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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第五章 リトマス連合国 囚われの娘
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第37話 アプレンティス

「何がどうなってるの?」

 ゆっくりと流れていた時間が戻った時、ティアナは目を疑う。

 ディンガのこの技は、次元魔法で時の流れを操る剣術。ティアナが見る限り、今までこの技を発動した後、立っていた者など一人もいなかった。

 ティアナは自分の目を疑う。相手が倒れているどころか、それ以上に、ディンガは剣を掴まれ、一切の身動きが取れないようだ。

「く、くそ!」

 見かねたティアナはディンガを助けに行く。

 ディンガが敵わないのなら万が一にもティアナに勝ち目はない。

 しかし、無謀なその行動は自分の命に代えてもディンガを守りたいという気持ちからだった。


「えーと、あんたはちょっと止まってなさい」

 ディンガの剣を受け止めた手とは逆の手をティアナにかざすと、ティアナは跳躍の途中だったため、空中で静止する。

「ぐっ、こ、こんなことが」

 ティアナは体が固まったように一切身動きが取れなくなった。


「ちょっとあんたたち話を聞きなさいよ。アレクサンドラを追ってきたってことは彼女が心配だったんでしょ?」


「お、お主に何がわかる!」

 ディンガは剣を持つ手に更に力を込める。その魔力はさらに上昇し、ディンガのたてがみが怒りと共に逆立つ。

 しかし、エマは表情を変えない。

「そうね。まあ、彼女とは出会って数日だから、深い事情はわからない。でも彼女を助けたいのなら、少し落ち着いて話を聞きなさい」

「アレクサンドラもう絶命しているではないか! もう、もう遅い!」

 ディンガの大きく鋭い目には涙がにじむ。


(よっぽど彼女に肩入れしてたのね)

 エマはどうしようか考えたがいい案が浮かばない、

(トマならすぐに考え付きそうだけど。しょうがない、正面から向かい合うしかないか)

「あなたたちの気持ちは良く分かった。とりあえず私は敵じゃないから、落ち着きなさい。できれば魔法で従わせたくはないから。離すわよ」

 そう言うとエマは、ディンガの剣からゆっくりと手を放す。それと同時にティアナの体は自由になった。

 ティアナはその瞬間後ろに飛びのく。

「き、危険よ、ディンガ、早く離れて!」

 ティアナは叫ぶ。

「いや、ティアナ。大丈夫な気がする。少し話を聞こう。しかも、もう何をしても遅い。彼女とは圧倒的な力の差があるようだ。俺たちを殺す気ならいつでも殺せただろう」

 ディンガはそう言うと、力なく大地に膝をつき、涙を流す。


「ふう。まあ何とか落ち着いたわね」

「えーとあんたたち名前は? 私はエマ・ブリスティアンよ」

 エマは右手を開いて二人に差し出すような恰好ととる。

「俺の名前は、ディンガ・アーチャー。後ろのもう一人はティアナ・コットンだ」

 ディンガはそう言いながら、右膝を前に出しゆっくりとと立ち上がる。

「そう……実は、私はレオナルドを助けてくれってこの子に言われてたのよ」

 エマは、目線だけアレクサンドラに向ける。

「レオナルドというと?」

「あら、ごめんなさい。旧国王のレオナルドの事だけど、知らない? それと、アレクサンドラが二重スパイだってことは知ってた?」


「に、二重スパイだと? な、なんと。まさかそうだったのか。確かにそう言われれば……」

「そうね。確かに、彼女はアルファベットに似合っていなかった」

 ディンガもティアナも少しは思い当たる節があるようだ。

「しかし、あのお方は、レオナルド国王はもう死んだはずだ」

 ディンガはレオナルド国王を知っているような口ぶりだ。

「まあ、いいわ。今ここで長話してる場合じゃない。誰か来たら面倒だし。とりあえず一緒に来てもらうわよ」


 ディンガとティアナは顔を見合わせる。

「しかし、俺たちはもう戻らないと……」

「ああ、あんたたちアルファベットでしょ? 本部に逐一管理されてるんだよね。その魔法は私が消しといたから大丈夫。でも早くここから移動しないと。本部が怪しんだら三人の消息が立ったこの場所を探すはず。ほら、私に摑まって」

