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大魔導士エマの世界大革命  作者: AARO
第二章 アグラザリア突入
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第12話 フォースディファレンス

「さて、あなたにはどうして償ってもらおうかしら」

 エマは自信満々でアデトの前に立ちふさがる。


 アデトは、目の前のその光景を見据えて、自分の動揺を振り払うように、睨みつける。

「ま、まあ、あの程度の魔法なら使える者もいますし。そんなことでこの私に勝てるとでも思ってもらっては困ります」

 アデトは少し落ち着きを取り戻す。


「エマさん、気を付けてください! 人間の力で勝てる相手ではありません!」

 オースティンがエマの背後から叫ぶ。


「もし、私たちが生き残る方法があるとしたら、もう一度マイグレーション(民族大移動)で全員を転移させるしか方法がないと思います!」

 そう言ってオースティンは拳を握り顔を伏せる。オースティンは、ディグノスの一件で、力の差を目の当たりにし完全に戦意を失っている。


 しかし、エマはお尻を突き出し上半身だけ回してバッっと振り向き、ウインクをして人差し指を左右に振る。

「ちっちっち! 安心しなベイベー。すぐに終わらせてやるからよ!」

 おどけて見せるその時、耳を突き刺す、凄まじい音が鳴り響く。

 エマの立っていた場所が爆発したのだ。


「エ、エマさん!」

 オースティンが叫ぶ。


「ふゅー、ふゅー。ふぁっはっはー! 跡形もなく爆発してしまいました! 口ほどにもないとはこのことですねぇ~。油断し過ぎてしまったようですね」

 アデトはそう叫びながら、揺ら揺らと不安定な歩調で辺りを見渡しながらだらだらと歩く。


「詠唱にすら気づかないとは、しょせん子供ですね。さあ、もういい加減お開きにして、皆さんにも死んでもらいましょう。マジックゲー(魔法門)トオープン(開放)

 アデトはそう言うと、右手を突き出した。

 その顔は、人間の死をなんとも思っていない冷酷な表情だった。

 それどころか、あざ笑うように裂けた口を釣り上げる。


 オースティン達は、これから起こる恐怖に思わず目をつぶる。

 しかし、考えた結果とは違っていた。


「ちょっと待ちなさいよ」

 アデトの突き出した右手を大胆につかむエマ。


「どっひゃっ!」

 アデトはあまりの出来事に手を払い飛び上がり驚く。


「ちょっと、これ見てよ。お気に入りのアンダースカートが少し汚れちゃったじゃない」

 よく見ると白いアンダースカートの裾が少し黒くなっている。

 アデトは更に素早く後ろに飛び距離を取る。


 アデトの額に汗がにじむ。

「もう、四の五の言ってられませんね。マジックゲートオープン! 第六門陣階位魔法【ライトニング(上昇する)ライジング(稲妻)スパーキング(火花)】」

 アデトの両手から凄まじい勢いの無数の電撃がほとばしる。

 シェルター内には凄まじい雷鳴が響き渡り、温度が上昇していく。


 アデトは、左右の掌を上に上げる。

「ひゃーはっはっはー! もう誰も止めることは出来ませんよぉ! この電撃は天空の雷と同じ十億ボルトですからねぇ!」


「あ、熱い! なんという凄まじい音とエネルギーだ! 第六門陣を開けそれを操るとは、もはや人間に勝ち目などない! もう既にマイグレーションも間に合わない。終わりだ。皆すなまい。すまない、妹よ……」

 オースティンは身構えて、目を開けることすらままならない。


 そして、人間の常識など通用しない凄まじい力を前にして、最後を悟り、悔しさに涙し絶望を感じる。

 第六門陣は決して開いてはならない魔法陣である。

 膨大な魔力量が必要であり使用者は命を落とすというのがこの世界の常識のはずだった。アデトはそれを操っているのだ。


 しかしそこには、全く平然としているエマが居る。

「この前会ったおっさんが、第四門なんちゃらが限界って言ってたんだけど、あんたのそれは大丈夫なの?」

 

「ひゃはあ。私は天魔王様に特別な魔力をいただいていますからね。このくらいではなんともないんですわぁ!」

アデトは何とも言えないひきつった笑顔で答える。

(なんだか人格までおかしくなっちゃってる? そういえばあのおっさんもなんか変だったわね。膨大な魔力を使うと皆こうなっちゃうのかな?)

