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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第三章 リトマス連合国 砂漠の町
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第21話 シークレットハート

「しかし、アレクサンドラさん。なぜ、今その提案をするのですか?」

 トマが聞くと、アレクサンドラは歯を食いしばりゆっくりと口を開く。

「実は、リトマス連合国は世界征服を目論んでいます。そうなると、間違いなく多くの人々が死に、そして制圧されます。それだけは、何としても阻止しないといけない。また、旧国王は病が進行し、もはや危機的状況です。旧国王様はあの国になくてはならないお方です。今、あのお方を失えば我が国は……」

 アレクサンドラの顔が曇り、沈んでいく。

 すると、エマが口を開く。

「うん、まあいいわ。私はあんたが嘘をついているようには見えないし、なにより【マハートマー(偉大なる魂)】が綺麗ね。乗りましょう、その話!」


「えっ、ま、まはーとま? 一体それは……? き、協力していただけるということでしょうか?」

 思いがけない軽い返事だったので、アレクサンドラは少し動揺する。


「ああ、彼女はがさつで、ぶっきらぼうで、傲慢で、高飛車だけど間違った判断はしません。あれ? するかな? まあでも、僕もあなたの事が気に入りました。行きましょう、リトマス連合国へ」

「なんでよ、かわいいし、やさしいし、頼りがいがあるでしょ! 私のモットーは、大慈大悲で勧善懲悪よ!」

 エマは反論があるようだが、トマは気にしない。


 トマはアレクサンドラに握手を求める。アレクサンドラは張り詰めた精神が一気に溶け、体に力が入らない。

 しかし、トマはアレクサンドラの手を握り、お構いなしにブンブンと振る。

「あ、あ、あ、ありがとうございます」

 放心状態のアレクサンドラは、上下する握手で、声がぶれながらもお礼を言った

「オールオッケーよ! きっとあなたとは今ここで会うことが決まっていたのよ。五億年後のこの星の上でね」

 エマは、最高の笑顔でそう言った。

「五、五億年……」

 アレクサンドラは、たびたび出て来る理解不能なエマの言葉に困惑する。

 こうして、エマ達は産業都市リトマス連合国を目指すことになったのだった。


「あっ、いや。こうしてはいられません。私は状況を本部へ伝えないといけません。エマ様とトマ様大変申し訳ないのですが、私の指示に従っていただけますか?」

 はっとしたアレクサンドラは慌てて、二人に説明する。

 

 アレクサンドラによると、ノラとデボスは【アルファベット】の幹部にも匹敵する実力を持っていた為、かなり綿密な計画を立て、多勢で攻め込むことになっていた。

 だから現在本部は、アレクサンドラの情報を待ちわびている。

 そして、そこに問題があった。


「アルファベットは既にこの隠れ家の状況を把握しています。そして、ノラとデボスの生命反応も逐一把握している。強敵だと認識してたノラとデボスの生命反応が、急に消えたとなれば、必ず不審に思い確認するでしょう。もしかしたら、もう本部から応援が向かっているかもしれません」

「何よ、それを早く言いなさいよ」

 エマが怒ると、アレクサンドラはビクッとなる。

 アレクサンドラはしばしばとても内気で消極的である。見ていると過剰な反応に見える。そしてそれはまるで、何か別の痛みに怯えているかのような態度だった。


 アレクサンドラを見ながら、トマが落ち着いて話す。

「よしよし、じゃあ僕に任せてください」

 トマはそう言うと、一瞬目を瞑る。


「うーん、検索をかけてみたけど、今の所この近くには不審な動きはないですね。それと、あなたの体にも検索の魔法式が埋め込まれているようですが、その式では場所と魔力反応程度しか把握出来ないでしょうね」

「なんと、そんなことも分かるのですか……」

 トマの口からは、さも当たり前のように非常識な言葉が飛び出し、アレクサンドラは驚きを隠せない。

更にトマが続ける。

「それでは、この世界にはノラとデボスを単独で撃破できるような人物はいないのですか?」

「いえ、そんなことはありません。アルファベットの中でも、頂点に君臨する【シークレットクラウン(内緒の王冠)】の5人には可能です。また、世界には二万年前の大戦時に活躍した、英雄と呼ばれる人間がまだ生きています。その者達なら造作もないでしょう」


「そいつらただの人間にしてはとても長生きね」

「はい、しかし彼らはただの人間ではありません。私も詳しくは知りませんが、神との契約をしたとかしないとか」

「なんだか曖昧ね。神か……」

 エマは話が長くなっているので、少し面倒になってきている。

「じゃあ、正体不明の正義の使者が来て、ノラとデボスを滅ぼしたって事でいいんじゃない? 私とか!」

「それは、だめだよ。僕たちはまだ敵に正体を明かすわけにはいかない。何かと動きにくくなるからね」

「そうか……」


「そうですね。しかし、もうあまり時間もありません。どちらに転ぶか賭けですが、ここは【金色の勇神】が現れた事にしてみようと思います。この世界では誰もが知る話ですし」

 アレクサンドラは胸に当てた拳をぎゅっと握りしめる。その拳はなぜだが少し震えているようだ。

「ああ、あの言い伝えの」

 トマが言う。

「誰それ?」

 エマがトマに聞くが今は無視する。


「あっ、だいぶ近づいてきてるね、二人かな。そろそろ、僕たちはこの場から消えた方がよさそうだ」

 トマが、眠っているルナを背負いながらそう言うと、

「わかりました。それではここに地図を記しましたので、この場所まで来ていただけると助かります。ここへは魔鉄で行くことが出来ます。その方法も記しておきました」

 アレクサンドラは、そう言いながら懐から一枚の透明な板を出し差し出す。

 それをトマが受け取る。


「ちょっと無視しないでよ、こんじきのゆうしんって誰――」

 エマがトマの肩におでこをぐりぐりしている。トマは無視して、アレクサンドラに笑顔で手を振っている。そして、そのまま三人はパッと消えるのだった。


 残されたアレクサンドラ。その瞳は窓に映る月を眺めている。

「き、消えた……し、信じられない力だ。あの方達ならもしからしたら……そろそろ、私もこの役を降りてもいいかな? 父さん、もう少しでそっちに行けそうだよ」

 差し込む月明かりがアレクサンドラの顔を照らす。その瞳には涙が浮かんでいた。

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