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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第四章 リトマス連合国 囚われの王様
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第22話 マジックトレイン

「なんだか不安ね~」

 白いペンキで塗られた木製の長椅子に座り、足をぶらぶらさせながらエマが言う。

 その隣ではルナが、駅の構内にある売店で買った白と黒の焼き菓子を美味しそうに食べてた。

「アレクサンドラの事?」

 トマが聞くとエマは答える。

「なんだかね~。なんか頼りないし、弱弱しいし。内気だし、自信なさげだし」

 エマの顔を少し見つめてからトマが聞く。

「他にも気になることがあるんだろ?」

「そうね……なんか不思議な感覚なのよね。彼女」

 エマは足を止めまじめな顔になる。

「そうだね、僕もそれは感じたよ。まあ、今の段階ではまだなんともいえないけどね」

 そう言いながらトマは、構内の天井付近にぶら下がっている時計に目を移す。

「あっ、そろそろ列車が来るみたいだよ」


 エマとトマはザビの町にある、魔法鉄道(まほうてつどう)の駅に来ていた。

ザビ駅には沢山の人々がいて、忙しそうに早足で交じり合っている。

 相変わらず人種のるつぼ(・・・)といった感じで、従来の人間以外にも、きちんとした着物を着て二足歩行をしている犬や猫、齧歯類のような人種がちらほら見受けられた。

 その光景を見ながらエマがつぶやく。

「今までなんで人間以外の人種に遭遇しなかったのかしら?」

「そうだね。例えば他人種間での交流があまり進んでいないのか、もしくは、ここは駅だから良く分かるけど、単純に人間以外の人種の数が少ないのか」

 トマはグッドサインのように親指だけを立て、その親指を顎の付近に当てる。トマは、この所多くの情報を得る機会があった為、思考を整理する。

 この格好は考えている時のトマの癖だ。


「それにしても、そんなにおいしいの……?」

 そんな中、黙々とお菓子を食べるルナを、エマが横目に見る。

 三人はホームにある白いベンチに並んで座り、発車時刻まで待っている。

 ルナが隠れていた謎の車は小さくしてポケットに入れた。これはトマの指示で、よく分からない技術の車は流石に目立ち過ぎるとの考えからだった。


 魔法鉄道は魔鉄の愛称で親しまれている乗り物で、魔力で走る列車のことである。

 

 現在魔鉄は世界中を網羅している。

 それはかつて、各国がこぞって開発を進めたからである。開発競争は世界中で起こり、第三次魔法科学革命を引き起こした。

 その列車は【マジックトレイン(魔法の列車)】と呼ばれ、各国は技術力の(すい)を集め最速の列車を作り出すことを競い合った。なぜなら、その技術力こそがその国の魔法科学力を表し、同時にそれが軍事力となるからだった。

 しかしそれも過去の話。現時点ではマジックトレインの開発に各国が割く時間は、どんどん少なくなっている。それは一つの時代の終わりを表していた。つまり新たな技術が開発されたのだった。

 

 ザビ駅は木造の建物で、天井は高く吹き抜けており、至る所に(はり)が見える。

それらが、様々な角度を形成し、天窓から降り注ぐ太陽を受けておもしろい影を落とす。

その構造により、古い建物だが、モダンな印象を漂わせていた。


「あー、ここだ、ここ。五番線」

 トマが手に持った透明な板と、上部にある五番線と書いてある金属製の古びた表示板を見比べながらそう言った。

 後ろから、エマがルナの手を引いてくる。

 アレクサンドラから受け取った透明な板は、魔力を通すと起動する仕組みになっており、そこには情報が記録できるようだった。

(魔法回路機器とでも言うのかな、魔力モバイル端末みたいな)

 トマは透明な板を見ながら思う。

 そもそも、トマ達の時代にはまだ科学文明の方が発達していた。その中で、魔法を使う者が少しずつ現れ始めていた状態だった。だから、魔法と科学が融合する事などはまだまだ想像もつかない事だったのだ。


(まあ、今の状態が魔法と科学が融合したとはとても言い難いけど。何か制限がある気がするし、無駄が多い)

 トマはこの世界の魔法についてずっと違和感を覚えている。トマは思わずグッドサインを作り親指を顎付近に当てる

「ちょっと、トマ。もう列車きちゃったわよ」

「トマ(にい)ボーとしてる」

 エマとルナが何やら考え事をしているトマを現実に連れ戻す。

「あ、ごめん。虚を捉えてた。おー、これがマジックトレインかー」

トマはどこか大げさに動いた。エマは知っている。トマがこんな時は何か心に引っかかりがある時だと。

「虚をとらえるってなんなのよ」

「ほら、虚を突かれるって言うじゃん。僕は自分から無防備になったんだから虚を捉えたんだよ」

「わけわかんない」

 

 そのマジックトレインは、黒く塗装されていて、鉄板をつなぎ合わせたような無骨なデザインだった。長く使われているのか、所々塗装が剥がれ、下地の金属部分が見えている。

 大きなボルトやリベットも沢山使われているが、それを隠す加工などは一切されていない、それはまるで試作品のような印象を受けるが、だからこそこれで完成なのかもしれないと思わせる程、その場に独特な一体感を与える。

  

 三人はまじまじと見渡しながら、中に入っていく。

「ホエー」

 ルナはよく分からない擬音を口走りながら、驚いて感心しているようだ。

 室内に入ってみると、とても座り心地のよさそうな二人掛けの椅子が二列づつ並んでいた。

 緑色のベルベットの表張りが施され、大きなボタンのような留め具がかわいらしい。


「うっわー、すっごーい。ふっかふか」

 エマは椅子に座り少し跳ねながら言う。


「もう、はしたないな~。確かにこの椅子は良い座り心地だけどね。書斎に欲しいな」

 その包み込む様な、それでいて適度な弾力の椅子が、トマも気に入ったようだ。目を閉じて想像を膨らませている。


「エマ(ねえ)。ふかふかで凄いね! みんなで列車楽しい!」

 ルナもとても楽しそうにはしゃぎ、エマと同じように座って少し跳ねるのだった。

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