 エマは首を傾げる。


「もう終わりです。この世の塵と成り果てなさい!」

 そう叫びながら両腕を前に出すと、凄まじい速さで電撃が放たれた。それらは渦を巻きながら、凄まじいい音を立てて、どんどん大きくなりエマに向かって迫ってくる。


「は、ははははっ! 焦げて塵となれ、汚い人間ども! 最後も汚く散るといい!」

 アデトは興奮が最高潮に達し、両腕と頭を天高く上げて、大声で叫ぶ。


 これほどの魔法がもたらす結果は一つしかない。

 確実な死である。それはこの世界の常識なのだ。


「さあ、そろそろ香ばしい匂いがして参りましたよ! 人間どもの焦げる匂いが! 匂いがー、匂い。ん?そんなに匂わないですね」

 アデトはゆっくりと頭を下げる。


 するとそこには、今まで無かった、一メートル程度の球体の物質があった。

 その球体は透明で、その中は黄色い光で溢れている。


「こ、これは……? き、綺麗……」

 あまりの美しさに一瞬見とれる。

「いやいや、違う! 違う! こ、この球体は何ですか! それに、私の盛大な魔法はどこに消えた!」

 アデトは目の前の状況がわからず叫び散らす。


「ちょっと、うるさいわね」

 球体の傍にいたエマは両手で耳を塞ぎながら、顔をしかめる。


「あんたの魔法はここよ。あと油断の言葉はあなたに送り返すわ」

 エマは目の前の球体を指さす。


「な、なんですって! そ、それはどういう……」

 アデトは、唖然とし尋ねる。


 するとエマは、あごに手を当て首を傾げる。

「どういうって、ただ手でつかんで集めただけだけど。なんだか不思議な疑問を持つのね」

「ぜんっぜん! 不思議な疑問じゃないです。むしろ不思議なのはあんたでしょう! そんなこと出来るなんて聞いたこともない。あたなおかしいんじゃないですかっ! く、くそ……こうなったら――」


 アデトは、切羽詰まったような必死の形相でマジックゲートを開き呪文を唱える。


第七門陣階位魔法だいななもんじんかいいまほうエクスプロージョン(災害的)ディザスター(爆発)】」

「七門陣だって! ま、まずい!」

 オースティンは驚嘆の声を上げる。

 七門陣なんて魔法は神話の世界でしか聞いた事がなかった。


 緑色の魔法陣が現れ、

「ひゃはあ、これで終わりだ!」

 アデトは両手を上げ、勝ち誇ったように叫ぶ。


 しかしエマは、まるでどう動いたのか分からないが、もう既にアデトの後ろに立っている。


 まるで時が止まっているかのような感覚。


「お仕置きが必要ね」

 凍り付く時間。

 前を向いたままのアデトの耳元でそう囁くと、不意にアデトの両腕を持つ。

「ひっ――」

 アデトの吸い込むような驚きの声と共に、エマは持ったその両腕をまるでクッキーでも割るようにポキリと捥ぎ取るのだった。


「サービスで止血したから」

「な、何の、サービスですかぁ!」

 アデトはもはや意味が分からない。


 エマはゆっくりと元の位置に戻り、アデトの手を黄色い球体の中に近づける。すると、吸い込まれるように腕は消えてしまった。


「そんな魔法ぶっ放したら、もう怪我人が出るじゃない。面倒くさいので、腕はいただきました。怪盗エマより」

 エマはそう言うと左足を少し曲げて、スカートの裾をつまみ綺麗にお辞儀をした。


 それと同時にアデトは絶望のうちに膝をつく。


(こ、これは、何かの悪い冗談なのか。じ、次元が違い過ぎる……最初から決まっていたのか? そうか……私は今日ここで滅びる)

 アデトは震えが止まらなかった。

 もう自分が何と対峙していたのかすら分からない。エマはアデトの理解の範疇を遥かに超えていたのだ。

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