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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第二章 アグラザリア突入
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第13話 ビューティフルティアーズ

 膝をつき俯くアデトに向かってエマは話す。


「そういえば、あんたの周りに黒髪の女の子の【マハートマー(偉大なる魂)】がずっと居るのよね。まあ、どうせろくな理由じゃないと思うけど、他にも苦しそうな人々のマハートマーが沢山(まと)わりついてる。あんたにはあの世で信じられないぐらいの苦痛が待っていると思うわ」

 そう言うと、エマはゆっくりと歩き出す。

 そして、アデトの前で立ち止まり、

「そうそう、あんたの魔力が四万二千だとした、私の魔力は五十三万ぐらいかな。あの世で黒髪の子とそのほかの命に償いなさい」

 そう耳打ちすると、アデトの頭に手をかざす。

 アデトは、最後を覚悟し目を閉じる。


 しかしその顔は、何故だか少し微笑んでいた。


「【ルートリダクション(根源還元)】」

 エマがそういうとアデトの体が光に包まれ、次第にそれはどんどん大きくなっていく。


 そして、限界まで膨れ上がった風船が弾けるようにその光は弾け、流星の様にどんどんと打ち出されていく。

 光は部屋の上部へ飛び、外に向かって壁をすり抜けて天高く舞い上がる。


 その光の玉は、ある一定の上空まで上り詰めると、折り返してどんどんと地上に降り注ぐ。

 しかし、衝撃はない。まるで暖かく包み込む天使の様な柔らかな光。

 やがてその光は地上を埋めて、地上は光に溢れる。


 光が打ち出されるごとに、アデトがいたその中心の光はどんどんと小さくなり、やがてそれが止んだ時には、もう既にアデトは跡形もなく消えていた。


 すると、次第にレギオンの中から驚きの声が起こり始める。

「あ、あれ、俺の体治ってる!」

 ある者は、なくした右腕が再生したり、

「ああ、ここはどこだ……」

「と、父さん!」

 病に侵された者も回復し意識を取り戻し、また更に侵されていた水も浄化されていく。


「一体何が起こっているのだ......?」

 オースティンが驚いて辺りを見渡すと、そのような奇跡的な現象が起こり続けているのだった。


 ほとんどの者は何が起こっているの分からないが、オースティンは原因がエマとあの光にあると考え、ゆっくりとエマに近寄っていく。


「エ、エマさん。一体何をしたんですか?」

 オースティンはきょろきょろとしながら訪ねる。

「ああ、えーとね、アデトの全生命力を魔力に還元して増幅させ、そこら中にばらまいたの。だから、ほとんどの人間が生き返ったはずよ」 

 オースティンは今更もう何を言われても驚かない気がした。


「そんなことが出来るとは......そ、それは地上の者たちも復活したという事でしょうか?」

「そうよ。みんな元気いっぱいになってると思うわ」

 そう言うとエマは親指を立てウインクした。

 しかし、オースティンは慌てふためく。

「それはまずいです! 地上には強すぎる化け物たちがひしめき合っているのです。生き返っても、すぐまた殺されてしまいます!」


「その心配なないよ」

 どこからともなく声が聞こえる。

「地上はわしらで片づけたから大丈夫じゃい」

 そこにはトマとアーブとキャロラインが立っていた。レギオンの入り口をキャロラインが解錠し入って来たのだ。


 オースティンは目を見開き唖然とする。

「ああ、何ということだ……」

 しかし、次第にその瞳には涙が溢れる。

「キャロライン! お、お前よくぞ無事で!」

 目の前の光景に思考が追い付いた時、オースティンは凄い勢いでキャロラインを抱きかかえるのだった。


「お、お兄様。痛い、痛いです……でも、お兄様こそ良くぞご無事で」

 二人は抱き合って喜び、涙を流す。

「ああ、ここに居るエマさんが助けてくれたんだよ」


「へっ、エマさんが?」

 キャロラインはエマに疑いの目を向ける。


「そうなんだ。何が何だか分からないのだが、そうそう、何か不思議な球が、ほら、あれだよ」

 オースティンは黄色い光を放つ謎の球体に目を向ける。それにつられて皆の視線もその球体に向く。


「しかし、地上いた化け物、あの【物体エックス】をどうやって倒したのだ?」

 球体の方へ歩きながら、オースティンがキャロラインに聞く。

 しかし、キャロラインも首をひねりながら、

「実は私が起きた時にはもう何も居ない状態でして。アーブ様が一掃したとしか……」


 それを聞いてオースティンは信じられないといった様子で、前を歩くアーブとトマを見る。


