第28話 ラビングメタル
「うわー! 凄いわね」
到着した【リトマス連合国】の首都【リストン】にある、リストン駅は新しい建物で、至る所に発達した魔法科学が見受けれた。
鏡の様にピカピカの建物は、天に届きそうな位高いものばかりで、行き交う人々は小さい円盤に乗り、上下左右に飛びながら移動している。
「リトマス連合国はその突出した魔法科学が有名であります。町のほとんどは金属で作られ、それらは各々自立し成長します。つまり命を持った金属なのです。その名を【ラビングメタル】といい、このリストン駅は、世界で初めてラビングメタルを使い作られた駅なのです」
「へぇー。見たところ何の変哲もない金属のようだけど、そうなんだ」
エマは楽しそうに、きょろきょろと辺りを見渡しながら歩く。それを見てルナも同じように、きょろきょろと辺りを見る。
「ルナ。よそ見しながらだと危ないよ」
駅は様々な人種が入り混じり、大変混雑していた。トマはそう言うと、ルナを肩車するのだった。
「ほうほう」
ルナは少し高くなった視界にとても満足そうに辺りを見ていた。
「そういえば、本日の宿泊先はお決まりなのですか?」
「はい、ダンダの酒場に泊まれるように手配しています」
トマが答える。
「なんと、ダンダの酒場ですか。私の知り合いもその近くに住んでいます。それは好都合ですね。私は知り合いに泊めてもらおうと思います。では、まずダンダの酒場に寄ってから、行動することにしましょう」
ピタの提案に三人は頷き、真っ先に宿泊場所に向かう事になった。
「なんだか、この辺りは駅周辺と違って、ボロボロの建物ばかりね」
エマが、歩道の真ん中に山積みになっている、鉄くずを軽く跳ねて飛び越えながら言う。
「はい。駅の北側はこのような状況です。南側は開発が進んでいて、とても快適なのですが、北側はほとんど手付かずで、放置された状態です。その実情は私もよく知りませんが」
トマは思わずグッドサインを顎に当てる。
(確かに、駅の発展状況から考えるとこの光景は異常だな。それに北側には駅からスムーズに出る事が出来なかった。迷路のような構造で、順路を知らない者はまずたどり着くことは出来ないだろうし、出口には検問もあった。観光地も南側に集中している。つまり、よその国から来た人達は南側を知る事はない訳だ。何か理由があると考える方が自然だな)
トマが色々と考察していると、
「ほら、ありましたよ。あの看板」
ピタの指さす方を見ると、ダンダの酒場と書かれた、錆が所々に浮いた鉄製の看板が風で少し揺れている。
「まあ、想像はしてたけど、ずいぶんボロボロの建物ね」
エマがそう言いながら店のドアを開けると、手に伝わる古めかしい感触と共にその扉は開いた。
しかし、中は薄暗い。人の気配もなく、まるで空き家のようだ。
「今日……休み?」
エマは、お店とは思えない重苦しい雰囲気に、思わず身をかがめながら入る。
パンパカパーン!
突然鳴り響くファンファーレ。
「おっめでとうございまーす! あなたは一万人目のお客様です!」
「へっ?」
その静止した空気を切り裂く派手な音に、エマはびくっとなる。
恐る恐る見ると、二十センチ位の青い服を着た妖精が、満面の笑みで空中に浮いている。
「今の何?」
エマがその妖精に聞くが、妖精は先程までの笑みが消え、無表情で浮いたままで、返事をする気配がまるでない。
「何これ?」
エマが妖精を人差し指で突っ突く。妖精は無言で浮いたまま左右に揺れる。
やわらかい皮膚ではあるが、その下からはコツコツと高い音がする。
「これ、ロボットかな? 壊れてる?」
エマが突きながら首を傾げる。
「これは【ラビングメタル】製ではないようですね。」
ピタが後ろから話しかける。
「誰もいないのかな」
トマが、奥の方を見ながらそう言うと、急にその先から声が聞こえてくる。
「誰だ、こんな店に来る頭のいかれた野郎は」
低く野太い声が響く。
店の奥にある、真っ暗で奥の見えない通路の鴨居部分に、大きな手がかかる。
そこから顔を出したのは二メートル以上もあろうかという大男だった。頭髪もひげも伸ばし放題でぼさぼさであり、肉眼で見えるのはその鋭く青い瞳だけだった。
「……グスタフ国王と良い勝負ね」
エマが小声で呟く。
「なんだおめえら。ここはガキの来る所じゃねえぜ」
その男は今にも天井に着きそうな、隆起した筋肉の体をを少しかがめながら、そう言った。
「えっと、これを言付かっておりまして」
トマが、アレクサンドラからもらった透明なプレートを見せる。
「あぁ、なんだこりゃ」
大男がそれを受け取り、まじまじと見ていると何か表示され、その明かりが男の顔を照らす。
大男はそれをじっくりと読むと、
「そうか、事情は大体わかった。宿は提供してやる。俺はここをやってるダンダってもんだ。泊るのはおめえら四人か?」
ダンダが聞くと、
「あっ、いえ、私は知人に会いに行きますので、大丈夫です」
ピタは慌てるように答えた。
「そうか。じゃあついてこい。部屋まで案内してやる」
「ねえ、これって何なの?」
エマが妖精を指さして聞く。
「ああ、それか。悪かったなうるさかっただろう。それは、この街の廃棄施設から拾ってきたんだ。なんだか可哀そうになっちまってな。ほら、こっちだ早くしろ」
「では私は一度知人の所に向かいますので、またあとで合流しましょう」
「わかったわ」
ピタが言うと、立ち止まってエマが答える。
すると、ダンダの鋭い眼光が暗闇に光る。
「どうやら、早くしろとの事らしいわ。じゃあ、落ち着いたら呼びに来てくれる?」
「は、はい。分かりました。しばらくしたらまた来ますので」
こうして、エマ達は言われるがままにダンダについて行き、ピタはダンダの威圧感にビクビクしながら、酒場から出ていくのだった。