 エマはそういうと、アレクサンドラを抱き上げた。

二人は、状況が理解出来ないが、この場にこのまま残る事ももう出来そうにないのでついて行くことにした。

 ディンガとティアナはエマの肩に手を置く。

「さて、じゃあレッツラゴー!」

 エマが満面の笑みでそう言うと、全員が一瞬にしてふっと消えるのだった。



「トマ。ただいま~」

 目の前には血だらけのアレクサンドラを抱えた満面の笑みを浮かべるエマと、初めて見る、ライオンの種族と、鳥の種族が立っている。

 トマは本を持った右手を置かずに上目使いで視線だけ向ける。

「まったく、君は。どんな状況なんだよ……そんな状態で帰ってくるかな」

「フワフワしてるー」

 ルナは、黒く艶やかなティアナの羽毛を触り、その頬をすりすりとくっつける。

 当のティアナは目まぐるしい展開の中で、情報量が多く、状況が全く呑み込めていない。ディンガ共々、大変困惑しているようだ。


 ティアナがディンガに耳打ちする。

「一体あの森から一瞬でどうやってここへ来たの? この者たちは一体何者なのだろう……それに私には、魔法をマジックゲートなしで操作してるように見えるのだけど。夢でも見ているのかしら」

 すると、ディンガはしっかりと前を見据えたまま、小声で答える。

「どうやって移動したのかは分からん。しかし、とても信じ難いが、心で考えるだけで魔法を発動させている。組織で組み込まれた追跡の魔法を消したと言うのも嘘ではないのかもしれん。ふっ、ティアナよ、この世は広かったということだ」

 ディンガは少し微笑んでいるが、しかし、その手は震えていた。


「よいしょっと。ルナはあんまり見ちゃだめよ」

 エマはアレクサンドラをベッドに寝かせる。

「それはそうと、もう手遅れだったの?」

 トマが聞く。

「そうなのよ。到着した時にはもうこの状態だったわ。多分自殺ね」

 全員でアレクサンドラを見下ろす。


「じ、自殺……」

ディンガは堪えきれず涙が溢れる。すると、ティアナが、

「そ……その! 私たちは自らの生い立ちもあり、アレクサンドラの事を年齢的にも自分の子供のように考えていまして、先ほどの無礼な行為のお詫びもまだで、大変差し出がましいですが、なんとか安らかに葬ってあげたいのですが」

 大きな瞳に涙を浮かべそう訴える。


「何言ってんのよ。勝手に殺さないでよ。アレクサンドラには私の正式な弟子になってもらうわ」

 エマは、アレクサンドラの頭を撫でてそう微笑む。


 しかし、ティアナは唖然として、

「えっ、でももう完全に死んでいるのでは? 絶命して時間も経過しておりますし、血液がほとんど流れ出ています。もうすでに治療魔法は効きません。残念ですが……」


「復元魔法の概念ってないのかな? まあ、今の世の常識は良く分かんない。でも私が弟子にするったら弟子にするのよ」

 ティアナはさらに呆気にとられ、もはや言葉は出ない。


(今の世の中で蘇生する事自体、かなり困難な事で間違いないな。もしかしたら、生き返らせる事は出来ないのかも)

 トマはティアナの様子から推測する。そして見かねてトマが口を挟む。

「えーと、初めまして。僕はトマと言います。エマの双子の弟です。彼女は口下手ですので、これ以上の口述はここでは無駄です。まあ、任せときましょう。危ないので皆さん部屋の隅に移動していただけますか? ささっ」

 トマは、右手で移動を促す素振りを取りながらそう言うと、ルナの手を引く。

「エマ、くれぐれも慎重にね」

 トマが釘を刺す。

「わっかってるって~、もう~」

 体をくねくねさせるエマ。

(そうだった、こいつには何を言っても無駄だ)

 トマはため息をつきルナを肩車するのだった。


 エマとアレクサンドラを残し、そのほか全員は部屋の隅に移動した。

「さって、やるっか! ひっさしぶりに~」

 弾んだリズムでエマがそう言うと、構えた両手が急激に光始めた。

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