「してエマ、これは、なんじゃ?」

 アーブが聞く。

「なんか、変な奴が雷の魔法使ってたから、魔法を閉じ込めたんだ」


「エマさん。これはここにこのままなのでしょうか? これはいったいどうすれば?」

 全く理解できていないので、恐る恐るオースティンが聞く。


「そうねぇ。そうだ、あなたにあげるわ」

「えっ。し、しかし、こんなものはいただいても私にはどうしていいものやら」

 オースティンは疑問でいっぱいの顔をする。

「もう、エマ。意味わかんないよ。いいよ、僕が説明するから」

 トマはそう言うと、オースティンに説明を始める。


 この球はおそらく電気の永久機関であるということ。

 うまく使えば国のエネルギーを永久的に補うことが出来るはずと伝えた。


「ま、まさか。そんなことが」

 オースティンは驚きの連続で開いた口が塞がらない。

「重力の調整と保存、そして粒子よりも細かな……まあ簡単に言うとすごい速度で動き続けるから、エネルギーは無限に出てくると思います」

 トマは黄色く光り続ける球体を手で触りながらそう言った。


 キャロラインはどうも納得できない様子でエマをまじまじと見ている。

 どこからどう見ても外見は十歳程度の子供だ。

 その子供に何が出来るというのか。

 しかし、アーブの孫であり、弟子と言うのならそれなりの使い手なのかも知れないと考えるようにした。


 地上に出るとちょうど朝日が昇り始める所だった。

 王国はすっかり荒れ果て、建物のほとんどは崩壊していた。


「まあ、人はおるんじゃ。物はまた作ればよい」

 アーブが目の上に手をかざし、辺りを見渡しながらそう言った。


「はい。本当に感謝してもしきれません。このご恩は国が再建した時に必ずお返しいたします。それまでお待たせすることはとても心苦しいですが、今は何も差し出すことが出来ません。どうかお許しください」

 オースティンは片膝をつき、エマ達三人にそう告げた。


 その様子を見てキャロラインもその他の人々も膝をつき頭を下げた。

 エマ達三人は顔を見合って、

「いいんじゃ、いいんじゃ。本当に目的もなく、わしらが勝手にやった事じゃから気にせんでくれ。まあ、貰えるというのならまたたたたた――」

 見返りを求めそうになるアーブの肩を掴み、エマが超高速で揺する。


 トマは膝をつき、オースティンの肩に手を置く。

「今はそんな事を考える必要なないと思います。でも、もし僕たちの助けに報いたいと思っていただけるのでしたら、立派な国に再建してください。その時また遊びに来ますから。皆で楽しく語らいましょう」

 トマが笑顔でそう告げる。


 オースティンは顔を上げ、トマの顔を真っすぐ見る。

 その大きな瞳には涙が溜まっていく。

「ありがとうございます……」


 朝日はゆっくりとエマとトマの後ろから昇って来る。

 やがてそれは、エマのシルエットを浮かび上がらせ、エマを神秘的に輝かせる。


 エマの綺麗な金髪がキラキラと輝く、オースティンはまさに神のようなエマの力を目の当たりにした。

 目の前に居るのは、本当の神ではないのかと感じている。


 まさに神がかった力......。

 

 自分の命は助かった。そして、民の命も。

 今改めて自分が、そして国が救われたことを実感する。

 

 不意に溢れ出す涙。

 オースティンは、こぶしを握り締め、体中を硬直させて震わせその場に崩れる。


「あ、あ、あ、あぁーあぁ―! あぁ! りぃ! がどうございまずぅ……」

 屈強な鍛え上げられた体は、その抑えきれない感情に合わせ、波打つように揺れる。

 それを受けて周りの人々も共に涙を流し、一心にお礼を言うのだった。


 次第に朝日はゆっくりとオースティンの全身を照らすように昇っていく。


 神々しい太陽の光は、そこに居る全ての人々に降り注ぎ、その体を温めた。

 登りゆく太陽の輝く光は、新しい日を迎え新たな一歩を踏み出す、そんな出発点を示してくれているかのようだった。


 沢山の抑えきれない思いが、オースティンの瞳から涙となり溢れ、零れ落ちていく。


 その大粒の涙は黄金色の太陽に照らされて、キラキラとまるで宝石の様に輝いているのだった。


 だがしかし、この世界の暗雲が晴れたわけではない。


 アデトの最後の笑み、その理由は何だったのか。


 アデトは最後にこう考えていた。

(四万二千と五十三万……確かにそれほどの差があるのなら私はどうあがいても勝てないでしょうね。しかし、その程度の魔力では、天魔王様の足元にも及ばない。お前のその自信もろとも、天魔王様に捻り潰されるがいい)

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