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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第五章 リトマス連合国 囚われの娘
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第38話 ブラッドリレーションシップ

「さあ、アレクサンドラ戻ってきなさい」

 エマは光る掌をアレクサンドラにかざす。すると見る見るうちに首の傷が修復される。


(とりあえずこの部屋には魔法防壁を張っておくか。後僕たちにも。よっと)

 トマが手をかざし横に移動させると見物人の前に青い光の壁が現れた。


 ディンガとティアナは目を離さず、エマとアレクサンドラがいる、その光景を見つめている。

 

「始まりは酷く甘い季節。その果実を選んだその日から生命は始まる。黒く苦いチョコレートと混ざり合い調和するように、生きとし生ける生命は一つの出発点から無限に広がり、そして一点に集約される。生まれて死にゆくその繰り返しの中で、いつか掴むであろう本物の幸せに向かって集約する。さあ、あなたの人生はここからが始まりよ。その宝石のようなきれいな瞳を再度開き、しっかりと見つめなさい。もう二度と後戻りはさせない。私と一緒に歩むんだから!」

 エマがそこまで言い終わると、両手がさらに光を帯びる。


 そして、その手を三回打ち合わせると、澄んだ音が響き渡った。その部屋全体がまるで聖域の様な神聖な空気に包まれる。

「我が血と大地の地脈は一体なり、故にこの心はこの星と一体なり。この血は知となり、やがて地になる――」

 光る掌から生まれた輝きは、どんどんとエマの体を包み始め、そのうち黒く変色していく。

「さあ、今度はあなたが答える番よ。聞かせて、私にあなたの声を!」

 アレクサンドラの体が宙に浮き、黒い輝きはアレクサンドラを取り囲み始める。

 その中でアレクサンドラの体は全てが再生されていく。肉体も精神も、もちろんその記憶さえ、その全てが何もなかった時の状態に復元される。

「帰って来たわね。じゃあ、最後の仕上げよ。私はあなたを愛する者。この世の何人にも引き離すことの出来ない、最強の口づけをあなたにあげるわ」

 エマが打ち付けていた手のひらを少し開き、指だけつけて三角形のような形を作る。それに合わせて、黒い輝きはまとまっていき、アレクサンドラの心臓の辺りに集約していく。

「はっ!」

 エマの掛け声とともに、その黒い光はアレクサンドラの心臓の辺りに入り込んで行き、その胸には小さくて丸みを帯びた形をした唇のマークが刻まれた。

 それと同時に、アレクサンドラの胸に鼓動が戻り、息を吸う。


 ゆっくりとアレクサンドラの体は降りていき、ふわりとベッドに横たわる。

顔には血色が戻り、それは今まで死んでいたとも思えないほど健康的な寝顔だった。


「終わったのか……?」

 ディンガがアレクサンドラを見つめながらつぶやく。

「そうみたい……彼女の魔力反応が戻ったわ」

 ティアナも同じように目線を一切動かさずそう答えた。


「アレクサンドラはもう大丈夫。でもしばらく目は覚まさないと思うわ。夢の世界で気持ちを整理する必要があるからね」

 エマは、アレクサンドラの額を触りながら言う。

 すると、トマが、

「それはそうと、皆さん紅茶でもどうです?」

 満面の笑みで、自分のカップを少し上に上げて、首を少し傾けてそう言った。

ディンガとティアナは唖然としたまま顔を見合っていたが、

「はい、頂こうと思います」

 トマの方を向きなおし、ティアナがそう言うと、ディンガも頷くのだった。



 一方その頃、アレクサンドラが自害したリストン郊外の森の中。

「こりゃあ、何の形跡も残ってねーぜ」

 そこには真っ赤な仮面をつけた人影が二つ。

「そうだな。証拠の隠ぺいはトゥエルブの仕事か?」

「いや、トゥエルブでもここまで形跡を絶つことは無理だろう。なんらかの隠し玉があるかもしれねぇ。とにかく、ワンに知らせないとな。しかし、ここまで完全に消息を絶つとは、別次元に飛んだって言われても納得するぜ」


「ナンバーフォーよ。笑い話ではないぞ。組織の人員が三名も忽然と消息を絶ったのだ。これはアルファベット始まって以来の大失態」

「しかしよ。こんな神隠しみたいな事が起こるかね。まあ、あのナンバーシックスを除いて二人は大して強くもなかったからな。別にどこに逃げようが構わないんじゃねーか? 奴らはどうも胡散臭かったから処分も決まっていたんだろ? しかもナンバーシックスもどうせあんたの足元にも及ばない。そうだろ、ナンバースリーさんよ」

「まあ、どちらにしてもナンバーワン様の足元にも及ばない人員ではあるがな。処分が決まっていたから問題なのだ。まあいい、とにかくいったん本部に戻るぞ」

 そういうと二人は魔法陣を開き、基地に戻るのだった。


 

 ダンダの酒場の一室でエマ達はテーブルを囲んでいる。

そのテーブルには、湯気が立つティーカップが五つ並び、椅子は二脚しかなかったため、ベッドと椅子に各自それぞれ腰かけている。


「そう言う事ですか。彼女はアルファベット内で体罰を受けていた様子だったと」

 トマがそう言いながら、ティーカップに手を伸ばす。

「はい。中で何が行われていたかは私達には一切分かりませんでしたが、かなりの苦痛だったようで、叫び声がずっと聞こえていました」

 ティアナが伏し目がちに言う。

「それはきっとアレクサンドラの血のせいね」

 エマが口を開く。するとティアナが、首を傾げながら、

「ち……ですか?」

「そう。血よ、血液。アリは古代種の血を魔力遺伝したようね。先祖にいるのか、またまた神の悪戯か」

「そ、そうなんですか? しかし、それがどういった理由に……」

「【マジッククリスタル(魔力結晶)】って聞いたことないかしら?」

「い、いえ、私は聞いた事がありません」

 ティアナは良く分からないといった様子でディンガを見る。

「いや、俺もない。それは何かに使う道具か?」

 するとトマが口を開く。

「僕たちの時代でマジッククリスタルは、主に魔法兵器の核として使用していましたね。エネルギー源とでも言いましょうか。熱機関とか、そうエンジンって感じですかね」

「そうそう。アレクサンドラの魔力は異質で純度が高いから、良いクリスタルを精製出来たんでしょうね。方法は単純に血を媒介して存在する魔力を搾取し、魔力抽出すればいい。だんだんと血が足りなくなるから、治療魔法を行使しながら長時間にわたり取られ続けたのでしょうね。まあ、それ以外にもおかしな傷跡があったから、それとは別にいたずらに暴行を受けていた可能性もあるわ」


 誰もが無言になる。

「あっ、でも安心して、殴られたり蹴られたりの痕跡だけで、他に変な事はされてなかったみたいだから」

 エマが言うと、ディンガとティアナは少しホッとする。


「でも、そうなると、ますますリトマス連合国が考えている事の想像がつくね。もしかしたらもうかなりの武力を整えているかもしれない」

 トマがグッドサインを顎に当てて話す。

「でもとりあえず、あんたたちも今日の会議に参加決定ね!」

 

「は、はあ」

 ティアナは気のない返事をする。二人はよく意味が分からないが、今の所行き場もないので、ついて行くことにする。

「ふわふわ~」

 ルナはティアナの膝の上でご満悦だった。純粋なルナのにこやかな顔を見てティアナは少し落ち着きを取り戻すのだった。

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