ミディアムレアの肉が刺さったフォークを持つ手を止めてそう言った。

「なに! まさかここに向かっているのか?」

 ディンガが聞く。

「そう。もうそう遠くないわ。今からでは逃げられない」

 ティアナの手が小刻みに震えている。

「ティアナさん、落ち着いて。大丈夫。この城の地下は誰にも見つかった事がない。だからこそ、レオナルド国王を十年間も匿うことが出来たのよ。だから、大丈夫。すぐに移動しましょう」

 ミアは、震えるティアナの手に、自分の手を添えてそう言った。ゆっくりと落ち着いたミアの声に、ティアナは落ち着きを取り戻して頷いた。


「さあ、ここに残るのは私とミナとモナ。皆さんは先ほどの部屋まで戻ってください。ミナモナ、すぐにここを片付けて」

 ミアは、メリハリのある立ち回りで、黒いドレスの裾を舞い上げる。そして、的確な指示を出す。


「さあ、こっちだ」

 レオナルドベアは、食卓の椅子から飛び降り、手を上げて皆を先導する。


 ミアとミナとモナは素早い動きで全ての証拠を隠し、凛とした姿勢で正面玄関へ向かう。

玄関を入ると、そこは良く磨かれた大理石の床で出来た、吹き抜けの大広間になっており、ミア達はそこでアルファベットを出迎えるつもりのようだ。

 三人は堂々と構えその広間に並んで待のだった。


 しばらくすると、ゆっくりと玄関の大きな扉が開き、外の光が差し込み誰かが入ってきた。その光はシルエットを浮かび上がらせる。

そこに立っていたのは、黒いマントと黒と赤の仮面を身に着けた三人の人物だった。


「あら、気配がして来てみれば、この城に何か用かしら」

 ミアは、両手をお腹の辺りで重ね合わせたまま、微動だにせずに眉を顰める。

 黒いマントの三人は特に動かず、俯きがちに口を開く。

「ミア・トレイシー。我らが来たという事は、おおよそ察しがついているのではないか?」

 しかし、ミアはその姿勢を崩さない。

「さて、そんなもの見当もつかないわね。秘密の組織がわざわざ人目に付くこんな場所に現れた理由なんてね」

「貴様ももともとは組織の人間。レオナルド国王退任後、ステファンが死亡して、ここに追いやられるまではそうだったのだ。我らの姿は見慣れているだろう」

 ミアは両手を広げて悠然と構える。

「昔話をしにここに来たわけじゃないだろう。早く要件を言ったらどうだ?」


 マントの三人は微動だにせず立ち塞がり、なにやら不気味な雰囲気を感じる。

「……それはそうだな。本題に入ろう。貴様が我々の組合員を匿っていると情報があったのだが」

「組合員?」

 ミヤは、平静を装う。

(誰にも気づかれているはずはない。これは陽動だ。かまをかけている)


「おかしいね。僕が仕掛けた追跡魔法がそう言っているんだけど」

 今まで話していた真ん中の人物ではなく、今度は右側が喋る。少し高い声で、少年のような声だった。

(ま、まずい。この声きっとナンバーナインね。たしか、探知能力に長けていた。従来の追跡魔法とは別にディンガとティアナに仕掛けていたのか? 嫌、そんな暇はなかったはず……しかし、どちらにしてもここは……)

「本当に良く分からないわ」

 ミアは、あくまで知らないという態度を変えない。両者の間にしばらくの心地の悪い沈黙が続く。

「あくまで白を切るつもりか。ふっ、まあいい。ならば調べさせてもらうぞ」

 しかし、アルファベットの三人は引かなかった。その足を一歩踏み出す。

 途端にその場の空気が凍り付き、ミヤは足を開き構える。

「なんとも強引だね。こんなことが許されるとでも思っているのか」

 ミナとモナはミアの前に出る。


「ふふふ……残念だったな、ミア・トレイシー。貴様も今日までなのだ。上からの指令が出ているんだよ。貴様の暗殺のな。貴様の夫、ステファンがレオナルドの側近で親友だったことは誰もが知る事実。ワン様もステファンには恩義を感じていたのだろう。当時は、ステファンの死により、貴様の命は取らずにこの場所で我々の管理下に置かれる事で話はまとまったが、いつまでも貴様のような危険分子を生かしておくと思っていたのか?」


「くそっ。この外道め。しかし、私もそう易々とやられはしない!」

「くっくっくっくくぅ!」

 身構えるミアとミナとモナ。しかし、アルファベットの三人はずんずんと歩みを進める、不気味な笑い声が玄関ホールに響き渡るのだった。

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