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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第四章 リトマス連合国 囚われの王様
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第26話 メルティングポッド

「たいっへん、誠にありがとうございます! このご恩はどうお返ししたらよいか。しかし、本当にありがとうございます」

 机に頭をこすりつけるように深々と頭を下げて、そのイカのような頭部を持つ人物は話す。


「いえいえ、別に大したことはありませんよ。それより、一体どうなさったんですか?」

 トマはそう言うと水を一口飲んだ。


「はい……ここ、二日ばかりほとんど飲まず食わずだったのです。どこに行っても食糧不足……限界を迎えておりました。極限状態で列車に乗り、なんとか耐えて居りましたが、ようやく出てきた目の前の命の糧、それを見るなり私の体調は飛行に失敗したディングバードの様に一気に急降下、盛大ににイカ墨を噴射してしまったという訳です」


「という訳です……じゃないわよ。結局、訳分かんないんだけど」

 ピタは、まだ混乱しているのか、一生懸命説明するが、その説明は全く頭に入ってこない。

 

「えーと、つまり、話を要約すると、空腹が過ぎて吐き気を催し、イカ墨を大量に吐いたと言う事かな?」

 トマが首を傾げながら呟く。

「あなたたち種族は気分が悪いとイカ墨を吐くのね。覚えとくわ」


 落ち着いて詳しく聞くと、旅をしていたが途中で食料が尽きてしまい、ようやっと最寄りの町についたはいいが、食糧難で何も買えず、そこへたまたま列車になら食事があるという話を聞いて、慌てて乗車したとのことだった。


 そして、念願の食事を頼んだはいいが、目の前に出されたその食事が引き金になりピークを迎えたらしい。

 今はトマが治癒魔法をかけたので、体調はかろうじて無事であった。

 ちなみに大量のイカ墨も、トマが魔法を使って一瞬で綺麗に掃除した。


「本当にありがとうございます。申し遅れましたが私は、ピタ・クリスティと申します。しがない薬売りでございます。それより、これ……」

 ピタは、目の前にあるサンドウィッチに目を落とす。

「ああ、すいません、気が付かずに、どうぞ気にせず食べて下さい」

「あ、ありがとうごばいばず……」

トマが手をを差し出し、促すと、ピタはお礼を言いながらもうかぶりついていた。

「ふふふ、凄いね」

 ルナが笑っている。


「よっぽどお腹が減ってるのね。そんなことよりとんだ大恥よ」

 エマが腕を組んでそっぽを向く。


「いやいや、なかなか見事な捨て石っぷりだったよ。しかし、あんなに麻酔を打たれては後遺症が……昏睡状態になる危険性だって……」

「んっ? トマは一体何のこと言っての?」

「ああ、ごめん、ごめん。ていうか、それは君が悪いんだよ。まだ分からないのに張り切って出ていくんだから。そもそも黒いんだから、血じゃないよね」

「なによ。トマが列車殺人って言ったんじゃない。しかも、イカの人の血の色なんて知らないわよ」

「僕はもしかしたらって言ったんだよ。エマは、直情的にすぐ行動するから」

 トマが横目で見ると、

「それは私の、長、所、よっ!」

 エマは、腕を組み強調するように区切って主張してからそっぽを向く。

 どうやら大変ご立腹のようだ。


「こうなっては仕方ないな……」

 トマはいつものことなのでほったらかす。

「あの……すいません。私のせいみたいで」

 ピタはその光景を見て、申し訳なさそうに伏し目がちに謝る。


「いえいえ。気にしないでください。どうせすぐケロッとしますから。それより、少しお尋ねしたいことがあるのですが……」


 トマは、小さい島国から来た修行の身ということで、この世界に疎い事にした。


 更にトマは、思考を巡らせる。

(実際五億年も寝ていたのだがら、疎い事に偽りはないが、通常五億年も寝ることは出来ないだろうし、この世界に来て関わる人々は貴重な情報源だ)

 しかも、ピタは旅をしている薬売りだ。色々な場所に内通していてもおかしくない。折角の機械を利用し、色々聞いてみる事にするのだった。


「私の人種は、【スクイーディ】といいます。先祖はイカとか言う軟体動物らしいです」

 ピタは、ふさふさのまつげがついている大きな澄んだ瞳で、トマをまっすぐ見ながらそう言った。


 鼻はあまり目立たないがほとんどが人間と似た顔の配置である。

 少し違うのはかわいい丸い目が少し離れているのと、肌の色が透き通るような白、そして、頭の頂部に帽子のようにひれがついている。

ピタが話したり、何かに反応する度にそのひれが、ふわふわと揺れるのだった。


「皆さんが今まで他人種に遭遇しなかったのは、東の地方から来たからでしょう。この大陸はとても大きいので東西南北で細かく区切られているのですが、東の地方の端の方にはほとんど従来の【ヒト】、つまりヒューマンしかいません。やはり、他人種間の共同生活は難しく、お互いに性質も違うので、ほとんどの場合同じ場所には居ないと思います。しかし、これは特にお互い毛嫌いしているわけではなく、ただ単純にメリットが少ない為です」


 ピタは一呼吸置き続ける。

「ですので、当然、他人種が混在している街も存在します。例えば、ヒトと私どもスクイーディが結婚するとなると、そういった混在した街に移住した方が、効率が良い訳です。食事などの調達や色々な設備品を揃えるのも楽ですからね。つまり、お互いの性質を考慮し、他人種として住み分けをしているという訳です」

 

「そうですか。確かに、頭部から考えると生体構造も違うようですし、明らかに好みの食料も違うでしょうね」

 トマが話す。


「そうですね。私どもは、視力がとても良いです。ですから、ヒトの暮らしにあるような過剰な光や、色彩にとても弱く、一緒に生活するとなるとサングラスや防御するための魔法が必須になります。また、ヒトの食べ物を食べる事も出来ますが、ほとんどは素材そのものを好みますし、やはり海にいる生物が一番の食材です。たまに無性に海に飛び込みたくなりますしね」

 ピタは笑顔で話す。

「また歯の形状も違いますから、もし虫歯になろうものなら、歯医者を探す所から始めないといけません。その点、混在した街でなら簡単に見つけることができます。しかし、たくましくヒトの世界で生きてる者もいます。私の知り合いは新鮮なイカスミパスタが売りのお店をやっています。注文を受けると調理しながら、直接口から墨を吐くわけです」


「……訳です、じゃないわよ。直接口から吐くのはちょっとなんか意味合いが違うような」

 エマがたまらず口をはさむ。


「それが、そのパフォーマンスが受けて今では大陸中にお店を出すほどの人気店です」

 エマはそれ以上突っ込んで聞くのをやめた。

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